あらすじ
なぜか戦後から色濃くなった武士道精神、ネットで嫌われる〈体育会系〉としての野球部、甲子園に残り続ける朝日新聞のパターナリズム、女子マネージャーの役割と女子野球の歴史に見るジェンダー、ニュージャーナリズムが影響する「Number文学」の問題点、大河ドラマ『いだてん』に登場した「天狗倶楽部」の革新性……。日本の野球を「文化」の側面から批評し、インクルーシブなライフスタイルスポーツとして捉えなおす。
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Posted by ブクログ
高校野球の甲子園大会はもともと朝日新聞の不純な商業主義から始まっているということがよくわかった。
高校野球を取り巻く環境はひどいね。
プロ野球選手でさえ使わない重いバットでないとダメな規則らしい。体が出来上がっていない若者を壊してしまうような規則をおっさんたちが決めている。
甲子園に行けるのは有力選手を全国から集めることができる高校が殆どという問題とか,広陵高校に代表される暴力的な指導とか。
体育会系vs文化系という軸の置き方には疑問がないこともないがよく調べられている。
知らなかった事が多くてためになる本だ。
Posted by ブクログ
タイトルから日本の変な野球文化を面白おかしく書いた本かと思いきや、意外にも骨太な本でした。アメリカでの発祥と日本の明治時代における黎明期から現在までの野球文化の歴史が新書としては多めのページ数で詳しく解説されています。
主なテーマは甲子園に象徴される軍隊的な魂の野球と、運動することを楽しむエンジョイ・ベースボールとの対比です。なぜ日本の野球が一部のエリートが青春の全てをかけて燃え尽きるまでやるスポーツになったのか、そしてこれからの野球がどうあるべきかについての筆者の提案が書かれています。
いろんな野球うんちくも楽しいです。自分も野球をやっていましたが、少年野球の頃から応援に口汚い野次が混じっていたことが、明治の一高のころからの文化だと知って意外でした。華美で商業主義な野球を批判して炎上した朝日新聞が、良い野球を広めるという建前で始めたのが高校野球の全国大会で、結局は新聞社が新聞を売るためのマッチポンプだったというのが面白いです。
いちばん目から鱗だった主張が「甲子園は高校生には贅沢」という主張です。莫大な費用と関係ない大勢の生徒の応援招集をかけてまでやる必要なし。自分たちで運営すれば教育にもよい。その通りだと思いました。
甲子園を見て何か100%熱中できない自分の気分をみごとに言語化してくれた本でした。
Posted by ブクログ
野球部のクソ度合いを語る本かと思っていた。
が、どのように日本独特の野球文化や高校野球の世界が育ったのか、その長い歴史を紐解きながら、なぜクソと言われてしまう状況が生まれたのか、を語る本だった。
とても興味深かった。
私は完全なる文化系で、そして野球好きだ。
文化系女子が野球を嫌う気持ちもよく分かる。
一方で、この本の視点は全く違うが、野球の複雑さなどルールを理解すると文化系の人こそ面白いのではと思っている。
野球部クソ理論て競技そのものじゃなくて、競技を取り巻く環境に嫌気をさした体験があり、イメージダウンを招いた、とかもあるのかも。
Posted by ブクログ
私は中学高校と野球をやっており、そのしんどさから一時は離れ、現在は草野球的に活動している。感情は複雑で、高校野球はやりたくないが、野球はしたいのである。本書は高校野球という特殊な構造を解き明かし、野球を改めてスポーツとして、楽しむためにどうすれば良いかを提案する。
昨今の野球マンガにしても、技術論が全面に出され、選手の主体性からの、教育という面での成長を描くものが多い。それだけ時代が変わったのだろう。もちろん根性の野球も好きなのだが、この野球という文化が無くならないような、持続可能なラインを持って接していくべきである。
Posted by ブクログ
自分は野球をやったことはないけれど、コンテンツとして好きだ。球場でビールを飲みながら好きなものを食べて、野球を見るのも好きだ。
ただ、元来スポーツとは、コンテンツとして消費されるためにある訳ではない。
自分の子供が、これからおそらくスポーツに取り組むだろうから、何が大事なのか見直さなければならないなと思った。
Posted by ブクログ
日本野球史(幕末〜現代)の全体観に知ることができた。出来事と、その背景、精神性まで立ち入って解説している。
旧日本軍→戦後野球のマッチョイズムの移動を説いているのは斬新だなと感じた。
Posted by ブクログ
野球部に前時代的な慣習が残る原因は、実はスポーツ資源が不足していたからなのでは?という新しい見方が提示されている。
私はてっきり旧日本軍の影響が色濃く残っているせいだと思っていたけど、むしろその色は戦前<戦後だという。長嶋茂雄・王貞治の戦後の野球ブームによって野球をやりたい少年たちへの環境的な受け皿が十分になかった当時は、人数を減らす手段として理不尽な指導や坊主の半強制によって篩にかけ、去るものは本気度が足りないとして門戸を閉ざさざるを得なかった。
これにはスポーツをやりたい人が性別、運動能力、"本気度"にかかわらずに(ささえる側ではなく、する側)としてできる機会を得られるまでに至っていなかったことが問題であると著者は指摘する。
Posted by ブクログ
中盤から野球の歴史になったけど、全体として著者の言わんとするスポーツの在り方、今後の検討は真っ当。
スポーツの関わり方として「やる」「みる」「サポートする」と大別した場合「やる」が結果的に軽視される世の中になりつつある。
特に少子化や娯楽の多様化によって「やる」人が減ることになる中でどのようにスポーツ本来の価値を享受し活かしていくかを考える一歩になりそう。
あと昔の朝日新聞の拝金主義、現在のスポーツ新聞の感動ポルノ的に消費する振る舞いはスポーツのみならず一貫した問題。
Posted by ブクログ
書名から野球文化を批判する本のように思えるが、ベースボールの発祥から日本での野球文化の形成について、それぞれの時代や文化背景などから論じた一冊。野球の歴史だけでなく、日本の体育・スポーツに対しての問題点や提言もされており非常におもしろかった。
野球の女人禁制の話題の際に取り上げられる大相撲についても明治以降に「作られた」伝統である可能性が高く、「坊主頭」と「暴力的指導」については戦後のプロ野球人気で野球部の人気の沸騰とスポーツ環境の貧弱さとアンバランス調整のために活用されたが、それが次第に「慣習」「伝統」となったという説は面白い。このような明治以降に作られた新しい「伝統」や「慣習」は日常生活のあちこちに溢れている。
「野球害毒論」の連載により炎上し不買運動にまで発展した朝日新聞がそれを覆すため、野球の害悪を「善導」するというスローガンのもと、夏の甲子園の前身となる野球大会を企画。「善導」の1つとして、試合前後の整列と礼が取り入れられた。これも作られた「伝統」である。「大会を主催してニュースを作り出し、それを新聞の拡販につなげたい」という本音を「善導」で隠すスタートの時点で健全とは言えない文化が埋め込まれた。大手マスコミの行動は今も昔も変わらず独善的だと感じた。
関東軍が自主性を持ち過ぎて日中戦争に突入したという背景から、戦後に上意下達が徹底されたという。また、戦況の悪化で軍紀が乱れて厳しい上下関係が刷り込まれ、戦後にそれを経験した野球選手たちが各地の学校に広めていった。高校野球は戦前の日本軍よりも日本軍らしいという指摘は面白い。
Posted by ブクログ
日本におけるプロ野球以前の野球の普及の歴史が中心。所謂「体育会系」がどういう経緯で出てきたのかということについては意外な流れであり、面白く読めた。また、筆者の高校野球批判も的を射たものだとも思う。
タイトルが回収しきれていない感もあったので、星は4つだが、新書の中でここまで情報をまとめきっているのは凄いことだとも思う。
Posted by ブクログ
「教育を目的としているはずの高校野球業界で、なぜ広陵学園やPL学園のようなことが起こってしまうのか?」「そもそも、高校野球は教育目的で作られたものなのだろうか?」「部活動は本当に有効な教育施策か?」といった疑問を持って読んだ。
第一の疑問に対する明確な答えは出ていないが、考えるための歴史的背景は本書で整理できたと思う。
第二の疑問の答えはおそらくNOだ。
第三の疑問は本書の射程になかった。別の本を読むべきだろう。
Posted by ブクログ
勉強になったけど、思想と歴史の話なのでとっても難しい。
ざっくりまとめるとこんな感じか(間違ってる所あるかも
- 野球がサブカルチャーだったときは、野球人たちは野球の地位を高めるために、武士道を取り入れた
- 戦後に元来の「武士道」要素が薄れ、現在の上意下達な文化になった
- さらに「野球なら合法的にアメリカに勝てる(=戦争に負けた腹いせができる)」というところから組織内(例:学校など)での地位が向上し、組織を上げて勝敗にこだわるようになった
- ↑が現在の高校野球の原型だが、まあ、時代錯誤だよね
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 <体育会系>としての日本の野球文化
第2章 現代の<体育会系>はどうなっているのか?
第3章 アメリカの「創られた野球神話」
第4章 エンジョイ・ベースボールから「魂の野球」へ~戦前のトップエリート校・一高で起こった変化
第5章 天狗倶楽部と野球害毒論争~早慶戦から甲子園野球の誕生へ
第6章 「帝国主義」と日本野球~大正~昭和の論点
第7章 戦後日本野球とさまよえる男性性~武士道とスポーツジャーナリズム
第8章 野球とスポーツの価値論
<内容>
前半は「体育会系」の世界を野球の中から描く。中盤はアメリカおよび日本の野球の歴史。最後にかなり踏み込んだ現代野球論。中~後半は面白く読めた。スポーツ根性論は昔は浸っていたが、最近は淡泊になった。世の中が「甲子園だ!」「大谷だ!」と騒ぐと変に冷淡になる性格が出ているのかもしれないが、高校内の部活問題などとも相まって、著者の考え方に賛同する部分は多い。