あらすじ
【本書は2019年10月に刊行した単行本に、加筆修正して文庫化したものです】人生の最後に食べたいおやつは何ですか――若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、本当にしたかったことを考える。ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。食べて、生きて、この世から旅立つ。すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。2020年本屋大賞第2位。
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Posted by ブクログ
もうすぐ死んじゃうってわかってる人が主役の物語を読んだのは初めてかもしれない。死んじゃうのは悲しいはずなのに、とても温かい小説だった。
印象に残った文章がたくさんあった。
雫が「私、まだちゃんと生きている。」と生を実感していること、「私、もっと生きて、世界中のいろんな風景を見たかったなぁ」と本音を吐き出したところ、「きっと、私の人生は、生きることのままならなさを学ぶためにあったのかもしれない」と自分の短い人生の意味を悟ったところなど。
また、シマさんが「生かされているんだなぁ、って。だって、生まれるのも死ぬのも、自分では決められないもの。だから死ぬまでは生きるしかないんだよ」と言ったセリフとか…。
マドンナの、「生まれることと亡くなることは、ある意味では背中合わせ」で入口か出口であって、「私たちはぐるぐると姿を変えて、ただ回っているだけ」と言ったこと。
そう思ったら、死ぬことはそんなに怖く無い気がしたけど、やっぱり体が無くなってしまうのはなんだか寂しい気がした。
美しい表現もあった。
タヒチくんとカフェに行った時に、カウンターに並んでいる様々な種類の柑橘類を見て「黄色い色を見るたびに、心の夜空にまたたく星が増えていく」という表現はとても綺麗だなと思った。
それとマドンナが「おやつは心の栄養、人生へのご褒美」という言葉に激しく同意した(*´艸`)
心温まる良い本でした。
深い本でした
人は必ず死んでいきますが、家族に囲まれて迎える最後も良いと思いますが、この本に出てくるようなホスピスが実際にあれば、そんな死を迎えるのも良いですね。死んでいくのは怖いですが、こんな風に死んでいければ本当にいいなぁって本でした。
Posted by ブクログ
読み進めるにつれて周りの人が段々といなくなったり、主人公が弱っていく姿はものすごく切なくて悲しかったけど、優しい気持ちになれる物語だった。
一人一人に色々な思い出があって素敵だなぁ
Posted by ブクログ
終始静かな文章だった。モルヒネの摂取量がどんどん強くなっていくけれど、主人公や周りの気持ちやかける言葉はポジティブで明るい。正直にいうと怖さを感じたが、それは自分が健康であるが故の感情なんだと思う。
夢か現実かの境目がなくなっていく中、死ぬ直前にご馳走様でした、と呟いたのがとてもよかった。周りにいたスタッフも自分のやっていることは間違っていないと思えたと思う。
Posted by ブクログ
本書のメインテーマである死という話を受け止める時、読み手の死に対する価値観でこの本は大きく印象が変わってくるだろう。自分自身は死とは生と常に並行して存在するとても身近なものであり淡々と訪れる自然の摂理であり特別な物として捉えがちな現代の風潮に懐疑的と考えるので雫を巡るこの物語にはある種のメルヘンを強く感じた。タヒチ君と急に恋人みたくなるのは違和感を感じ、バナナの声が聞こえてきた時はちょっと笑ってしまった。でも.「誰もが、自分の蒔いた種を育て、刈り取って、それを収穫します」は確かに、と頷いた。自分が今死を宣告されたならどの様な気持ちで余命を過ごすのかという想像は今を生きる上で有益な想像だった。