【感想・ネタバレ】日本沈没(下)のレビュー

あらすじ

とにかくその日が来る前に。政府は日本人全員を海外へ移住させるべく、極秘裏に世界各国との交渉に入った。 田所博士は週刊誌で「日本列島は沈没する」と発言して、物議をかもしていた。小野寺は極秘プロジェクトからはずれて、恋人・玲子とともにスイスに旅立とうとするが、運悪く玲子は、ついに始まった富士山の大噴火に巻き込まれ行方不明となってしまう。 そして、日本沈没のその日は予想外に早くやってきた。死にゆく竜のように日本列島は最後の叫びをあげていた。 日本人は最悪の危機の中で、生き残ることができるのか。未来をも予見していた問題作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

下巻になり、沈没が確定的になった後の、各登場人物の思惑や動き出した関係が非常に面白かった。
田所博士のセンセーショナルな、しかし、計算された行動や、玲子と再開しか小野寺の行動等、ハラハラする展開がたくさんあり、一気に読み進んだ。
日本が沈んでからの日本人が、それぞれの土地でどのように生活を営むのかの続きも気になるとこだった(むしろそっちの方が気になる)。元々続編があるのが前提のようなので、第2部の方も読んでみようと思う。

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2018年11月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『日本沈没 下』は、上巻で提示された「予兆」が、ついに不可逆の現実となってゆく過程を描き切る壮大な終章である。地殻は裂け、都市は崩壊し、そして人々は祖国そのものを喪失する。小松左京の筆は、災厄を単なる悲劇として描くのではなく、人類史における試練として冷徹に刻み込む。

この下巻において最も重く響くのは、「国を失った民は何者として生きるのか」という根源的な問いである。日本人が民族として存続し得るのか、それとも世界に散じ、同化し、やがて消えていくのか。その切実な問いは、戦後の日本人が無意識に抱き続けてきた不安をあらわにする。作品の終盤で描かれる国土消滅の瞬間は、単なる地理的喪失ではなく、歴史と文化の断絶という形而上的な衝撃を伴う。

同時に、本作は人間存在の強靱さをも照らし出す。絶望の中で生き延びることを選び、海外に散りゆく人々の姿は、悲嘆と同時に「未来を託す意思」の証でもある。そこには小松左京特有の文明的視座が宿っている。彼は単に「日本沈没」というカタストロフを描いたのではなく、人類社会の脆さと可能性を同時に描き出したのである。

『日本沈没 下』は、日本SF文学の到達点であると同時に、災厄の時代において我々がどう生きるべきかを問う普遍的な寓話である。読み終えた後、胸に去来するのは破滅の恐怖ではなく、人間がなお未来を希求する力への畏敬であった。小松左京の壮大な構想は、半世紀を経た今なお重い問いを我々の前に突きつけ続けている。

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2024年09月27日

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