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Posted by ブクログ
本書が提示する「スポーツは大人の社会に利用されてきた」という視点は、私自身の経験と強く響き合った。子どもの頃、父はプロ野球中継に、母は夏の甲子園に夢中だった。家庭のテレビが野球に占領されることへの反感と同時に、勝敗に一喜一憂する大人の姿に不思議な魅力を感じていた。
学生時代はスポーツは“するもの”だったが、社会人になると“見るもの”へと変わる。この変化は、本書が指摘する「スポーツが大人の社会構造に組み込まれていく過程」をまさに体現している。
また、文化系と体育会系の対立を扱った序盤の議論は、身体性と文化性を分断してきた日本社会の構造を丁寧に読み解くものであり、スポーツを単なる娯楽としてではなく文化として捉え直す契機を与えてくれる。
本書は、スポーツを“する/見る”という単純な二分法ではなく、社会の中でどのように位置づけられてきたかを考えるための視座を提供してくれる。「野球部はクソ」と、何となく共感できる話題から、そう思う人が出てしまう構造への問題提起が面白かった。
Posted by ブクログ
ここ数日のいらいらからようやく解放されそうだ。
ワールド何某、世界選手権、スポーツの祭典、全て大嫌いである。当然この何日間のオリムピック報道、見たくない、聞きたくない、にも限らず漏れ伝わってくる。
選手たちの皆様には何の恨みもありません。TV、ラヂオ、インターネットなどのマスメディア
を通してのこれでもかと言う「感動したの押し付け」には全くウンザリです。
何気なく手にして読み始めたのですが、いやあ面白い。「野球」をメインに考察していらしゃるのですが、歴史的な事実、当時の世相、当時の民衆への情報操作、いちいちなあるほどと得心しながら読み進めさせてもらいました。
本書での「野球」をその他のスポーツに置き換えて考えてみても、その「仕組み」と「構造」はそのまま「そりゃあ こうなってしまうよなあ」と思い至りました。
そして、もうええ加減にして欲しいと思いながら、冒頭の気持ちに戻っていくのでした。
Posted by ブクログ
タイトルから日本の変な野球文化を面白おかしく書いた本かと思いきや、意外にも骨太な本でした。アメリカでの発祥と日本の明治時代における黎明期から現在までの野球文化の歴史が新書としては多めのページ数で詳しく解説されています。
主なテーマは甲子園に象徴される軍隊的な魂の野球と、運動することを楽しむエンジョイ・ベースボールとの対比です。なぜ日本の野球が一部のエリートが青春の全てをかけて燃え尽きるまでやるスポーツになったのか、そしてこれからの野球がどうあるべきかについての筆者の提案が書かれています。
いろんな野球うんちくも楽しいです。自分も野球をやっていましたが、少年野球の頃から応援に口汚い野次が混じっていたことが、明治の一高のころからの文化だと知って意外でした。華美で商業主義な野球を批判して炎上した朝日新聞が、良い野球を広めるという建前で始めたのが高校野球の全国大会で、結局は新聞社が新聞を売るためのマッチポンプだったというのが面白いです。
いちばん目から鱗だった主張が「甲子園は高校生には贅沢」という主張です。莫大な費用と関係ない大勢の生徒の応援招集をかけてまでやる必要なし。自分たちで運営すれば教育にもよい。その通りだと思いました。
甲子園を見て何か100%熱中できない自分の気分をみごとに言語化してくれた本でした。
Posted by ブクログ
書名から野球文化を批判する本のように思えるが、ベースボールの発祥から日本での野球文化の形成について、それぞれの時代や文化背景などから論じた一冊。野球の歴史だけでなく、日本の体育・スポーツに対しての問題点や提言もされており非常におもしろかった。
野球の女人禁制の話題の際に取り上げられる大相撲についても明治以降に「作られた」伝統である可能性が高く、「坊主頭」と「暴力的指導」については戦後のプロ野球人気で野球部の人気の沸騰とスポーツ環境の貧弱さとアンバランス調整のために活用されたが、それが次第に「慣習」「伝統」となったという説は面白い。このような明治以降に作られた新しい「伝統」や「慣習」は日常生活のあちこちに溢れている。
「野球害毒論」の連載により炎上し不買運動にまで発展した朝日新聞がそれを覆すため、野球の害悪を「善導」するというスローガンのもと、夏の甲子園の前身となる野球大会を企画。「善導」の1つとして、試合前後の整列と礼が取り入れられた。これも作られた「伝統」である。「大会を主催してニュースを作り出し、それを新聞の拡販につなげたい」という本音を「善導」で隠すスタートの時点で健全とは言えない文化が埋め込まれた。大手マスコミの行動は今も昔も変わらず独善的だと感じた。
関東軍が自主性を持ち過ぎて日中戦争に突入したという背景から、戦後に上意下達が徹底されたという。また、戦況の悪化で軍紀が乱れて厳しい上下関係が刷り込まれ、戦後にそれを経験した野球選手たちが各地の学校に広めていった。高校野球は戦前の日本軍よりも日本軍らしいという指摘は面白い。
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