あらすじ
最後の日に。最愛の人と。
致命的な心の傷を、人はいかにのりこえうるか?
ささやくような美しい声で、答えてくれる物語。
(川上弘美 / 作家)
旅をするとき、人は同時に、命を見つめているのではないか。
(西加奈子 / 作家)
この“旅”の体験と記憶は、いつまでも失われない。
自分もいつかは“最高の旅”を誰かとしてみたい。
人生に終わりはないのだ。
(小島秀夫 / ゲームクリエイター)
どこまでも続く青い空と海。エミルとジョアンヌは、南フランスの陽光きらめく中を旅していた。猫のポックとの出会い、海辺での穏やかな日々、ジョアンヌのマインドフルネスの教え。時にぎこちなく、時に深く心を通わせながら、2人と1匹は静かに時を紡ぐ。しかし、旅は穏やかなだけではない。進行する病と薄れゆく記憶はエミルをゆっくりと蝕んでゆく。残されたわずかな時間の中、互いの存在を支えに進むキャンピングカーは最期の目的地へ。失うことの痛みと、それでも生きることの輝きを描く、愛と再生の旅路。
爽やかな筆致で描く、命と愛、生きる喜びについての感動大長編後編。
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Posted by ブクログ
エミル念願の旅もとうとう終わりを迎えてしまった。
美しく壮大な自然に囲まれ、優しく温かな人々と出逢い、別れ、そしてジョアンヌの悲しい過去とも向き合い、ついに本物の愛を知ることのできたエミルは本当に幸せな時間を過ごせたのではないだろうか。
たとえ最期に向かって徐々に"自分"を失ってしまったとしても。ほんのつかの間の平穏だったとしても。
旅の最後を愛しいジョアンヌと共にいられて本当に良かった。
エミルが亡くなるのは初めから分かっていたけれど、ラストが救いのある終わり方で良かった。
アルツハイマーの進行具合がこんなにも過酷で残酷ななものだと知って怖くなった。
上下巻で約800頁。最初はこんな大量な物語を読めるのかと尻込みしていたけれど、読み始めたらあっという間。夢中で読めた。
美しい景色も見てみたいのでぜひ映画化してほしい。
「風向きを変えることはできないのだから、帆を操縦できるようにならなければいけない」
by ジェームズ・ディーン
Posted by ブクログ
Google mapで登場する土地を検索して写真を見ながら、そして、映画や実際に目で見たフランス南部の美しい景色…白い岩肌の山や、濃い青の空、強く明るい日の光、丘の上の小さな集落の淡いベージュ色の石造りの建物、ラヴェンダーやブドウの畑…や乾燥した空気感を思い起こしながら読んだ。私も「死んでいない」状態を長引かせるための延命治療は受けたいと思わないので、余命宣告を受けても体が動くならばこんな風に残りの時間を過ごしたいなと思ったし、フランスを旅したくなって胸がうずいた。
エミルの病状が進んで脳の中で子供にかえり、家族への慕情が強まっているのに、(それが元々エミルの望みだったから)ジョアンヌはこのままエミルを家族に会わせないで最期を迎えさせるつもりなのかな、意志の強いフランス人女性らしいな、と思っていたら、最期は両親を呼んであげて、なんだかホッとした。
人生には、思いもかけない不幸に襲われることがある一方で、死の間際でも素晴らしいことが起こり得るんだな。不幸のさなかでも、新しく良い出会いに恵まれて、幸せな時間を過ごすこともできる。そして、自分が消え去っても、そういう人たちの中に何かが残り続ける。そう考えると、心が温かく満たされる気がする。
名言がいくつも登場するけれど、個人的に一番刺さったのはジェームズ・ディーンの言葉「風向きを変えることはできないのだから、帆を操縦できるようにならなければいけない」(下巻 283頁)この言葉が刺さったということは、私もまだ能動的に自分の望む方向へ進もうとする気力があるってことかなと思って、嬉しくなった。
Posted by ブクログ
若年性アルツハイマーを患ったエミルが掲示板で募集したジョアンヌと共に旅に出る物語。
死に向かう旅の中でエミルとジョアンヌは過去に向き合い新たな人生観を見つけていく。
2人の距離はどんどん縮まっていきこれまでに感じたことない幸せを感じていく一方、エミルの病状は悪化していき、2人の旅は終わりに近づいていく。
掲示板での偶然と思えるような出会いは必然であり、奇跡的である。
ジョアンヌの辛い過去とエミルの絶たれた未来。そして2人が過ごす現在。それらが入り混じった旅から私自身の人生をどう生きていくかを考えさせられる一冊だった。
今日エミルらどんな動きをしているのか?
はてしない青を見上げながらそんなことを考えてしまう。
Posted by ブクログ
(最高に良)下巻になってジョアンヌの過去が明らかになる。エミルの病状の深刻度も増してくる。二人の旅は立ち止まりながらも進んでいく。瞑想、マインドフルネスをやってみよう。鳥の鳴き声が聞こえ、風を感じるのは久しぶりだ。本の中の名言、言葉の贈り物がとても良かった。エミルの選んだ旅は正しかった。エミル、ジョアンヌと共にキャンピングカーで旅をし、美しい景色、壮大な自然、冬の寒さ、人の温もりを感じられました。おすすめです。
Posted by ブクログ
産後だったこともあり育児の合間をみながら、約2ヶ月かけてゆっくりゆっくり読み進めた。
美しい景色と、美しいことばたちと一緒に旅が進んでいく。若年生アルツハイマーを患ったエミル、小柄ながらも過去の悲しみを背負いながら生きる意味を見つけるジョアンヌ。そんな2人は亡きジョアンヌの父ジョセフが天国から仕組んだ、出会うべくして出会った運命の相手だった。毎日が切なく、明日が来るのが怖くて、不安で仕方なかっただろうに、今この時を味わい、楽しみ、生と死を感じながら自然に戻っていく2人の様子に目が離せなかった。
p74のジョアンヌがエミルに瞑想を教える。大雨の中ふたりで大笑いする場面は本書上下の中でも読んでいて1番好きなシーン。どうしようもないことで笑えるあの時間って、恋してるとき、なんだよなあ。2人の恋心が動いているのをこんなふうに表現できるなんて、素敵すぎる。
娘であり、妻であり、母であるジョアンヌ。辛い過去を背負いながら長い間、本当にお疲れ様でした。本当によく頑張ったね。"宿命的な不幸"を断ち切りこれからは平和にそして幸せに溢れた世界を生きてね。本当にありがとう、と言いたい。
結末を知った上でもう一度読みたい。(けど少し気合いが必要かも。笑)
Posted by ブクログ
最後に亡くなってしまう結末は悲しいから、普通は嫌なんだけど、この本は何ていうか、すごく感動しました。人が亡くなってハッピーエンドっていうのもおかしな話だけど、すごく良い本でした。フランスの美しい景色が心に残りましたし、私がもし、そうだったらと考えさせられました。
Posted by ブクログ
上巻はエミル中心だったが、下巻はジョアンヌが中心。それはエミルの病気のため。突然記憶が消えたり、呼吸困難に陥ったり。読んでいて何度も、「え、ここで死ぬ?」 と思ったくらい。エミルとジョアンヌはお互いの過去の苦しみを分かち合う。やはり美しい自然が2人の心を慰める。
後書きで作者が若い事がわかり、びっくりした。若年性アルツハイマーの症状やピレネー山脈の描写が達者で、とてもデビュー作とは思えない。
下巻にはエミル亡き後も描かれる。もう、泣けて泣けて。ジョアンヌはエミルに死なれて立ち直れるのか、と思っていたので、やさしいラストでよかった。
Posted by ブクログ
上巻ではよくわからなかった同行者・ジョアンヌの過去が下巻で明らかになるにつれ、彼女は人間的な深みを増していく。一方で主人公エミルの病状は進行し、二人の人生はすれ違っていく。悲しい物語ではあるが、最後までエミルの希望を叶えるように寄り添うジョアンヌの姿がピレネー山脈の美しい景色の中に描かれ、密やかな美しさを纏った作品だった。
彼女の行動は、自身の喪失を埋めようとする自己回復の欲求から端を発していることは間違いない。しかし、エミルの望みを最後まで叶えようと並走し続ける姿は、エミルと出会った頃のジョアンヌから大きく変わっている。
人はしばしば利己的な理由から他者と関わり始めるが、その関わりの中で本物の思いやりや献身に到達することがある。本作が描いているのは、そうした人間関係の変容の可能性なのかもしれない。
人は永遠に生きることはできず、残酷なまでの運命に引きまわされる。その不条理の中で、人と人を繋げる言葉や行動、ジョアンヌや父ジョゼフが示す生きる知恵が、世界を生きていくための象徴として機能している。「確実な手触りのあること」を頼りに、絶望に飲み込まれず生きていく姿がそこにはあった。
ただ、少しメロドラマチックな展開や、エコビレッジのような著者の指向が強く出すぎているきらいはある。また、パウロ・コエーリョの『アルケミスト』への言及が多く、未読の身としては少し仲間はずれにされたような感覚を持ったのも事実だ。
そうした気になる点はあるものの、全体を通して人間の弱さと強さを描いた良作であり、良い読書体験になった。