【感想・ネタバレ】文豪怪奇コレクション 耽美と憧憬の泉鏡花 〈小説篇〉のレビュー

あらすじ

明治・大正・昭和の三代にわたり、日本の怪奇幻想文学史に不滅の偉業を打ち立てた、不世出の幻想文学者・泉鏡花。本書は、鏡花が遺した名作佳品の中から、なぜかこれまで文庫化されていなかった作品群──とりわけ恐怖と戦慄と憧憬に満ちた怪異譚を蒐めた。闇に明滅する螢火を思わせる「女怪幻想」の数々は、読者を妖しき異界へと誘うことだろう。

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Posted by ブクログ

怖かったです。
これまで鏡花を読む時は、悲しくて悔しくてしゃくりあげるほど泣いたり、気持ち悪すぎて読むのをやめたりすることもありましたが、これはそういうものだ、と腹をくくって距離をとって読んだので読めました。高野聖読める人すごいよな。私まだ無理かも。
狸が子供を化かすくだりと蟹が美味しい話が可愛らしくて好き。
一目惚れで惚れ抜くのもよいですが、時間をかけて愛しくなる夫婦もよいですね。
そして幽霊はやっぱり女の人でなくちゃ。
呪いも恨みも女のものです。
そして恐怖に叫ぶのは男なればこそ、現実世界の強い者と弱い者の立場が逆転する、という爽快感があると思う。
ホラー映画ってなんで女の子が叫ぶんでしょうね。謎。
最近は男性社会への嫌悪感を表現する作品として、女性主人公だったりシスターフッド?だったりの映画もありますが、ここ!お化けになって男に復讐する女の物語は昔からたくさんありますよ!と声を大にして言いたい。
ちくま文庫の鏡花集成が絶版なのでどうしようかと思ってたら、この東さんという方がこうやって編集して出版してくれるのでありがたい。
アンソロジストって何?すごくいい仕事してると思う。埋もれている名品を掘り起こすなんて私もやりたいくらいなんだけど。
美しい日本語。唯一無二。
表現もさることながら、登場人物の発言がたまらない。
文学って久しぶりに読んだ。いつもはずれのないエンタテインメント、ミステリか歴史物ばかり選ぶから。文学は当たりはずれがあるけれど、勇気をもって開いてみると意外な吸引力で他のエンタメ何もいらなくなる、なんてこともあったりするから、新しいものに尻込みしない筋肉を鍛えておくのも大切ですね。小林も言うとおり。

あと、鏡花のお化けってオリジナル?知らないものばっかりって思ってましたが、そんなことなく有名なお化けがたくさんいたのですね。私が知らないだけだった。京極夏彦読むから妖怪の名前覚えてきて楽しい。漢字表記同じだし。もっとわかるようになるはずだから何度も読み返そう。

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2022年12月26日

Posted by ブクログ

文庫化されていない作品を本の形で読めるのはよかったが、注釈がないスタイルはよくないのではないかと思いました。鏡花好きな人だとしても、全部の単語がわかっているわけでもないだろうし、鏡花はじめあの時代の本・文化は初めて手に取りますといった人にはだいぶ分かりづらい本になっている。

作品の内容自体は、鳥肌が立つような怖い話から、ゾワゾワ不気味な話までより取り見取りで、美しさより怖さが勝る鏡花集として新鮮でした。

収録作品は、
・高桟敷
・浅茅生
・幻往来
・紫障子
・尼ヶ紅
・菊あわせ
・霰ふる
・甲乙
・黒壁
・遺稿
・幼い頃の記憶

タイトルからして美しいものも多いですね。特に好きだったのは、
『高桟敷』:ホラーのビジュアル全面出し
『幻往来』:医学生の話…こわい…
『尼ヶ紅』:蝮…殺して飲むから…イケメンっぽいけど…
『霰ふる』:可愛いし、美しい
『黒壁』:こういう文体の鏡花、久しぶりに見ました。美少年じゃないと成り立ちません
『幼い頃の記憶』好き…
「私は、その時、その光景や、女の姿など、ハッキリとした記憶をまざまざと目に浮べて見ながら、それが本当にあったことか、また、生れぬ先にでも見たことか、或は幼い時分に見た夢を、何かの拍子に偶と思い出したのか、どうにも判断が付かなかった。今でも矢張り分らない。或は夢かも知れぬ。けれども、私は実際に見たような気がしている。その場の光景でも、その女の姿でも、実際に見た記憶のように、ハッキリと今でも目に見えるから本当だと思っている。
 夢に見たのか、生れぬ前に見たのか、或は本当に見たのか、若し、人間に前世の約束と云うようなことがあり、仏説などに云う深い因縁があるものなれば、私は、その女と切るに切り難い何等かの因縁の下に生れて来たような気がする。
 それで、道を歩いていても、偶と私の記憶に残ったそう云う姿、そう云う顔立ちの女を見ると、若しや、と思って胸を躍らすことがある。
 若し、その女を本当に私が見たものとすれば、私は十年後か、二十年後か、それは分らないけれども、兎とに角かくその女にもう一度、何所かで会うような気がしている。確かに会えると信じている。」

本短編集に収録されている作品のいくつもで、二人組の女性たちが出てきたけれど、最後にこのエッセイを読んで、そういうことなのだと繋がりました。この配置はよい笑

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2023年02月12日

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