あらすじ
既存事業を深め、新規事業を育てる「両利き」こそ、DX・コロナ時代を生き抜く知恵だ。
世界のイノベーション研究の最重要理論「両利きの経営」に関する初の体系的な解説書の増補改訂版。前版は2019年2月に刊行され、経営実務の世界でも大きな話題になった。本書は、2021年9月に刊行された原書第2版の翻訳である。豊富な事例を挙げて、成功の罠にはまった企業・リーダーと、変化に適応して成長できたそれとを対比させながら、イノベーションで既存事業を強化しつつ(深化)、従来とは異なるケイパビリティが求められる新規事業を開拓し(探索)、変化に適応する両利きの経営のコンセプトや実践のポイントを解説する。これは、多くの成熟企業にとって陥りがちな罠であり、イノベーション実現に必要な処方箋が、この理論の中にある。ネットフリックス、アマゾン、富士フイルム、AGCなど、企業事例を豊富に収録。日本企業への示唆も多い。改訂にあたっては、第4章(企業文化)と第7章(イノベーションの3つの規律)などが追加されている。入山章栄氏(学術的な観点から)、冨山和彦氏(実務家の観点から)による「解説」を収録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
内容の濃さとボリューム、翻訳された日本語という読みづらさで骨が折れた、、が勉強になった。
解説された方の講演を聴いたのをきっかけに読んだ本。
両利きの経営=探索と深化について、特に意識しないと進化だけになるのでとにかく価値を出すのは探索、総論的にはよく言われることだけど、それをかなり詳しく書いてある内容。
そして、成功させるためには企業内での団結、方向性を統一することが必要で、心に訴えかける抱負の浸透が重要というのは、「宗教的に理念の統一がされた組織は強い」と言われていることとの共通項を感じた。
終盤の具体的な成功事例は複雑で、経営幹部との関わりが希薄な立場からすると難しい内容だった。
そして最後に一番大切なのは心に働きかける動機付け、というのが問題解決に書いてあった本と同じだった。究極はマインドマネジメントが大事なんどな。
企業変革の支援にも参考になりそう。
-----
探索のアイデアでは、既存事業の深化の利益を活用して競合からリードできることが必要。
そのためには既存事業に携わる社員から資産を提供してもらうことへの社内理解が必須。トップからのバックアップが無くては社内から抗議・排除されてしまう。
探索ができるためには、既存の文化から程よく切り離される必要があり、子会社として分離する、地理的に離れた位置にする、など革新に専念できるような環境づくりも必要。
そして、分離されたチームであっても大きな組織としての団結を感じさせるために、共通の理念や統率者を立てるなど、組織体制には気を配る必要あり。
両極端な探索チームと深化チームをリードするには、1人のトップが2面性を持ってやり切るのか、
幹部チームとして2面性を成立させるのかのどちらか。2チームへの矛盾した態度を貫く。
チームで乗り越えるならば、2面性の対立に向き合い、腹落ちするまで議論を行う必要がある。
それぞれのチームにはそれぞれ異なる目標を管理する必要がある。探索にはマイルストーン、フィードフォワード。
Posted by ブクログ
上司の推薦で読む
両利きの経営が、企業の存続のために必須なことを理解。また、これは個人にも応用できるかなと思う。毎日の仕事を完璧にするのも大事だが、適度に諦めて帰宅後にもっと長期的に役立つことに時間を費すのも大事。衰退してしまう企業の多くは、両利きの内新しい領域への探索が上手くできないことが多いらしい。自分自身もそんな気がするので、意識的に多少のリスクを負いながら探索しよう
あと、大前提として戦略に合う企業文化を醸成することが必要とも書かれていた。文化はセンスが要る気がして難しそうやけど、普段から意識はしたいなぁ
良い文化があるところはやはり強いと思う
Posted by ブクログ
両利きの経営の増補改訂版。事例がアップデートされ、入山さんと冨山さんの解説も増補されている。
両利きの経営は人口に膾炙した感があるが、その実行の難しさはあまり理解されていないように思う。単に深化と探索の両方を追えばいいというわけではなく、容易に深化の道に陥ってしまう組織の慣性=経路依存性を跳ね除け、探索の道を探るのか。また、単にアイディアを出せばいいというものではなく、それをいかにスケールされるのか。そこに力点がある。
そのためのフレームとして、既存・新規事業×既存・新規顧客のマトリクス、深化と探索、アイディエーション、インキュベーション、スケーリングを提示する。
膨大な事例とともに著者たちがポイントとしているのは、探索型組織をどこにつくるのかとスケーリング。
探索型は既存組織のリソースを活用しながら、一方で既存組織の枠組みからは離れて動けるようにしてあげる必要がある。なので、スピンアウトするのではなく、社内で別組織とするといったことが強調される。また、スケーリングの難しさは多くの紙幅が費やされている。実際、スタートアップとの連携やデザイン思考、リーンスタートアップなどの方法論によって、アイディエーションやインキュベーションに取り組んでいる企業は数多くあるが、スケーリングのタイミングで大体失敗している。スケーリングにあたっては、既存ビジネスから新規事業へのリソースの移転が必要だけれど、それ自体、そもそも既存事業側からしたら面白くない。さらに新規事業は簡単には収益化せず、短期的には既存ビジネスに投資した方が有効にみえるからだ。
そのために、経営がちゃんとコミットし新規事業を支援すること。一方で撤退の基準も決めておくこと。このあたりの具体的な事例が特にIBMとシスコの事例を使って説明される。
また、冨山さんの解説でも触れているがアイディエーションも自分たちで画期的なアイデアを考えないといけないという思考パターンにはまることも多く、どちらかというとパクるつもりで取り組む必要があるなど、学びは多い。
それにしてもアメリカの本らしく分厚い。そこだけが玉にきず。最後に冨山さんがちゃっかりIGPIの宣伝をしているのが笑えた。
Posted by ブクログ
本書のエッセンスを一言にまとめると…探索と深化を両立させる「両利きの経営」がイノベーションを起こすには必要であり、トップのリーダーシップが重要、といったところか。某経営学の先生はクリステンセン氏のイノベーション理論を越えたと評している。確かにイノベーションのジレンマに対する処方箋ではあるのだろうけど、リーダーシップという属人性の強い要素に帰結しているので、誰にでもというわけにはいかないなというのが正直な感想。読み物としてはクリステンセン氏の本の方が面白いと思う。
Posted by ブクログ
久しぶりのザ・経営書。
イノベーションと言えば、クリステンセンさん世代(?)な私。有名な「イノベーションのジレンマ」を越えるには、クリステンセンさんの言うように新規事業担当を別組織にするだけじゃ既存の経営資源使えないじゃん?という問題意識から書かれている。
しかし、結局は別組織にして、上が仕組みや文化でしっかり繋いでねというように読める。
この手の経営書、以前は随分読み漁ったが、結局経営者次第じゃんと思えてしまって、しばらく遠ざかっていた。この本は訳が良いのか翻訳本にしては読みやすいし、事例も豊富で面白いんだが、やっぱり当時の感想を思い出した。学者さんが大企業を一括りにして語っている感が、マネジメント層ではない人間には刺さらないんだよなあ。。
Posted by ブクログ
両利きの経営とは、深化と探索の両方を追求する経営のこと。
社会や技術が素早く変化する現代においては、既存事業の成功が”時代を遅れ”を生み出す元凶になる場合もある。(サクセストラップ)
よく勉強をしている人ならば、「そんなことはわかっている」と思ったかもしれない。
この本がすごいのは、「両利きの経営が大切だ」とただ声高に叫ぶだけでなく、様々な企業の成功事例、失敗事例から、両利きの経営を目指したときにあらわれる課題や、その課題の乗り越え方まで踏み込んでいるところだ。
深化と探索は、反対方向の力が必要だ。(探索とは既存事業の焼き直しや、小さな改善イノベーションではなく、自社にとって未知の領域への拡大を指す)
方向性が違うので、既存事業のマネジメントやリーダーシップでは、適応できない。つまり同じ組織・風土の中で両立させるには常に矛盾が生じる。
本書では経営者(層)や中間管理職(ミドルマネジメント)による、リーダーシップの課題であると位置づけている。
つまり、両利きの経営の成否はリーダー次第ということだ。
両利きの経営を実行する際に必要なリーダーシップの5原則を以下に抜粋する。
1. 心に訴えかける戦略的抱負を示して、幹部チームを巻き込む
2. どこに探索と深化の緊張関係を持たせるか、明確に選定する
3. 幹部チーム間の対立を回避せずに、向き合う
4. 意図的にユニットごとに異なる基準を課して「一貫して矛盾する」リーダーシップ行動を実践する
5. 探索事業と深化事業に関する議論や意思決定の実践に時間を割く
第1,第5の原則は、普遍的なリーダーシップのありかただが、2,3,4に関しては複雑かつ高難度なリーダーシップである。
経験や明晰で論理的な思考力だけでなく、強い意志、精神力、高度な調整力などが求められると感じた。リーダーとしてはかなりのハードモードと言える。
この時代に経営の持続可能性を担保するには、訓練により身につけた強さとしなやかさを兼ね備えたリーダーシップが必要なのだろう。
チャレンジしてみたい気持ちはあるが、正直、うまくできる自信はない。
Posted by ブクログ
深化と探索の両方を行う際の難しいポイント、それに対して特にリーダーがどう対処するか、成功例失敗例について述べた本。
企業を継続して経営するためのリーダーシップの話が主だが、各社がどのような工夫をしているかが参考になった