あらすじ
「モービィ・ディックだ!」――エイハブ船長の高揚した叫び声がとどろきわたった。復讐の念に燃え、執拗に追い続けてきたあの巨大な白い鯨が、ついに姿を現わしたのだ。おそるべき海獣との三日間にわたる壮絶な〈死闘劇〉の幕が、いよいよ切って落とされる。アメリカ文学が誇る〈叙事詩的巨編〉、堂々の完結。(全3冊)
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Posted by ブクログ
面白かった。
船に乗るまでは語り部として明確にこちらに物語を伝えていたイシュメールの存在(自我というべきか)がいつのまにか消えほとんど三人称の小説のようになっているのに時折思い出したように「わたし」が戻ってくるところなどそれこそまさに浮き上がっては沈む鯨のようで、おそらくはそのような広い意味でも鯨が主人公の小説なのだろうな、と感じた。
序盤の陸上での物語の中のイシュメールとクィークェグの友情(というには描写が濃すぎないかと思ったが、実際同性愛関係として見られている向きもあるらしい)、エイハブの己の狂気を自覚してなお止まらぬ狂気的な復讐心、そしてそれらを全て押し流すように、いとも簡単に何もかもを海に沈めてしまう圧倒的な白い鯨。
いかんせん有名な古典なので事前にオチだけは知ってしまっていた状態で読んだのだが、知っている分余計にそこに向かって行かざるを得なくなるエイハブの恐ろしさやある種強さ、まっすぐさとも言える何かに圧倒されてぞっとしたし、途中の脱線もとい鯨についての数多の考察も含めて最初から決まっている終わりに向かうものとして見ても楽しかった。
とにかく、読む前にこの小説に求めていたものである「圧倒的な力になす術のない人間、その無常感」は得られたので大変満足しています。
最初に求めた以上の様々な発見や楽しみがある、これだから本を買い漁るのがやめられないんだな……自分は……
あとめちゃくちゃ注釈が多くて最初はちょっと引いたのですが、キリスト教や当時の時代背景への知識が薄い人間なので全体への理解にかなり助かりました。挿絵も含め、岩波文庫版、オススメです。
頻出するト書きや大仰な長台詞が個人的にとても良かったので、今の時代に演劇として観られる機会が来るといいな。
Posted by ブクログ
片脚を奪った白鯨への私怨に駆られ狂信者の如く振る舞う船長エイハブと航海士スターバックの対立を始め物語は俄に動き出しやがて読者の脳内演出力を試す圧巻の山場へ突入。その時小生が乗る通勤列車は荒波に呑まれる捕鯨船と化した
様々な人種で構成されるピークオッド号はアメリカ合衆国の象徴と考えられるが白鯨は一体何を表しているのか。個人的にはまるで万物の長でもあるかのように驕り高ぶる人間に対しての神の怒りではないかと思ったのだが果たしてどうだろう
首にロープが巻きつき海へ引きずられて絶命するエイハブの最期が印象深い。或る意味彼らしい死に様と云える
Posted by ブクログ
ラストシーンで思い出したのはジョジョの一部のラスト、あのシーンも棺桶で生かされるというメタファーがとても印象に残っていたのですが、この白鯨もそのような暗喩がありました。
しかもその棺桶は主人公の親友のクイークェグのもの。
分厚い三冊の上中下の冒険の物語は、終盤突然白鯨とぶつかり、あっさりと終わってしまいました。
粗削りな男が書いた男の物語なんだけど、どこかねちっこい感じが離れないなあ、と思っていたのですが、解説でイギリスではエピローグがない白鯨が発売されたと書いてあり、あの二ページのエピローグがなかった場合の事を考えた。
エイハブの怨念、鯨学、不吉な予兆、水夫たちのやりとり、重みを感じる長いページの末に船が沈没したところで終えるのも男らしくていいのかもしれない。滲み出る女々しさを払しょくしてくれる潔さがあるように思える。
三冊読み終えて、あの鯨の雑学やページ数を考えると、とてもすらすらと読めたように思えます。
偏に目標がしっかりと定まっていたからだと思います。
エイハブの怨念、そして白鯨への憎悪。これがこの物語の全てと言ってもいいと思うくらい。
エピローグ。棺桶で漂流したイシュメールはレイチェル号の息子への女々しい希望によって助けられた。
男らしい物語だと今まで思っていたのですが、実際は違うのかなと読み終えて感じました。
Posted by ブクログ
クジラが好きになるような方向性はないとは思うけど、クジラの柄のついた手ぬぐいとか見たら、買おうかしらと思ってしまう。
クジラ、船、捕鯨の知識、幾人かの登場人物についてピックアップしたエピソード。
話があっちこっち飛んで、「このトークいる〜?」っていうのも多かったけど、全体的には楽しめた。
エイハブvsモービィ・ディック。ひたすら白鯨を追う。
ボートに乗って銛で突いてって、大きな鯨にそれでいいの?って。命がけ。
戦いの時は壮大な迫力ある映像が浮かぶ。
最後に悲惨な生き残りの戦いはなく(捕鯨において、生き残った者同士が食べる事件が実際にあった)最後は語り手一人イシュメールのみだったから丸く収まったというか。