あらすじ
竜泉佑樹は謀殺された幼馴染の復讐を誓い、ターゲットに近づくためにテレビ番組制作会社のADとなり、標的の3名とともに秘祭伝承が残る無人島――幽世島でのロケに参加していた。撮影の陰で復讐計画を進めようとした佑樹だったが、あろうことか自ら手を下す前にターゲットの一人が殺されてしまう。一体何者の仕業なのか? しかも、犯行には人ではない何かが絡み、その何かは残る撮影メンバーに紛れ込んでしまった!? 疑心暗鬼の中、またしても佑樹のターゲットが殺され……。異形のロジックが冴えわたる〈竜泉家の一族〉三部作、第2弾。/解説=若林踏
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Posted by ブクログ
かなり良かった
「遊星からの物体X」でミステリを書こう!というのが着想の始まりだと思うけど、こうなるとはね
今回は真面目に読者への挑戦状をやってみたが、遺体になりすましてるところから分からずギブアップ…
仮死状態で海野が暗躍してそうだというのは分かったのだが
マレヒトが2体居る、も考えはしたが、そのパターンを処理できるキャパがなかったので、今回はないものとして考えてしまったなあ
ていうか基本的にすべての伏線を拾ってくるスタイルでビビりましたよ
読者への挑戦状に到達してから考えるときは、それ以前を拾い読みで手がかりを探す感じだったが、あたりをつけずに頭からちゃんと読み直した方が良さそうだなあ
バイアスがあると良くない
Posted by ブクログ
おもしれ~~~~~!!!!!
前作のタイムトラベルものとは違い、今度は人間に擬態できるバケモノが誰かに化けているかを突き止めるお話。
は? って思うでしょ。
最初黒猫が犯人ですってなったとき、こっからどうなるんだよと思ってハラハラドキドキしたけど、そんな心配杞憂でした。面白すぎる!!!!寝る前に読み始めて結局一気読みした。読み終わったあと思わず「おもしれ~~~」ってつぶやいちゃったもんな。夜中二時に。
二転三転する展開に翻弄されっぱなし!竜泉の推理力がすごすぎる。あと加茂の名前が出たのも嬉しかった。
最後のオチも面白すぎて脱帽。あーそういうことか!ってちょっとにやけちゃった。人間とは業が深い生き物ですね。
早く三作目が読みたい!明日にでも発売してくれ!
Posted by ブクログ
二転三転する結末が待っていて、最後まで驚きの連続だった!
この描写はヒントだろうな、もしかして、、と所々勘づくけど、斜め上の結論に辿り着いて、脱帽といった感じ。
Posted by ブクログ
正直、エピローグまでは★3〜4でした。
3人を幼馴染の復讐の対象とし、幽世島へロケにきた主人公と一行。しかし、マレヒトと呼ばれるこの地に伝わる異形の存在に対象が先取りされてしまう。復讐を自分の手で成し遂げるため、マレヒトの犯行をとめ、マレヒトは誰に化けているのかを追究していくストーリー。マレヒトという存在を扱った特殊設定ミステリで、その設定も緻密になされているため、本格ミステリとして十分楽しめる本作である。しかし、エピローグまで異形の存在の本能的な動機がミステリ好きとしては刺さらず、またマレヒトの蛮行というだけでは物足りなかった。
エピローグ、特殊設定を用いたミステリだけで終わらず余韻を味わえる最期は救われました。
Posted by ブクログ
設定を受け入れるのに若干時間を要しました…というか登場人物たち特殊設定に順応するの早すぎない?特に主人公!なんてツッコミを入れつつ読みましたが、まあ竜泉家の一族は不思議な事への耐性が強いんでしょう。
暗号を解読して発見した文書により、マレヒトの能力が開示されていくシーンはワクワクしましたし、一見単純に見えた暗号がマレヒトには解読不可能なものだったこと、それが犯人当てに直結する点は非常に巧みだと思いました。
読者への挑戦付きの本格ミステリとのことで、論理によって犯人を導き出すことが十分に可能であり、フェアなミステリだと思います。私はマレヒトの仮死状態にするという能力を誤解していたせいで、見当違いの推理をしてしまい、犯人当ては失敗しましたが…
マレヒトが2人いる可能性も考えはしたのですが、わざわざ島に戻る理由なんてないよなぁと思っていました。しかし、生殖を目的に島へ戻ってきたという事実にゾッとしました。マレヒトの雄と雌が揃うことで、指数関数的に増殖してしまう未来は想像しただけで恐ろしいです。しかし、泳げないという弱点さえ知っていれば対処のしようはあると思います。竜泉家の財力を用いて、時空の裂け目をなんとかして封印して欲しいです。
Posted by ブクログ
前作、「時空旅行者の砂時計」で特殊設定ミステリというものを初めて読んだ。
本作が二冊目の特殊設定ミステリだが、まだ慣れない。緻密なロジックで構成されており、そのロジックが物語を損なわないように表現されているのだが、特殊設定が出た途端、醒めた感じになって以降は淡々と読み終えてしまった。
面白いのだが、今一歩入り込めない。
頭が古いのかな。
Posted by ブクログ
竜泉家シリーズの第2弾。
恋人の復讐のために孤島で殺人を計画していた主人公。しかし、執行する前にターゲットが殺害されてしまう。その犯人はまさかの人外の存在で...。
本格ミステリー×SFの新機軸な展開でとても面白かったです。人外である”マレヒト”の情報も正確に提示され、どんでん返しが何度も用意されていて飽きさせずに最後まで読めました。
このシリーズも三部作で、最後のシリーズも楽しみなので読んでいきたいです。
この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
竜泉佑樹:下野紘
三雲絵千花:佐倉綾音
木京征矢:小西克幸
海野仁三郎:福島潤
古家努:子安武人
西城久師:古川慎
八名川麻子:伊藤彩沙
茂手木伸次:諏訪部順一
信楽文人:戸谷菊之助
三雲英子:坂本真綾
三雲の父:大塚芳忠
マレヒト:高山みなみ
マイスター・ホラ:森川智之
Posted by ブクログ
めっちゃ面白かった。
主人公の佑樹は撮影のためにある孤島に行く事になる。そしてそこで幼馴染の死に関わっている奴等をまとめて殺す計画を立てていた。しかし殺す前にターゲットが殺されてしまった。過去に島で起こった不可解な殺人事件、言い伝えの謎、ターゲットを殺したのは誰なのかを解き明かしていく話。
竜泉家シリーズの2作目。シリーズではあるけど、今のところ前作からの繋がりみたいなものはあまり感じなかった。その代わり単体の作品として読んでもしっかり面白かった。
読んでてすごい怖かった。最初は過去の事件と同じ殺され方だなぁくらいの印象だったけど、そこに人ならざるモノが関わっていて他の生物に擬態することができる。その得体のしれなさみたいなのがドキドキして怖かった。
これも1作目と同じで読者への挑戦があるけど全く分かんなかった。解決の鍵になってくるような伏線がいっぱいあって、真相を聞くとあれも伏線だったのかって思った。印象に残った伏線は、マレヒトだった西条がテントの設置をミスしてしまったこと、菜穂子が手紙を預けた大学の先輩の2つが特に印象的。
ストーリーもしっかり面白かったし鉄壁のアリバイがある西条がはんにんだったのが良かった。西条か絵千花が犯人だったら面白いなーと思ってたから最高だった。
3作目がどういう話で、竜泉家シリーズがどういう風に終わりを迎えるのかが読む前から楽しみ。
めっちゃ良かった。
Posted by ブクログ
令和3年の交通事故発生件数は30万5,196件、これによる死者数は2,636人。そんな数を見ると交通事故による死は決して他人ごとと片付けられるものでないことが分かります。大切な人を失う突然の事態。『検視により事件性がないと判断され』れば、それは遺族として受け止めざるを得ない現実なのだと思います。
しかし、交通事故の連絡を受け駆け付けた先で、父親からこんな言葉を聞かされたとしたらどう思うでしょうか?
『あの子が死んだのは事故なんかじゃない』
さてここに、『小中高と同じ学校に通っていた』幼馴染の死に疑念を抱く一人の男性が『復讐』を誓う先の物語があります。『十か月もかけてじっくりと復讐の準備を重ねてきた』主人公が『ターゲット』の三人と南海の孤島へと渡るこの作品。そんな中に主人公の意思に反して『ターゲット』が次々と死んでいく様を見るこの作品。そしてそれは、『クローズド・サークル』で繰り広げられる”ミステリ”な物語です。
『〈A新聞 一九七四年十月八日 朝刊〉「13体の遺体、相次いで見つかる/鹿児島県K郡幽世島」
5日、幽世島(人口12名)の知人宅を訪問した男性が、島内の墓地で2体の遺体を発見。翌日早朝に船舶無線で通報を受けた鹿児島県T署は、島の集落にて更に10体の遺体を、島から50メートルほど離れた海上の岩場では1体の遺体を見つけた…』と新聞に記された事件。『通報を受けて』『島に向かった』警察は、そこで『十三体もの遺体』を見つけました。『いずれの遺体も細長い刃物あるいは錐状のもので心臓を一刺しにされていた』という『当時の県警の発表』。そして、一人の遺体だけが『全身を獣に喰い荒らされたような惨い状態で発見された』こともあって『この大量殺人事件は「幽世島(かくりょじま)の獣」事件』と呼ばれるようにな』ります。そして、『鹿児島県の南方、太平洋にポツンと浮かぶ無人島』で四十五年前に起こった事件は『財宝伝説』を信じて、『民族学研究』という名目の下に島を訪れた『M大学教授笹倉敏夫』が引き起こしたこと…と県警によって結論づけられました。
『二〇一九年十月十六日(水) 〇七:四〇』、『船に揺られながら』、『計画を実行に移すまで、あと十八時間強』と考えるのは主人公の竜泉佑樹(りゅうぜん ゆうき)。『これから人を殺すつもり』という佑樹は『十か月もかけてじっくりと復讐の準備を重ねてき』ました。『これから三人もの命を奪うというのに、彼は船に乗る前よりもずっと落ち着いた気分になっていた』と、『ぼんやりと水平線をみつめ』る佑樹ですが、『何か、面白いことでもあった?』、『…楽しそうに笑っていたように見えたから』と三雲絵千花(みくも えちか)に話しかけられます。そんな三雲と会話をはじめた佑樹は『お父さんは、幽世島の出身なんですよね?』と訊きます。『大学卒業後』、『食品系の会社で働いていたが、三年前に本名のままシンガーソングライターとしてデビュー』した三雲の経歴には『彼女が幽世島で祭事を司り、島内の有力者だった三雲家の子孫だということ』が強調されていました。そんな三雲と『ADの佑樹を含むロケクルー』を乗せた船は『世界の不可思議探偵団』という『テレビ特番の撮影を行う』ために、『一九七四年に「幽世島の獣」事件という大量殺人事件が起きた島』へと向かっています。『ルーツが幽世島にあって嬉しいと思ったことは一度もない』と語る三雲は『幽世島で起きた事件について初めて聞いた時は、大泣きして話の途中で逃げ出してしまった』と事件について知った時のことを語ります。そんな中、『幽世島』が水平線の彼方にポツンと姿を現します。
『二〇一八年十二月十三日の夜』、『続木菜穂子が亡くなったという連絡を受けた』佑樹は菜穂子の実家に駆けつけます。そんな佑樹に『仕事で山梨県の山間の村に向かい、その帰りに交通事故を起こしたと』警察から説明を受けたという父親。『小中高と同じ学校に通っ』た菜穂子の遺体の横に座る佑樹に『あの子から…手紙が届いたんだよ』と話しはじめた父親。『あの子が死んだのは事故なんかじゃない』と語る父親は『誰かに手紙を預けていたみたいでね。あの子の死後に投函されたらしい』と手紙を佑樹に手渡します。手紙を読み『警察には相談なさったんですか?』と訊く佑樹に、『もちろんしたさ…』と語る父親は、菜穂子は『統合失調症を患っていた』、『書いてあることは妄想に過ぎない』、『事件性がないから、これ以上捜査することもない』と警察に言われたと話します。それに、『Jテレビには父の大学時代からの友人がいる』、『手紙に書かれている三人に気づかれることなく情報を集められる』と告げる佑樹。
『二〇一九年十月十六日(水) 〇八:一〇』、『幽世島』に上陸をはじめる中に『…何だよ、この島。陸地まで揺れてやがる』と言う『プロデューサーの木京(ききょう)』に『波を見ていると脳が錯覚するんでしょう』と答える佑樹。『計画が順調に進めば、彼が次の誕生日を迎えることはない』と、『ターゲットの一人である彼に対し、にこやかに笑いかける』佑樹は『…どうして竜泉はケロッとしてるの』と『直属の上司である海野』に訊かれ『多分、体質ですかね』と答えます。『もうすぐお別れする予定』という『復讐のターゲットであり、計画では最初の犠牲者となる』予定の海野を見る佑樹は『出航する船を見送り』ました。『次に船が戻って来るのは二日後の十月十八日午後二時ごろだ。それまで幽世島は完全に外界から孤立することになる。スマホは圏外、衛星電話にも細工をしてある』と思う佑樹。南海の閉ざされた孤島で次々と人が死んでいく、『クローズド・サークル』な物語が描かれていきます。
“竜泉佑樹は謀殺された幼馴染の復讐を誓い、ターゲットに近づくためにテレビ番組制作会社のADとなり、標的の3名とともに秘祭伝承が残る無人島 ー 幽世島でのロケに参加していた。撮影の陰で復讐計画を進めようとした佑樹だったが、あろうことか自ら手を下す前にターゲットの一人が殺されてしまう。一体何者の仕業なのか?”とまさしく”ミステリ”な内容紹介にとても惹かれるこの作品。デビュー作の「時空旅行者の砂時計」で第29回鮎川哲也賞を受賞された方丈貴恵さんの二作目となる作品となります。そんなこの作品は”竜泉家の一族三部作第2弾”と本の帯に記されてもいます。前作の「時空旅行者の砂時計」では”呪い”によって一族のほとんどが死に絶えたという”竜泉家の一族”の過去に眠る秘密を解き明かすべく”タイムトラベル”によって過去へと旅立ち”名探偵”として活躍する主人公・加茂の姿が描かれていました。一方で、そんな前作の続きとなるこの作品の本文はこんな風にはじまります。
『マイスター・ホラによる序文
私の名を見て「またか」と思った方も、いらっしゃるかも知れませんね? これから語られるのは「復讐」と「襲撃」の物語です』。
はい、前作で物語の核を担ったのは『砂時計』のマイスター・ホラでした。この作品冒頭のホラのいきなりの登場に、まさしく続編!と思わせますが、ホラはこんな風に続けます。
『私はワトソン役や語り手役でないどころか、事件に立ち会ってもおらず、そもそもこの物語に登場すらしません』。
そうです。一見、ホラが登場する”タイムトラベル”を用いた続編の登場かと思わせますが、ホラの役回りはこの序文と、前作同様の〈読者への挑戦〉の章のみです。しかし、ホラのこの序文を読むだけでこの作品が”竜泉家の一族”シリーズであることが読者の中に感覚として蘇ります。いかに、前作の中でホラの存在感が大きかったかを改めて再認識させられます。また、そもそもが”竜泉家の一族シリーズ”とアピールされている通り、何かしら”竜泉家”に関わる人物が登場するのはお約束だと思います。そんなこの作品で前作の加茂の役割を果たすのが、竜泉佑樹です。そして、『佑樹のいとこである伶奈の夫』が前作の加茂である、と前作とこの作品との関係性が説明されてもいます。こんな風に書くとネタバレと思われるかもしれませんが、ご安心ください。わざわざこのことを書いたのはこの作品がシリーズ第二作ということで、前作との読書の順番をどこまで重視すべきかという点に触れたかったからです。そうです。前作とこの作品の繋がりはたったこれだけなのです。前作を先に読んで学習を必要とする点は何もありません。ということで、この作品に興味を持たれた方はシリーズ第二作であるということに躊躇されることなく、この作品からスタートされても問題ありません。少し長くなりましたが、このことをまずお伝えしたいと思いました。
次にこの作品の特徴を見ていきたいと思います。なんと言っても”ミステリ”が大看板な作品ですのでネタバレは禁物です。いろいろとボカシつつ書きたいと思いますが、この作品の一番の特徴は、ホラのこんな説明がわかりやすいと思います。
『主人公である竜泉佑樹が向かった孤島で異常な事件が発生して死者が出るという意味では、これもやはりクローズド・サークルものの推理小説だと言えるでしょう』。
前作「時空旅行者の砂時計」では、外の世界から寸断された別荘が舞台となりました。『クローズド・サークル』とは”何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品”のことを指します。前作でも孤絶された別荘にドキドキ感が湧き上がりましたが、この作品の舞台は『孤島』であり、隔絶感はひとしおです。世の中には、このような『クローズド・サークル』な設定を用いた作品は数多あるかと思いますが、”ミステリ”の読書数が少ない私が読んだ作品の中では近藤史恵さん「凍える島」くらいしか思い浮かびません。そんな近藤さんの作品も第4回鮎川哲也賞を受賞されています。これから”ミステリ”を書かれようとされる作家さんは『クローズド・サークル』をきっかけに…と思われる傾向があるのでしょうか?
では、まずはこの作品の『クローズド・サークル』としての設定とそんな島に閉じ込められた登場人物をご紹介しておきましょう。
● 『クローズド・サークル』な設定
・鹿児島県の南方、太平洋にポツンと浮かぶ無人島
・スマホは圏外、衛星電話にも細工をしてある
・次に船が戻って来るのは二日後の十月十八日午後二時ごろ
※ 島への到着は十月十六日午前八時十分
・幽世島の周辺は潮の流れが非常に速い
● 『幽世島』に上陸したのは以下の9名(男性7名、女性2名)
・ 竜泉佑樹(26歳): 主人公、J制作のアシスタント・ディレクター
・ 三雲絵千花(27歳): コガプロ所属のシンガーソングライタ―、父親が幽世島の出身
・ 木京征矢(45歳): Jテレビの辣腕プロデューサー
・ 海野仁三郎(36歳): J制作のディレクター
・ 古家 努(46歳): コガプロの社長、愛犬はタラ
・ 西城久師(36歳): J制作と契約しているカメラマン
・ 八名川麻子(32歳): J制作と契約しているカメラマン
・ 茂手木伸次(38歳): S大学教授、亜熱帯地域生態系の研究者
・ 信楽文人(21歳): M大学学生、一年間休学してJ制作でバイト中
いかがでしょうか?船が戻ってくるまでには54時間ほどの時間があり、この9人が共同生活を送ることになります。そんな二泊三日の『クローズド・サークル』な世界の幕開けというのがこの作品の大前提です。これだけでも十分に面白そうですが、前作では”タイムトラベル”をそこに重ねられた方丈さんですから、この作品も『クローズド・サークル』だけで終わらせるわけがありません。そんな方丈さんがこの作品に重ねられるのが『特殊設定ミステリ』という考え方です。
『その中では、物語世界だけで通用する超自然的な現象が登場し、それにまつわる特別ルールが提供されるのがお約束になっている。そして、その特別ルールが謎解きの前提条件になるんだ』。
登場人物の一人がそんな風に語る『特殊設定』。これこそがこの物語の核を占めていくことになります。これについては、某アメリカSF映画作品の設定が一瞬頭をよぎりましたが、小説としては私にとって初めての世界観です。そこに展開していくまさかの前提の物語には唖然とする他なくとても新鮮に感じました。そして、『クローズド・サークル』と、この『特殊設定』の相性の良さに驚く非常に面白い世界がそこには描かれていきます。これ以上触れてしまうと一気にネタバレしてしまいかねませんので、ここまでとしたいと思いますが、シリーズとして”タイムトラベル”をありとするならこちらもありなのかもしれない、そんな感想を抱きました。
そんなこの作品の物語の起点は二つあります。まずは四十五年前に起こったという『「幽世島の獣」事件』です。当時の新聞記事の内容を冒頭に触れましたが、13人もの人びとが遺体となって発見された悍ましい事件がこの『幽世島』を舞台に発生しました。『いずれの遺体も細長い刃物あるいは錐状のもので心臓を一刺しにされていた』という『県警の発表』から詳述されていく事件の内容に読者は作品世界に一気に連れていかれます。一方で、そんな悍ましい歴史が残る島へと向かう主人公の姿が物語には描かれていきますが、その起点となったものが、『小中高と同じ学校に通っ』た菜穂子の死の報に駆け付けた菜穂子の実家で父親から手渡された手紙の内容です。物語の冒頭ではその内容は伏せられたままであり、生前誰かに預けた手紙がその人物によって菜穂子の死後に投函されたことが語られます。一方で物語が進み〈菜穂子の遺書と新聞記事〉の段では、そこに書かれた全文が明かされることによって読者は菜穂子の死に隠された真実が何かを知ることになります。そうです。この二つの起点の先に内容紹介に記された物語は展開していくのです。
そんな物語は、『クローズド・サークル』のお約束ごととして、次から次へと登場人物に陰惨な死が訪れます。
『ここには携帯電話の電波も届かない。ターゲットの三人が逃亡する恐れもなければ、邪魔が入る心配もない。通報してから警察が来るまでに何時間もかかるのも好都合だった。幽世島…それは佑樹の復讐にうってつけの場所だった』。
そんな『幽世島』でかねてからの計画を実行すべく強い意気込みを見せる主人公の佑樹。しかし、佑樹の思いを嘲笑うかのように『ターゲット』たちは何者かによって殺されていきます。
・『殺人計画を立てて実行しようとした矢先に先を越されてしまう』。
・『どこの誰だかは知らないが、これ以上は復讐計画の妨害をさせる訳にはいかない』。
あまりに予想外な展開に『探偵』となって、事件の裏側にあるものを見据えていく佑樹。『私たちの中に犯人がいると考えるしかない』という『クローズド・サークル』な設定が登場人物だけでなく読者にも疑心暗鬼を生んでいきます。そこに、上記した『特殊設定』が読者に新たな恐怖を与えながら展開していく物語。そんな物語が至る結末には、最後まで読者を欺きながら、それでいてしっかりと『クローズド・サークル』な設定に決着をつけてくださる方丈さんの絶妙な構成力を土台にした”ミステリ”な物語の姿がありました。
『この世界は不思議に満ちている。どんなにあり得ないことでも起こり得る』。
四十五年前に13人もの遺体が発見された南海の孤島へとロケに訪れたクルー9人を次から次へと襲う悍ましい殺人の恐怖が描かれたこの作品。そこには、『クローズド・サークル』な設定に巻き込まれてしまう”竜泉家の一族”の運命に翻弄される主人公・佑樹の『探偵』としての活躍が描かれていました。『クローズド・サークル』の緊張感を味わえるこの作品。そんな物語に、まさかの『特殊設定』が恐怖を倍増させるこの作品。
『どんなにあり得ないことでも起こり得る』という言葉の意味深さに恐怖する、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
時空旅行者から続けて読んだ
特殊設定ミステリー
前作と星の数は同じだが若干の落ちる評価かなあ
トイレの回数の一覧表、結末からの逆算が見え見えかなぁ
???の特性の多さにも鼻白んだ
次作も積んであるが、ちょっと間を開けよう
Posted by ブクログ
〈竜泉家の一族〉三部作の二作目。亡くなった幼馴染の復讐のために無人島のテレビロケに参加した竜泉侑樹。その島で自分で殺害しようとしていた人物が殺されてしまう。ここからどんどん思わぬ方向へ進んでいき特殊設定のミステリーになっていく。不可能殺人のようなものに説得力を持たせて展開されていく中盤以降は特に読み応えがあって、ラストまでそれが変わることはなく楽しめた。一作目とはまた違う設定と謎があって三作目の期待が大きくなる。
Posted by ブクログ
時空旅行者の砂時計に次ぎ、竜泉家の一族三部作の2冊目。題名から推測するに、無人島で起きる事件の解決だろうか?いずれにしてもクローズドサークルだろう。
三部作というくらいだから、竜泉家が関係する。そしてマイスター・ホラが案内役を務めると序文で書かれている。その後プロローグがある。
序文からすでに始まっている。
1974年無人島の「幽世島(かくりょじま)」で惨事があった。時はそれから45年後の2019年。
竜泉佑樹が幼馴染の続木菜穂子とその父親が不審死した事件の復讐を画策する。ターゲットは3人。しかし1人目が何者かに殺害される。
ここから少し予想外の展開が始まった。SFミステリーの様相となった。マレヒトとは何者か?それが犯人なのか?そしてそれは・・・
私は本格ミステリーマニアでもないし、SFミステリーマニアでもないが、マレヒトについての謎を解くことが、解答に繋がると読み取ることはできる。
また、本作も終盤にマイスター・ホラから読者への挑戦がある。佑樹の復讐は何処へ行ったのかと忘れてしまう場面が続く。この設定に意味があるのか?最後に全て回収された。
Posted by ブクログ
竜前家シリーズ第二作とのことで、前回のタイムトラベルの話がとても良かったのでこちらも読んでみました。特殊設定ミステリーですが、設定の特殊さが前作と全く異なります。
個人的には前作の方が好きでした。主人公のキャラが好きだったのと特殊設定とはいえタイムトラベルという割とメジャーな設定だったからかもしれないです。逆に今回は主人公のキャラに感情移入出来ないのと幼馴染(大切な人ではあったと思うがここ数年交流もあまりなく恋愛感情があった訳でもない)の復讐のために人生棒に振れるものなのか?というのが腑に落ちないからかもしれません.
ネタバレになるので書きませんが、設定が特殊すぎてキチンと読み込まないと推理が出来ないです。わたしはテキトーに読んでしまい、あれ??それ出来るんだっけ??となりました。今、改めて2周目読んでます。
ただ流石は方丈先生なので読みやすいですし、ストーリーは楽しいです。三作目も楽しみです。
Posted by ブクログ
竜泉家シリーズ第二弾。ADとして無人島にやってきた竜泉祐樹。幼なじみの敵討ちとして連続殺人を目論むが、その前に狙った相手が何者かに殺されてしまう。果たして誰が殺したのか。またこの島の秘密とは…
前回とはまた違った特殊設定ミステリで、面白かった!そしてみんなの適応能力が前回と同じくすごすぎ笑
Posted by ブクログ
これは好き嫌いが分かれる作品かも知れません。
本作『孤島の来訪者』は竜泉家シリーズ2作目となる特殊設定ミステリになります。
前作との関連性はほぼない独立した作品ですので、クローズド・サークルが好きな方は楽しめると思いますが特殊設定ミステリの「特殊」が前作以上に奇抜過ぎて、今村昌弘さんの剣崎比留子シリーズと印象が被りました。とは言え、竜泉家シリーズの3作目の文庫化も私個人は楽しみにしています。
概要です。
竜泉佑樹は復讐のために1つの計画を実行に移すべく、テレビ制作会社のADとして孤島へ旅立つ。しかし同行していた復讐相手を殺害する計画は孤島の伝説によって阻まられ、竜泉佑樹は阻害要因の排除のために名推理を繰り広げていく。果たして竜泉佑樹は伝説に打ち勝ち、無事に島を脱出できるのか?
Posted by ブクログ
何一つ情報を入れないまま読まないとほぼ確実にこの本の魅力が減ります
タイトル、作者、ミステリーである、装丁
なんでもいい 興味があれば買ってください
ただひとつ
僕は邪念が多すぎて大体分かってしまったので純粋に楽しめていません
Posted by ブクログ
死体に化けることができる「マレヒト」という怪物の存在を仮定した特殊設定ミステリ。
前作のタイムトラベル同様に設定が度を超えて特殊なので、読者に挑戦状もあるけど一般読者からしたら推理を聞いてもふーんって感じなる気しますね。
Posted by ブクログ
驚きの特殊設定でした(笑)
結末が気になりつつも、二転三転する推理に都度なるほど〜と感心してしまいました。
でもキャラクター的には前作「時空旅行者の砂時計」の方が魅力的だったかな。
Posted by ブクログ
食べた生き物に化ける事の出来るモンスターが登場する特殊設定ミステリー。
モンスターについての説明書きを見るとミステリー慣れしている人なら仕掛けに気がつくと思う。
主人公の復讐設定があってもなくてもという状況は惜しいな。
マレヒトは液体に弱いなら風呂に入れるじゃダメだったのかな?
Posted by ブクログ
前作【時空旅行者の砂時計】が面白かったですが、その続編が今作です!
『竜泉家の一族シリーズ』の第2弾作品です!
前作はSF要素があるミステリーで今回もそんな感じかと思い読み始めましたが全く思いも寄らない方向に・・・