あらすじ
ロマン主義の全盛期、十九世紀パリ社交界に現れたポーランドの音楽家ショパン。その流麗な調べ、その物憂げな佇まいは、瞬く間に彼を寵児とした。高貴な婦人たちの注視の中、女流作家ジョルジュ・サンドが彼を射止める。彼の繊細に過ぎる精神は、ある孤高の画家をその支えとして選んでいた。近代絵画を確立した巨人ドラクロワとショパンの交流を軸に荘厳華麗な芸術の時代を描く雄編。
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Posted by ブクログ
[ (注) 思ったこと感じたことをそのまま勢いで書いているので読みにくく、まとまりがないかもしれません。ご勘弁を。]
まず装丁。
大抵は単行本の方が良いのだけど『葬送』は文庫の装丁の方がいい。
たぶん単行本の方はショパンのイメージなんだろうと思う。軽やかで繊細で華やかで。
それに替わって文庫本の方はドラクロワのイメージ。
単行本の装丁の色みより文庫本の色みの方が内容に合っていると私は思う。
第一部(上)はあの有名なショパンの肖像。
第一部(下)はこちらも有名なドラクロワの自画像。下部には薄らと『サルダナパールの死』
第二部(上)はジョルジュ・サンドの肖像。本来ショパンの肖像と同じカンバスのショパンの隣に描かれていた絵。
第二部(下)は『サルダナパールの死』
私は元々平野啓一郎氏の作品が好きなのだけれど、この『葬送』は本当に良かった。私の好きな本ベスト3に入るかも知れない。そのくらい良かった。
Posted by ブクログ
『葬送 第一部 上』
音楽家・ショパンと画家・ドラクロワを取り巻く人々の物語。
ショパンの葬式から始まり、そこに至るまでの3年間に何が起こるのかが気になり読み進めていく。
第一部の上巻は人物説明・描写も多めにとられている印象であるため、少し進みが重たい感じもしたが、後半から徐々に物語に動きが出てきた。
心に引っかかったのは主にドラクロワの言葉。
「(アングル派の絵を指して)絵の中にはある奇妙な時間が流れている。たるんだ時間とも言うべき時間がね。」
これはいかに自分自身が絵画を描くために生き生きと情景を捉え、表現しているかを説いている場面。
「(今の若い画家を指して)絵は決して語らず画家こそが語ろうとするんだ。そんな絵は、言ってみれば文学の下僕のようなものだよ!だけど、今にそんな退屈な時代が来るよ。」 ここでもドラクロワは自身の苦労を語りながら、若い世代への苦言をショパンに語っている。
「作品というものは、作者が残そうという努力をしなければ残らないものだというのが僕の持論です。(中略)どうするか?政府に買い取ってもらい、宮殿や美術館に飾ってもらう(中略)そして、そのどちらも官展での勝利なくして不可能なことですよ!」
「八年経って世間の風潮が変われば、駄作も突如として傑作に変わる。しかも、作品そのものには、ただの一筆も加えることなく!」
「どのような立場でものを言うにしても、最低限満たしておかねばならない言説の水準はある筈であった。(中略)問題は、何故そのような手法が採られたか、その意義とそこから生み出された結果の是非とを考えることだ。」
このあたりの発言はドラクロワだけではなくあらゆる芸術家や著者自身にも根差した言葉であるように感じた。
ショパンについてはまだ印象が薄めであるが、サンド夫人とその家族との関係性の中でどのような結末に至るのか、下巻・第二部が楽しみである。
Posted by ブクログ
ショパンとドラクロワの友情を中心に描かれる彼らを取り巻く人間関係と、芸術家としての創作の日々。
いきなりショパンの葬儀の場面から物語は始まる。既にして複雑な人間関係が見て取れる。時を遡って、晩年のショパンとドラクロアの係わり合いを中心に物語は進む。愛人との関係が終わりに近づいたショパン。円熟期を迎え、これから更なる大作に挑もうとするドラクロア。
上巻では、芸術批評の場面が多く、理解できないところも多かったのは事実。ただ、もともと第一部として1冊の本だったことを考えると、前半は時代背景や人物像を紹介するために割かれたと考えても致し方ないところでしょう。