横手慎二のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
スターリンの伝記は初めて読みました。日本人なので、満州侵攻やシベリア抑留を行った彼のことをよくは思ってませんが、第二次世界大戦後の世界秩序を作った人物として知っておきたかったのです。
全体として、批判ばかりでも賛同ばかりでもなくバランスが良かったと素人ながらに思いました。
印象に残っている箇所を書いていくと、スターリンの政策、特に第二次世界大戦前の急進的な工業政策が人によって評価の分かれる点で、面白く感じました。
党内の批判や妻の自殺がありながらも、五カ年計画に執着して国内の産業が軽工業から重工業へ成長していくのを待たずに急進的に産業を発展させる一方、穀物の徴発を行い、ウクライナで400万から500万人が亡くなる人工飢餓を起こしました。一見すると失敗かと思いますが、彼が作った重工業の基盤がなければ、独ソ戦でのソ連の勝利はなかったと考えると、スターリンの功績は大きいようにも感じられます。スターリン無しに第二次世界大戦でのソ連の勝利があったのかどうか。もちろん重工業の基盤を築いた功績はありますが、スターリンは開戦前にドイツ軍が国境に集まっており攻撃も近いという情報を得ていたのにも関わらず、これを無視して結果的にソ連軍が甚大な被害を被ったのは、スターリンの大きなミスでした。スターリンを賛美する側と批判する側の両方の視点を織り交ぜて解説していたのが、わかりやすく、どちらか一方に偏らず理解することができました。
スターリン個人の人物像として面白いと思ったのは、ソ連がドイツによって奇襲された時にスターリンはひどく狼狽して、開戦後最初にやったことが、ドイツ大使館に確認を取るという行動だったことです。これは意外でした。スターリンという名の如く、強靭な精神力を持っているのかと思いきや、そういう一面も持っているのかと。まあ、戦後に彼の精神力が発揮されることになるのですが。
また、第二次世界大戦中の彼に関することで、参謀の意見をよく聞いたというのも書いてありました。これはソ連の宿敵ドイツのヒトラーとは大違いだと思いました。ヒトラーは将官の意見を無視して無謀な攻勢をかけさせたりしましたが、スターリンは最初こそ失敗したけれど、少しずつ部下の意見を聞き作戦に生かしたという点で、ヒトラーよりも指導者としての素質があったと思いました。
晩年に不可解な外交判断をしたり、周囲の者を過剰に疑ったりと統治能力を失って、死後に政策が方針転換されてしまったのは、彼の評価を落としましたが、トータルで見れば、ヒトラーやチャーチル、ルーズベルトにトルーマンと互角に渡り合って、才能は確かでした。
ソ連について考えることはあまり多くないけれど、こういう人物がいたというのは面白い事実だと思いました。 -
Posted by ブクログ
日露戦争終結(戦勝)100周年の年に出た本。知人(著者の授業を受けたそう)の勧めで読む。
その当時、両国の当事者(戦争指揮者)が、知り得た情報を元に、どう状況を読み、何を得ようとして、どう動いたか、そのすれ違いのさまを丹念に追った作品。
敵のある作戦が偶然にもうまく行った場合に、相手を過大評価したり、ある作戦が上手くいきつつあるのに、完遂前に放棄したり、と、色んなことが起こり得る。最後の方での考察は、後付け史観ではなく、俯瞰的に述べる感じで、全ての人は歴史の住人である感じがしてよい。
日比谷焼き打ち事件(折角講和に持ち込めたのに賠償金が取れなくて一般民衆が暴徒と化した事件)は、民主主義の限界を感じる。
日清戦争で「戦争は儲かる」という誤った認識が世間に根付き、日露戦争で、「戦争は儲からないけど、戦争が起こると新聞社は儲かる」という世俗が染み付き、社会が抑止力を失っていったのだろう。
神社に行けば、多くの場所で、戦没者を弔う石碑がある。その地区から出征して亡くなった人たちの名前が刻まれている。大東亜戦争と並び、日露戦争は多い。そんな人たちの礎の上に生きているわけですね。 -
Posted by ブクログ
第二次世界大戦〜独ソ戦からの流れでスターリン。スターリンの本はあまり良いのが見つからない。何が決定版なんだろう。この本は新書だし、一通り流れが分かるので、そこは良い。ただどうも違う。スターリンはもっと残虐なはず。マオを読んだ時のあのもういいからと言う残虐さのリピートがない。すごくあっさりしている。新書だからかな。後は筆者が本当はそんなに悪い奴では無かったのではないか、と言う見方もロシア内にはあると言うスタンスで買いているからもうある。ただスターリンにしてもソ連崩壊後色々な資料が出てきたりしているし、終戦の近い所で書かれたものよりも新しい書を読むべきなのかもしれない。