あらすじ
安定した収入、伴侶と家族、健康、老後のたくわえ―。この既存の幸福像は、いまや瓦礫と化した。神仏はおろか、現代社会の宗教とも言える科学への不信も極まり、寄る辺ない私たちの孤立はさらに深まっている。この憂鬱な時代のただ中で、私たちが真の意味で生まれ変わり、新たな「幸せの感情」に浸ることなど、果たして可能なのだろうか? その問いを解く鍵は、夏目漱石の100年前の予言にこそある。大ベストセラー『悩む力』刊行から4年の時を経て、待望の続編がついに登場!【目次】まえがき/序章 「幸福論」の終わり/第一章 漱石とウェーバーに何を学ぶのか/第二章 どうしてこんなに孤独なのか/第三章 漱石が描いた五つの「悩みのタネ」とは/第四章 漱石の予言は当たったか/第五章 ホンモノはどこにあるか/第六章 私たちはやり直せるか/第七章 神は妄想であるか/第八章 生きる根拠を見いだせるか/終章 それが最後の一日でも、幸せは必ずつかみ取れる/あとがき
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Posted by ブクログ
悩む力の続編である本書は、二度生まれをテーマに現代における幸せについて考えている。2011年3月におきた大震災によって宗教に代わって信仰されてきた科学への不信。
夏目漱石の原著を元に結論として二度生まれのススメをしている。
漱石は読んでみようと思ったが、作者の言葉自体にはなんら共感できなかった。着眼点は素晴らしいと思う。
Posted by ブクログ
この本の中で一番ぐっと来たのは「過去を大事にする」という訴えでした。「『可能性』だとか『夢』だとかいう言葉ばかり発して未来しか見ようとしないのは、人生に対して無責任な、あるいはただ不安を先送りしているだけの態度」との指摘でした。
私もどちらかというとこの性質で、自分の人間関係も焼き畑農業的だなぁ、と反省したこともあったので、ぐっと来た。
この未来ばかり見てしまうのも市場経済にどっぷりはまった現代人の一つ特徴であるらしいが、それにしても自分はひどいもんなぁ、と。
いい言葉に出会えましたわ~。
ちなみに、この「過去を大事にする」ということは裏返せば「今を大切にして、いい過去をつくる」ということでもあるらしい。一回性、唯一性を生きる人間として、この一瞬一瞬の態度がすなわち重要。
大きな・立派と言われる仕事について中途半端なことや不正を行う人より、小さな・あるいはささやかな仕事を一生懸命こつこつとやっている人間の方が態度としては立派なんだとね。
結局は、この真面目に生きてみる、というところに戻ってくる!
Posted by ブクログ
本書は、前作に続き夏目漱石とウェーバーの思想の共通点をピックアップして、さらにフランクルやジェイムズの思想をもピックアップして、「震災以後、どう生きるか」ということが書き綴られている。
いくぶん世相を反映したものなので、原発であったりとか政治的な事柄が出てきます。そのため前作と比較すると浅さを感じてしまうのは仕方のないことなのだろうか。
Posted by ブクログ
「悩む力」の続編。夏目漱石とマックス・ウェーバーに心酔する著者が、その哲学的思想を存分に披露するのは前作と同様。ただ、東日本大震災のわりとすぐ後に書かれたものであり、著者の悩みがより一層深まっているようだ。
まず、とにかく「暗い」。思考が非常にダークである。そもそも哲学的思考が強い人は、楽天的・楽観的な思考を蔑み、深く思考することが善という考え方であり、血を吐くような苦しみで精神を病むほど悩み、そこから復活を遂げる「二度生まれ」という概念を非常に重視している。しかし、そこまで苦しんでまで人生の真理を追い求めるよりも、何も悩まずに楽に一生を終えることができればそれはそれで幸せなのではないだろうか。私とは根本的に考え方が違うので、「何事も小難しく考える人が書いた本」という風にしか見えない。
それでも、資本主義がもたらした「安定した収入、伴侶と家族、健康、老後のたくわえ」といった「幸福の概念」を否定し、人生の「態度」を追い求めることを理想とする考え方や、「過去」を大事にすることが大切で、「人生」はその蓄積なのだ、という考え方など、共感できる部分もたくさんあり、思考回路が違う人の考え方を学ぶことも視野を広げる上では大切だ、ということをあらためて考えさせられる。
Posted by ブクログ
東日本大震災後に見られる社会に対する問題について書かれている。主に、夏目漱石などの文学作品から読み取れる社会問題を切り口に、現代社会に対する警告を示している。
大筋に関しては、同感できる内容で考えさせられた。
ただ、原子力発電の問題については、疑問の残る内容だった。震災で起きた原子力発電の問題は、原子力発電そのものではないように思う。それを覆う建造物の耐久性や放射能漏れ対策が問題だと思う。
原子力発電は震災後であろうと、それを支える科学自体には、間違えがあったわけではない。それを使う人間や使う判断をした人間に問題がある。
という面で原子力発電問題の議論自体に問題ありだと思う。
ただ、著者の唱える幸福論に関しては一考の価値ありだと思うし、思考方法の参考となった。