あらすじ
楠木正行は、南朝に与する楠木党の強さを誇示し、北朝の厭戦(えんせん)気分が高まったところで和議を進める策をとる。正行の指揮のもと、北朝に降ることを前提とした戦に勝ち続けるが、事態は思わぬ方向に傾きはじめ……。朝日新聞連載の歴史巨編、堂々完結。
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Posted by ブクログ
「俺もまた・・・英雄にされてしまうのかもしれぬな」
己の気持ちなとあつゆ知らず、勝手に辞世の句でも作られてしまうもしれない。
昨秋、如意輪寺に行った際に門扉に残された辞世の句を見損なったけど、きっと勝手に作られたものなんだろうな。
それにつけても、あっさりと切なすぎる最後に呆然。
2025-030
Posted by ブクログ
英傑と謳われる楠木正成の、嫡男・楠木多聞丸正行。
時は南北朝時代。彼の波乱の生き様を綴る、長編歴史小説。
第八章 妖退治 第九章 吉野騒乱 第十章 牢の血
第十一章 蕾 第十二章 東条の風 終章 人よ、花よ
南朝御所での騒動。
“妖退治”で御所内に入った正行が知るのは、南朝の事情。
そして出会った、坊門親忠と北畠親房、後村上帝。
弁内侍を含めて、彼らとの語らいで知る、それぞれの事情。
南朝への想い。それは前時代とは違う、親族でも違う。
民を安じるための北朝との和議を求める者がいるのだ。
一方で北朝側では、足利直義と高師直のしのぎ合いが。
北朝を討ちます。それは戦を止めて和議を結ぶための戦。
それは世に不可思議事也と轟かせた、戦。
だが、人の一生とは判らぬもの。儘ならぬもの。親房!
それでも、民を守るため、皆を生かすための戦に悔いは無い。
そしてついに高師直の軍との決戦に。
鈍器本並の長編な上下巻、一気読みでした。
上巻での、正行周辺の個性豊かな人物たちが、
戦では武将としてもキャラが立った姿。
それぞれの個性で、それぞれの役割を全うする姿。
殺し合う凄惨な場面なのに、潔く散る桜の花の如く。
時が来れば咲き誇り、時が来れば散りにゆく、
この場限りの生の疾走感の凛々しいこと!
ラストは、大河ドラマ「真田丸」のクライマックスが
脳内を過りました。
物流と兵糧、兵法など、先々の事を見据えての正行の道程。
大量に製造した槍を使う場面はありませんでしたが、
のちに弟の楠木正儀が神南の戦いで槍を使用したという話が
あるから、これも先々を見据えての布石なのかな?
Posted by ブクログ
今村将吾さんの本が大好きです。
その中でも、南北朝時代を題材に出してくれたことが嬉しかったです。護良親王や楠木家、北畠顕家など歴史の教科書には残らない人物に光を当ててくれたことありがとうです!
正行が父の正成に託されたように、弟に楠木家を託していくこと。楠木党の信念、成し遂げたかったこと、後村上帝の想い、胸が締め付けられるような想いでしした。
戦いのない世を作るために、自らがやらねばならぬと戦いをする道を選ぶ。誰よりも平穏の世で生きることを求めたのに、その世を作るために命を散らしてゆく。
素敵な作品に出会えました。ありがとうございます!