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今からちょうど千三百年前、『古事記』が誕生した。令の制定や平城京遷都など、古代日本の急速な近代化が進められるなかで、なぜこのような「時代に遅れた書」が作られたのか。縄文・弥生時代に遡る神話が、国家成立期にまで生き残ったのはなぜか。「記序」贋作説を検証しながら分析する。さらに、アメノイワヤト神話を例に、歌垣、酔っぱらい体質、銅鏡と鉄鏡の違いなど、多様な視点から新旧の層に区分けして解読する。
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Posted by ブクログ
2012年は古事記誕生から1300周年。だが古事記の成立については懐疑的な見方も多い。 本書の構成は以下の通り、、、 ・まず、古事記の「序」が本当に712年に書かれたものかを検討(点としての誕生) ・次に、古事記の背後にある古い無文字時代の要素を探る方法論を解説(線としての誕生) ・さらに、アメノイ...続きを読むワヤト神話を題材に、実際にその方法論を適用して考察 ・最後に、現代日本にとっての古事記についてひとくさり 現存する古事記の最古の写本は1371,2年筆写の真福寺本。オリジナルから実に600年以上後の写本である。また、すぐ後の『日本書紀』・『続日本紀』に古事記についての記述や引用が見られない。よって、本当はもっと後世に成立したのではないかと言う古事記偽書説が唱えられることになる。この偽書説は、「序」と本文をあわせた古事記全体に対するものと、「序」に着目してそれだけが偽書だとするものがある。 偽書説に対する著者の見立ては、肯定も否定も確証はないと断った上で、仮名遣いなどから判断して本文が712年頃か少なくとも遠く離れていない時期に成立したことは間違いないだろうと。「序」についても、偽書説が指摘するような不自然さ(なぜ日本書紀と同時期に似たような歴史書を編纂するのか)は説明可能(日本書紀:公的、合理的な歴史書。古事記:私的、古いアニミズムを称揚する目的)とする。 線としての誕生についての方法論は、前著と同様。あきらめないで中国奥地の「原型生存型文化」にヒントを求めましょうというもの。また「話型」「話素」の分析だけでなく、歌われるのか語られるのかといった「表現態」。どのような場で歌い/語られるのかといった「社会態」にも注目しましょうと。観光客や調査に来た学者相手に語って聞かせるのと、ムラの行事や歌垣で歌うのとでは全然原型のとどめ具合が違うということ。 →面白いのだが何か白黒つけるような確証は普通得られないのが大変なところだろう。白川静的? サンプルとして掘り下げるアメノイワヤト神話からは、皇室儀礼(神祇令)の鎮魂(たまふり、魂を揺さぶって活を入れるイメージ)、新嘗、大嘗祭などのルーツが大変に古い層にあること、酔って吐くのが神懸りのしるしとされていたであろうこと、アマテラスが岩屋に隠れるのに卑弥呼の死のイメージが重なること、長江流域少数民族の神話との共通点が見出せること、などが分かると。 また、ここでアマテラスを引っ張り出す準備をするくだりの長ーい一文からは、これがもともと語られるか歌われるかしていたもの、文字文化以前の特徴を残していることが読み取れる。
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古事記誕生 「日本像」の源流を探る
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工藤隆
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