あらすじ
男と女はどう線引きすべき? 成人の定義って? 安全な堤防の高さとは? 混迷するボーダレスの時代に基準値の進化は止まらない!
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Posted by ブクログ
基準とは、私たちが生きたいと思う世界を変え、実現するための良い道具である——基準があるから考えるという行為を遠ざけるのではなく、基準を用いて生きたい世界を実現できたらいいなと思う。
乳がん検診で40歳未満については乳がんに罹患する人が少ないために調査事例が少なく、死亡率の減少効果については十分な知見が得られていないとした、はやっぱりそうなのか、少数派かーと思ってしまった、ががん検診の基準値について知ることができよかった。
Posted by ブクログ
タイトルの通り、世界は基準値でできているかどうかは眉唾だけど、コロナ禍以降というか、昨今の異常気象だからか、大地震のあった後だからか、たしかに、やたらた基準値という言葉は耳にする。
そもそも、なぜ基準値が必要か? というと、要は「安全」「安心」のためだというのが、本書の主旨(そのわりに、最初はスポーツ界におけるジェンダー問題、女子選手の”基準値”の話から入るのだが)。
ともかく、その基準値は「科学的な評価」のみならず、今や社会・経済・文化など、さまざまな要素も加味され、それゆえに、”基準値の根拠を探ることは「世の中の意思決定のしくみ」を探ることでもある” という論の展開は、見事。
ジェンダーの基準値、テストステロンの話から始まり、 新型コロナにおける、距離、時間といった基準値や、命に関わる話としては、放射線の基準値、処理水と除去土壌の話、がん検診は2,3年ごとでいいのかどうなのか、その基準値はどこにあるなど、身近な話題がてんこ盛り。将来的には、AIと個人情報の基準値と、それは「値」か? という話まであれこれ網羅していて楽しい。
ともあれ、基準値には4つの特徴があるという点は、まず押さえておいた方が良さそうだ。
1.従来型の科学だけでは決められない
2.数字をつかいまわしてしまう
3.一度決まるとなかなか変更されない
4.法的な意味はさまざまである
とくに3.とか。確かにいつまでたっても過去に決めた基準値で思考か固定されてしまいがちなのは、なんとなくだが体感的にも理解できる。
基準値を、どのレベルに定めるか、という問題は「私たちはどのような世界に生きたいのか?」ということだという指摘は、なるほど、ごもっとも。
とはいえ、本書も語るように、
「根拠は、後付けで積み重なってくる」
というのも、世の常だと思うし、あまり基準値に振り回されない心持ちが大事なのかもしれない。
所詮、人が定めたもの。それが絶対ではない、という思いを常に持っていたい。基準値、それは、あくまで参照する値、くらいでいいのかもしれない。