あらすじ
ランキング独占、国民的大ヒット!
浅田次郎が贈る、新たな痛快時代小説。
「武士が命を懸くるは、戦場ばかりぞ」。流人・青山玄蕃と押送人・石川乙次郎は奥州街道の終点、三厩を目指し歩みを進める。道中行き会うは、父の仇を探す侍、無実の罪を被る少年、病を得て、故郷の水が飲みたいと願う女。旅路の果てで語られる、玄蕃の抱えた罪の真実。武士の鑑である男がなぜ、恥を晒してまで生き延びたのか?
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
読み始めは、正直玄蕃様を好きになれなかった。善人であるのは分かるけど、自分の中で「この人は破廉恥漢である」とレッテルがあったためだ。しかし、読み進めていくと本当は破廉恥漢で無く、「青山」という長年続いてきた武士の歴史を終わらせるために罪を被り、自ら贄となったと知った。私は胸の奥が痛く、レッテルを貼っていた自分を恥ずかしく思えた。
心に残ったフレーズは
「礼があり、それから法ができた」
好きなシーンは
①押送最終日、玄蕃が乙次郎の服を洗ってくれていた。
玄蕃「全く仕様のねえお与力様だの。ほれ、着替えろ。夜なべで洗うて火熨斗(ひのし)を当てておいたぞえ」
乙次郎「誰が。どうして、どうして」と袖を掴んだまま泣いているシーン
②観音様に願うシーン
玄蕃「何を願ったのだ」
乙次郎「あんたが無事に帰れますよう、南無観音様」
玄蕃「乙次郎。俺は勝手をしたか」
いや、と言いかけたが言葉にならなかった。僕は非を決したまま泣いた。父を送る子と同じように。
③別れのシーン
玄蕃「ここでよい。苦労であった。」
立ち塞がるようにして玄蕃は言った。取り乱す僕を見兼ねたに違いない。
乙「いいえ、玄蕃様ー」
初めて名を呼んだ。僕にとってこの人は、決して流人では無い。立ちこめる霧を腹いっぱいに吸い込んでから、僕は陣屋に向かって進み出した。
「新御番士青山玄蕃頭様、ただいまご着到にござる。くれぐれも御無礼なきよう、御案内下されよ」
僕は踵を返して歩き出した。すれ違う一瞬、玄蕃はにっかりとほほえんだ。
Posted by ブクログ
青山玄蕃に引き込まれて、本の終わりが近づくのが淋しかった。玄蕃の思いも大切にしたいけど、あやつに一矢報いて欲しい気持ちも収まらない。
巻末の杏さんの解説にもあったけど数年後には明治維新。対馬守に天罰が下り、乙次郎はきぬと子供達と仲良く暮らし、玄蕃も家族と再び一緒に暮らせるようになり…そんな物語の続きを読んでみたいな。
Posted by ブクログ
時代背景がやっぱり掴みきれずに上巻よりも読み進めるのに時間がかかってしまった。玄蕃が冤罪とわかってから(その少し前から)は玄蕃の人としての魅力がわかって面白くなった。
最後の方の会話のなかで「道場でも面の中で泣くやつは強くなるものさ」と乙次郎の幼少期を知らないはずの玄蕃が乙次郎に言うのがグッときた。
このあとの帰り道を1人で歩く乙次郎がどうやって返って、江戸でどんな風に生きるのか気になる。
Posted by ブクログ
ついに読み終えた
だんだんと流人のことが好きになり、どうか、と思うようになるが、しかし、それは叶わず、、
生き方を考えさせられる本に久しぶりに出会った
Posted by ブクログ
「武士とかクソだし、固執するのもクソだからとりあえず家つぶすわ」ってことでいいんだろうか?
私も乙次郎と同じで、もう少し他にやりようはなかったのか、と思うんだけど、300年ですっかり膠着してしまった世の中では無理か…となった。
玄蕃も気になるけど、乙次郎が江戸に帰ってどうするかが気になった。(というか玄蕃いなくてちゃんど江戸まで帰れるんだろうか…)
あともう少しで幕末だ!頑張れ!とナゾのエールを送りたくなったw
Posted by ブクログ
時代ものなので、読む前は勧善懲悪、痛快時代小説の類いかと思った。
しかし、なんとか知恵を働かせて、無実の子を救うのかという勝手な想像が見事に裏切られた時点で、そんな安易な内容でないことを思い知った。
時代小説の様相で、ヒトの懊悩を描いてくれていた。