【感想・ネタバレ】すべての月、すべての年 ――ルシア・ベルリン作品集のレビュー

あらすじ

NYタイムズ紙が選ぶ「21世紀の100冊」
作品集累計15万部突破!

一篇読むたびに本を置いて小さくうなり、深呼吸せずにいられない。
このように書く作家はほかにはいないと、何度でも思う。
――訳者あとがきより


中学でスペイン語を教える新米女性教師が、
聡明な不良少年のティムにとことん振り回される(「エル・ティム」)。
夫を失った傷を癒やすために訪れたメキシコの小さな漁村で、
女がダイビングを通じて新たな自分と出会う(「すべての月、すべての年」)。

世界中で驚きと喜びをもって迎えられた、至高の短篇集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

やはり圧倒的な描写力で、美しいことも、醜いことも色鮮やかに描かれていて、惹き込まれる。
表題作も海で泳ぐ気持ちよさが、海中の美しさが、漁師宿のゴチャゴチャした中にも温かみが、肉体的な感覚を伴って感じられる。
体験しないとわからないこのような感覚が、これほどまでに鮮やかに描写できるこの作家の凄さを改めて感じた。
B.Fと私は、最晩年の作品とのこと。
美しく無いものをくっきりと描いているけれど、それでいて嫌な感じはしないのは、才能なのだと思う。
そしていつも感じるのは、どんなロマンスの中でも人は孤独であること。自立した女性ならではの感覚だと思う。

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2025年09月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

誰もがここで書かれている彼女のことを好きになってしまったり、そうでなくても嫌いにはなれないんじゃないかと思った。賢くて繊細で、情熱と愛があり時に弱く、悲しみと喜びに満ちた人生を送る女性。彼女の言動には優しいぬくもりを感じるし、言外に親密な空気が漂うところが好きだ。
「カルメン」や「ミヒート」で描かれている、悲惨な状況に陥ってしまった女性や子どもの話がとてもつらかった。あまりにも克明でハラハラしながら読むことになったが、決して同情的には書かれておらず、作者の冷静な目線をいつも感じた。
姉妹のバカンスを描いた「哀しみ」が特に心に残った。少しの嘘だって、すべて妹への愛にほかならない。誰の視点かによって物事の見え方がまったく変わるところが良い。

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2024年12月16日

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