両利きの経営の増補改訂版。事例がアップデートされ、入山さんと冨山さんの解説も増補されている。
両利きの経営は人口に膾炙した感があるが、その実行の難しさはあまり理解されていないように思う。単に深化と探索の両方を追えばいいというわけではなく、容易に深化の道に陥ってしまう組織の慣性=経路依存性を跳ね除け、
...続きを読む探索の道を探るのか。また、単にアイディアを出せばいいというものではなく、それをいかにスケールされるのか。そこに力点がある。
そのためのフレームとして、既存・新規事業×既存・新規顧客のマトリクス、深化と探索、アイディエーション、インキュベーション、スケーリングを提示する。
膨大な事例とともに著者たちがポイントとしているのは、探索型組織をどこにつくるのかとスケーリング。
探索型は既存組織のリソースを活用しながら、一方で既存組織の枠組みからは離れて動けるようにしてあげる必要がある。なので、スピンアウトするのではなく、社内で別組織とするといったことが強調される。また、スケーリングの難しさは多くの紙幅が費やされている。実際、スタートアップとの連携やデザイン思考、リーンスタートアップなどの方法論によって、アイディエーションやインキュベーションに取り組んでいる企業は数多くあるが、スケーリングのタイミングで大体失敗している。スケーリングにあたっては、既存ビジネスから新規事業へのリソースの移転が必要だけれど、それ自体、そもそも既存事業側からしたら面白くない。さらに新規事業は簡単には収益化せず、短期的には既存ビジネスに投資した方が有効にみえるからだ。
そのために、経営がちゃんとコミットし新規事業を支援すること。一方で撤退の基準も決めておくこと。このあたりの具体的な事例が特にIBMとシスコの事例を使って説明される。
また、冨山さんの解説でも触れているがアイディエーションも自分たちで画期的なアイデアを考えないといけないという思考パターンにはまることも多く、どちらかというとパクるつもりで取り組む必要があるなど、学びは多い。
それにしてもアメリカの本らしく分厚い。そこだけが玉にきず。最後に冨山さんがちゃっかりIGPIの宣伝をしているのが笑えた。