工藤隆のレビュー一覧
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古代史について。
日本最古の書物のひとつである古事記に、律令国家としての正統性だけでなく、無文字時代の縄文弥生時代から連なる呪術的等の文化の影響力を重点においている本。
古事記について詳しくないので、分からない点も多いが、古事記に書かれている不可解な記述等も、縄文弥生時期(著者は「古代の古代」と呼んでいる)の文化の影響力のせいという点は、非常にロマンを感じた。
中国少数民族や沖縄の歌の文化を古代の古代の源流のひとつと考えている。
結は非常に共感できる内容だった。古代の古代の文化と国家段階に求められるリアリズムは反する方向性のものだが、日本は古来その矛盾した状況が連なってきた。明治の近代化や大 -
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2012年は古事記誕生から1300周年。だが古事記の成立については懐疑的な見方も多い。
本書の構成は以下の通り、、、
・まず、古事記の「序」が本当に712年に書かれたものかを検討(点としての誕生)
・次に、古事記の背後にある古い無文字時代の要素を探る方法論を解説(線としての誕生)
・さらに、アメノイワヤト神話を題材に、実際にその方法論を適用して考察
・最後に、現代日本にとっての古事記についてひとくさり
現存する古事記の最古の写本は1371,2年筆写の真福寺本。オリジナルから実に600年以上後の写本である。また、すぐ後の『日本書紀』・『続日本紀』に古事記についての記述や引用が見られない。よって -
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古事記研究に、アジアの少数民族の神話・歌垣との比較により、さらに原始的な古代とのつながりを探ろうとする意欲的な議論。
古事記は既に国家化・文字文化が芽生えていた成立当時の日本の姿を反映して、口伝であった原始的な神話の姿を失いかけているが、そこにはまだ原始の形跡が残されているとする。そうした原始的な神話、一種のアニミズムを中央集権国家の精神的基盤にそのまま取り込めたのがヤマト民族の特徴であり、しかもそれを現代まで引きずっているのは珍しいと(なるほど皇位継承問題で父系がどうとかの議論になる由来もそのあたり?)。中国と海で隔てられていたためだ。そのため一神教的文化にはない柔軟性を長所として持つわけ -
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ネタバレ[ 内容 ]
古事記は、八世紀に編纂された日本最古の書物のひとつである。
しかし古事記は突然出現したのではない。
縄文・弥生期から連綿と続く、無文字時代の神話がその源にあった。
著者は、無文字文化の「生きている神話」「生きている歌垣」が今なお残る中国長江流域の少数民族文化を調査し、神話の成立過程のモデルを大胆に構築。
イザナミやヤマトタケルの死、スサノオ伝承、黄泉の国神話、糞尿譚などを古事記の深層から読み直す。
[ 目次 ]
序論 古事記研究の現在(古事記の四つの顔;生きている神話;古事記神話の古層・新層・中間層;昔話と原型的な神話の違い;リアリティーある「古代」像を目指して)
第1部 古事