大久保喬樹のレビュー一覧

  • ナナメ読み日本文化論 名著25冊で読み解く日本人のアイデンティティ

    Posted by ブクログ

    ナナメ読み日本文化論 名著25冊で読み解く日本人のアイデンティティ

    日本文化や日本人のアイデンティティに関心がある方にとって、魅力的な一冊です。名著24冊
    100字で要約し、易しく解説しているため、長い作品を読むのが苦手な人でも気軽に日本文化の深さに触れることができます。日本人として最低知っておくべきことなのですが、これを理解するだけでも大変。一般教養として知るべき。反省反省。

    0
    2026年09月19日
  • 新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    茶の湯やそれを思想的に支える道教と禅の関係についても軽く読むには最適なのだが、芸術とは何かという彼の思想は時代を先取る素晴らしいものだった。その点においても、今の時代の殆どの人が彼に追いついていない。何にでも芸術という言葉が使われる時代だからこそ、芸術のことを根本的に問い直すことが必要で、この本はそれについて考えるいい機会を提供してくれる。
    傑作はわたしたち自身であり、わたしたち自身は傑作である ― これはこの書籍のなかの言葉だが、この考えは裏返せば人間の能力の限界を見つめつつ、その限界を超えることをわたしたち鑑賞者に要求する。それによってこそ作品は芸術作品となり最終的には傑作となるのだが、また逆に傑作こそが私たちの限界を大きく広げてくれる。この両者の高め合いこそが芸術の素晴らしい機能の一つだ。
    今日のエンターテイメント作品は芸術作品とは程遠いものにもかかわらず自らを芸術と呼ぶ。エンターテイメントは私たち自身を拡張してくれず、現在の私たちの理解可能な部分に、強烈に、或いは甘い声で働きかけてくるに過ぎない。同時に私たちはこれらのエンターテイメント作品をティッシュペーパーのように使い捨てるだけなのだ。
    作品や芸術作品との関係の結び方を今一度再考し新しく真摯な関係へと変えていくことが必要なのだろう。
    この本は、今なおその意味や役割が棚上げされたまま細分化されて議論が続けられている芸術というものについて、もう一度素朴に問い直すために非常に有用だ。

    なお、付録の彼の生涯についての詳細な文章も面白い。
    能力の低い奴が天心を妬んで政治的に天心を引きずり下ろすなどということは、今の日本でもありそうな話。日本の芸術がクソみたいなものになったのは、そういうことの積み重ねなんだろうなと感じた。

    0
    2026年01月02日
  • 新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    茶室や純和室の好きな感じが哲学化、言語化された感動を覚えた。平易な文に解説もついて読みやすい。、おまけに、東洋の理想、まで抜粋されていて、大東亜共栄圏に流用されて悲惨な結果になったことまで鑑みるに、偉大な思想が偉大な結果を産まない歴史に思いを馳せる。ソフィア文庫、よいなー。

    —-

    ・老荘思想、自然との一体化、簡素化、不完全さ

    ・若い時は自分好みのものを褒めたが、目が肥えてくると、名人が苦労して描いたものを理解して好むようになる

    ・近松門左衛門

    ・同時代の芸術こそ、真に私たちの芸術であり、私たち自身の反映

    ・心が心に働きかける

    0
    2025年11月29日
  • 新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    日本文化にこそ暇を活かす知恵があるのではないかという好奇心で、有名な本書を手に取ることに。岡倉天心の美的表現の数々に圧倒される。これはおそらく新訳をされた大久保さんもすごい。「茶道の本質は不完全ということの崇拝。不可能を宿命とする人生のただ中にあってそれでもなにかしら可能なものを成し遂げようとする心優しい試みが茶道」「利休が求めたのは単なる清潔ではなく美しく自然らしいということ」引用したくなる一節のオンパレード。いやはや奥深き茶道の世界!

    0
    2025年11月24日
  • 現代語縮訳 特命全権大使 米欧回覧実記

    匿名

    ネタバレ 購入済み

    とてもわかりやすい

    まだ途中までしか読んでませんが、文章を彩る日本語の多様さに驚かされています。当時の日本の実情をよく理解できるのみならず、言葉遣いや創作などでも本作は非常に役に立つでしょう。

    #深い

    0
    2024年02月06日
  • 新訳 武士道 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    武士道の定義。武者がその任務において、または日々の暮らしにおいても従うべき規範。
    無形のものであるから一層強く武士の行動を拘束し、心に刻み込まれた。
    戦いにフェアプレイ。やトム・ブラウンの決して小さな子をいじめもしなければ、大きな子に背を向けて逃げ出すこともしなかった。
    武士道が過去の日本の一階級の文化でありながら、現代人にも理解、共感できるような精神的内容のものであること。また西洋社会においても騎士道という共通する性格の文化があったこと。つまり武士道の本質は決して歴史的、民族的に限定された特殊なものではなく、どんな時代、どんな民族にも通用するような普遍的なものであると言う新渡戸の基本的な考え方がある。
    武士道の思想的根拠は儒学であることを述べているが、さかのぼって仏教や神道の影響がある。
    義とは武士がことにあたってどう行動すべきか、その判断の根拠となる考え方を言う。
    一方、義から派生した義理には義本来の倫理性が形式化されることにより、歪められ、むしろ正義を損なう詭弁や偽善に堕落する危険があることが強調されている。
    武士にとって勇気は真っ先に要求される資質であるが、その前提には義があること。義がなければどんなに勇猛な行動も乱暴狼藉と変わらない。
    慈悲は武士道を支える最高の精神的、人格的徳。純粋に自発的な心の動きに従ってのものである。新渡戸はこの慈悲の心こそ、勇や義以上に根本的なものであるとした。このことは武力からスタートした武士道を人格による感化を基本とする徳治の文化に昇華した。
    礼は他者の思いやり。
    忠誠は武家社会を支える根幹ともいうべき倫理。主君に対する絶対的服従、献身を意味する。事例として挙げられた菅原道真公の寺子屋の話は主従関係を知らないとなかなか理解出来ないと感じた。
    自制。心を平静に保つこと。
    日本人の曖昧な微笑みはこの自制の表れとして新渡戸は説明しようとしている。
    自死と仇討ちの章は今回きちんと読み進められなかった。私にとってはつらいものであった。
    刀。抜かざる刀こそ究極の伝家の宝刀。
    女性。武士道に女性に関する章があるとは知らなかった。女性も武士同様の心得を求められていること。ただ当時は性差を感じる記述があり、役割分担とされている。これは区別ではない。ことを力説している。
    武士道の影響。男性ばかりでなく女性にも。そして平民階級にも受け入れられ、影響を及ぼした国民文化であることを説いている。

    著者新渡戸自身は国際結婚をし、女性の教育にも力を入れておられたことを知ると、武士道に女性のことが書かれていることもよく分かる。

    以前から読みたかった著作。解説文が章ごとに書かれており、読み進めやすい。今後も時々読みたい。

    0
    2022年07月10日
  • 九鬼周造「いきの構造」 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「和の心」というテーマで展示を作成するにあたり、その核となる書籍として選んでみました。
    「粋だねえ」などと言われ、ある種の誉め言葉として使われる「いき」という概念は、はたしてどのようなモノであるのか、読み終えて、ひとつの定義を知ることができたように思います。
    原著を現代語で読みやすく書き改めてあるので、本論もストレスなく読むことができましたし、著者の主張もわかりやすかったです。

    実体験として、また実生活の中で自分が「いき」に生きることはなかなかハードルが高いのですが、だからこそ(そして「いき」がどのようなものであるかわかったからこそ)「いき」である人やその仕草にあこがれ、尊いものだと認識できるのだとあらためて思います。
    「いき」の核となる「媚態」は出せずとも、「意気地」くらいはしっかりともって生きてゆきたいものです。


    p.31
    「いき」な意識を構成する三要素として、媚態、意気地、諦めをあげ、……「いき」の本質とは、つまるところ、媚態すなわち男女がたがいに相手をひきつけようとする駆け引きに発する美意識にほかならないと九鬼は意味づけます。
    p.34~
    媚態とは、恋愛において、自分と異性の間に、どう転ぶかわからないような不安定な関係を持ち込むことである。「いき」のうちにみられる「なまめかしさ」「つやっぽさ」「色気」などは、すべて、この自他の不安定な関係から生まれる緊張のあらわれにほかならない。……この不安定な関係こそは媚態の根本的要素であり、異性同士が完全に相思相愛の仲となって、不安定な緊張感がなくなってしまえば、媚態はおのずと消滅してしまうことになる。……それ故に、自他の緊張した関係を持続させること、すなわち、どうなるかわかならいという不安定さを維持することが媚態の本領であり、恋の醍醐味なのである。
    p.38
    「いき」の第二の要素は「意気」すなわち「意気地」である。……「いき」は相手の気をひこうとする媚態でありながらも、なお異性に対し突き放してみせる強さをも兼ね備えた意識なのである。
    p.41
    「いき」の三番めの要素は、「諦め」である。運命というものを心得て執着心を捨て、無関心に徹するありかたである。「いき」であるためには垢抜けていなければならない。あっさり、すっきり、スマートでなければならない。……「いき」のうちには運命に対する「諦め」と、その「諦め」に基づく淡々とした境地とが含まれている……。
    p.45
    以上をまとめれば、「いき」の構造は「媚態」と「意気地」と「諦め」の三要素から成り立っているのである。……「媚態」の本質は、自分と相手の間柄がどうなるかわからないという不安定性にあるが、第二の要素である「意気地」は、相手の言いなりにならず、自己の独立を誇り高く堅持しようとする理想主義に支えられることによって、こうした「媚態」の不安定性に一層の緊張と持久力をもたらすのである。……第三の要素である「諦め」も、また、決して媚態と相容れないものではない。媚態は、その目的である恋愛がぎりぎりのところで成就しないところに真骨頂があるのであり、そうであるなら、「諦め」こそは、媚態と相容れないどころか、逆に、媚態の本質を示しているといえるのである。

    0
    2018年12月11日
  • 九鬼周造「いきの構造」 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    いき という抽象的で個人的な感覚をここまで概念化させることができる九鬼の手腕に脱帽。感覚的なものを言語化してくれると理解が深まったような気になる。そして、そのことについてもっと知りたくなる。

    いきを本当に理解するためには、人がどう感じているかという、いきな行動の奥に潜む意識を感じようとしなければならない…という旨のくだりはとても心に残った。

    相手の全てを知ることは出来ないと心得た上で、相手を慮る姿勢に、優しさを感じる。


    本書最後の「九鬼の生涯と思想」も内容理解の助けとなった。良書。

    0
    2018年07月25日
  • 現代語縮訳 特命全権大使 米欧回覧実記

    Posted by ブクログ

    「縮訳」ということで1冊にコンパクトにまとまっている。
    何しろ岩波文庫でも5冊で1セットだから、
    全巻読むには大変な時間を要するが、
    素人がエッセンスを知るにはこの1冊でも充分。
    詳しい感想は後日書きます。

    0
    2018年04月15日
  • 新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    ・茶を飲むという日常の行為を、芸術の域にまで高めた茶道。
     ほとんど何も置かれていないままの茶室。室町時代末期~安土桃山時代、千利休によって完成されました。

     明治の思想家、岡倉天心は、茶室と人との関わり、宗教、そして茶室の一輪の花にも注目しています。


     「花を摘むのも手当たり次第ではなくて、心に思い描く芸術的造形にしたがって、注意深く一枝一茎(いっしいっけい)を選ぶものであり、
     もし、必要以上に切ってしまうようなことがあれば、恥じ入るほかはない。
     西洋では、花の展示が、富の見せびらかしの一部であり、つかの間の遊びであるように思われる。

     これら多くの花は、騒ぎが終わった後、どこにいく運命なのか
     色あせた花が、ごみの山の上に、無情にも散り出されている眺めほど、痛ましいものはない……」


     「茶人は、花を選びさえすれば、責任は果たしたとして、あとは花が、花自身の物語を語るのにまかせる。

     暑い、夏の日。
     昼の茶会に呼ばれていってみると、ほの暗く、涼しげにととのえられた床の間に、一輪の百合の花が、釣り花瓶に生けられているのに、出会うかもしれない。
     露に濡れたその花の様子に、人生のおろかしさに微笑んでいるかのようだ」


           (岡倉天心)





     茶や、花に通じる人々は、無闇に花を摘み取ることはありません。 花を人と同等に扱い、花に対する尊敬の念をもって、接しています。 しかし、西洋などからくる近代化の波によって、花の扱いが大きく異なっていると、天心は述べています。
     自然をできるだけそのままに、『やはり野に置け』というのが、花に対するもっとも叡智な人の態度なのだと述べているわけです。

     これまでの近代の西洋の建築は、かちっとしていて、人間の作った直線的で、シンメトリーな構図を最優先させてきました。しかし、当時の数奇屋(茶室)などは、わざと柱の角に皮を残したり、曲げたりして、周囲の自然との調和を目指しています。
     自然災害の多い日本では、感覚的に、自然には勝てないということを、分かっていて、逆にそれをうまく、取り込んで先取りしなければ生きていけませんでした。そして、そういったことが、日本の文化を作っていったのだと思いました。


     現代では、エコロジーの考え方によって、より自然に寄り添っていくようなあり方が、見直されつつあります。

     明治維新の直前に生まれた天心は、近代化が始まる中に生きてきた人なのですが、いずれこの近代化の動きは、行き詰まりに達することを見通していました。
     そしてその時にこそ、東洋の伝統文明、また日本の伝統文化の考え方というのが、再び意味を持つことになるのだと予見しています。

     天心が伝えようとしていたのは、茶道の芸術性と、茶人の自然と共に生きていく、という源流そのものにもあるのだと思いました。

     

    0
    2015年02月05日
  • 九鬼周造「いきの構造」 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    「いき」は日本の独自文化で、男女のつかず離れずの媚態における「逢瀬の美学」である

    人生の50冊 エンジョイライフ ベスト3位

    九鬼周造は2013年における大発見でした。
    なにしろ日本の遊里における男女の媚態を分析して、
    これをフランスで哲学書として成立させるのが、九鬼魔術(マジック)。
    白眉は、欧米の類似の恋愛観と比較しながらも、吉原における男女の機微に日本独特の文化的背景を展開するロジックにある。


    「いき」は武士道の理想主義である「意気地」と
    仏教の脱俗世である「諦観」と密接な内的関係がある。
    さらに、関連諸概念として、上品と下品、派手と地味、意気と野暮、渋味と甘味を挙げ、それらでロジカルに概念正方形を形成し、
    その中に「いき」を位置づける。
     
    くぅう、これは格好いい!江戸の遊び人、ここに極まり!
    人生の目標のひとつが、この大人の遊び感覚、余裕なのです。

    いざ、遊びをせんとや生まれけん

    0
    2014年01月01日
  • 九鬼周造「いきの構造」 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    クキさんの書いたイキに関するウィキ。とか、つまんない事言いません。

    江戸文化のなかで生まれた「粋」を構造的に分解していく本書。 武士道精神に則る「意気地」が体験を生み、仏教観がもたらす「諦観」が執着を断つ。その狭間にあって、波を乗りこなすサマこそ「粋」という感覚の根幹、というのは大変腹に落ちました。

    本来であれば、粋を言葉で語るという行為そのものが野暮ってなもんですが、あえて才人が挑戦した本書は、日本人が持つ特有の精神世界への扉を打ち立てたのではないかと思います。

    0
    2013年11月14日
  • 新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    古都 金沢の、旅の道中で読み進めた事もあり、
    とても味わい深く受け止められた。

    日本を追われながらも、誰よりも強く、
    日本文化の素晴らしさとイデオロギーを
    欧米諸国に対して突きつける天心の
    短くも含蓄ある言葉の数々。

    “謙譲の心で芸術を鑑賞する。”
    鑑賞者の心得を説いた、「芸術鑑賞」の章が印象深い。

    0
    2013年07月01日
  • 日本文化論の系譜 『武士道』から『「甘え」の構造』まで

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    表題がよくないかもしれない。
    日本文化論の系譜ではなく、一部だ。
    日本文化を他の文化と比較することが、いつから始まったかを述べていないので、系譜は語れない。
    作品の羅列だが、自分にとっては、一連の作品を見直す機会になったのでありがたかった。
    特に、2-3の作品は未読だったので、この際、読ませていただいた。
    作品名:
    日本風景論
    武士道
    茶の本
    遠野物語、山の人生
    古代研究
    雑器の美、美の法門
    風土
    「いき」の構造
    陰翳礼賛
    美しい日本の私
    日本文化私観、堕落論
    縄文土器ー民族の生命力
    日本の思想
    「甘え」の構造

    0
    2012年03月22日
  • 新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    偶然につけたNHKのEテレで梅原猛さんのインタビュー放送をやっていた。震災にまつわる話が中心だったが、話の中で度々出ていた言葉が「草木国土悉皆成仏」(涅槃経の言葉から最澄が云い始めた言葉と伝えられるが、真偽のほどは不明)。草木や国土のように心をもたないものでもことごとく仏性があり、仏となりうるのだという意味。この言葉は仏教からの言葉ではあるものの、梅原さん曰く、要するに草木や風物も命があり、自然のなかで生きることにおいて人間と等しく、人間は自然の上に立つものではなく、人間は自然と共生すべきことに帰結するのだと。そこには仏教の思想を越えた自然観、宇宙観があるのだとも。
      このような話を聞いていると、先般読んだ岡倉天心の「茶の本」(大久保喬樹訳)もまさに同じ論旨であることに思いが至る。この本の主題は、茶道に限らず日本人の美意識はどこにあるのかという日本文化論の基本。西欧文化は人間中心であり、自然よりも人間が上に立つという思想。対して日本では人間と自然との共生が基本にあるというのだ。西欧文化がいかに誤っているかを指摘しながら、未来の自然破壊への懸念にまで及んでいるところなどは実に先見性があると云っていいだろう。岡倉天心が明治維新前に生まれた人物であり、この本は日本における文明の黎明期に書かれたものだから凄い。
      後になって原子力のような自然を超越するエネルギーが開発されるとは岡倉天心とて夢にも想像しなかったろうが、もし生きていたらさぞかし驚愕したに違いない。自然は人間が征服すべきものとするのか、自然との共存の中で人間は生きるとするのか、今この時代はまさにそれが問われているわけで、原発に対する賛否の問題もまさにその点にあるのだと思える。
      最初にヨーロッパ・アメリカが、そして日本が続いた西欧文化の波。今またBrics諸国、とりわけ第二位の経済大国になった中国、さらには続く国々が人間の我欲に従って自然に立ち向かおうとしている。せめて日本は日本人が培ってきた精神文化の基本に立ち返るべきだと思うのだが、地球規模から見るとこれも焼け石に水ということなるのかも知れない。後々の世代のことを思うと恐ろしいことなのだが・・・。

    0
    2012年03月13日
  • 新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    先日伊勢神宮に行ってから、日本的な美意識に興味が沸々と。岡倉天心の茶の本が新訳で出ていて、なかなか評判がよろしいらしい。

    茶道の本質は不完全ということの崇拝ーー物事には完全などということはないということを畏敬の念を持って受け入れ、処することにある。不可能を宿命とする人生のただ中にあって、それでも何かしら可能なものを成し遂げようとするこころ優しい試みが茶道なのである。

    この一文に、西洋と東洋の美意識の違いがエッセンスとして凝縮されている。これは美意識のみならず、一神教を軸とする西洋の精神文化の持つ論理、構造性、に対応する東洋からの回答ともいえる。不完全性を受け入れた諦めの先にこそ、軽やかで自由なこころの境地があるということだ。

    またこういうのもあった。チャールズ・ラムの言葉として本文中に引用されている。

    「善きことをなすにあたってはひそかにこれをおこない、たまたま表にあらわれるにまかせることをこそ無情の喜びとする。」茶道とは美を見出してもそれを包み隠しておくたしなみであり、あからさまな表現を避けて暗示するにとどめておく術だからである。それは自分というものを、つつましやかに、しかし徹底的に笑いのめす気高い奥義であり、その結果として、ユーモアそのものであり、悟りの微笑なのである。

    またそこに岡倉天心は汎神論的な神秘の輝きを見いだす。茶とは神の飲み物、天の甘露であると。そして中国で勃興した茶の文化がモンゴルの襲来に酔って中国では衰退してしまったものが、日本という国で生き残り継承発展されて行ったと。

    私たち日本人にとって茶道は単に茶の飲み方の極意というだけのものではない。それは、生きる術を授ける宗教なのである。茶という飲み物が昇華されて、純粋と洗練に対する崇拝の念を具体化する、目に見える形式となったものであり、その機会の応じて主人と客が集い、この世の究極の至福を共に作り出すという神聖な役割を果たすことになる。(中略)茶の湯は、茶、花、絵などをモチーフとして織りなされる即興劇である。部屋の色調を乱すような色、動作のリズムを損なうような音、調和を乱すような仕草、あたりの統一を破る酔うな言葉と行ったものは一切泣く、全ての動きは単純かつ自然になされる。茶の湯が目指したのはこのようなものである。そして、この企ては不思議にも成就されたのである。その全ての背景には微妙に哲学が働いている。茶道は姿を変えた道教なのである。

    引用が多くなって申し訳ないが、この新訳での現代的な言葉遣いの効果も相まって、岡倉天心の言葉が現代の西洋と東洋という大きなパラダイムを橋渡しするための高度に現代的な批評となり得ているところに驚きを禁じ得ない。そしてその本質、茶道とは霊的な儀式、儀礼であり、さまざまな象徴言語を用いて神人一如な世界への参入と捉えている所など、西洋・東洋が最も深い歴史的レベルで繋がる、霊的な源流へと茶道が通じていることを物語っているのだ。





    0
    2009年10月04日
  • 新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    こんなに芸術を愛し、日本を愛する国際人がいたとは…!
    戦後において西洋追随ではなく東洋の素晴らしさを忘れず、
    時代に流されなかった天心は立派!
    ただし他文明を差別化した表現が少々気になった。

    芸術の在り方が、あまり納得いかない。
    「芸術とは自分の内から湧き出るものを表現すること」
    って私は思うけど、 彼に言わせると私は
    「近代西洋の自己中心的な考えに染まりきっている」 らしい。

    0
    2009年10月07日
  • 新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    老荘思想に影響を受け手に取ってみたが、それを忘れる程思想強め。茶の本も現代人から見るとバイアスかかってるなという感想ではあったが、東洋の思想は日本>アジア>欧米の価値観がストレートに書かれすぎていてややしんどさはあった。

    0
    2026年08月09日
  • 新訳 茶の本 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    茶道を始めたため、何かヒントになることが書かれているのではと思い手に取った一冊。
    難しい哲学的な本かなと思っていたが、比較的分かりやすい表現が多く、スムーズに読み進められた。
    特に印象的だったのは、第六章と第七章。
    また、後半の天心の生涯について書かれた部分も非常に興味深かった。当時珍しかったバイリンガルであり、何度も海外を周遊していたことを知らなかったため、驚きだった。
    また、パネルジー夫人との手紙のやり取りは、非常に人間味というか天心の弱い一面が出ており、1人の人として彼が人生を悩み生き抜いたのだと実感した。
    茶道を極めるなかで、また数年後にまた手に取りたい。

    0
    2026年06月24日
  • 九鬼周造「いきの構造」 ビギナーズ 日本の思想

    Posted by ブクログ

    江戸時代の吉原遊郭などを題材に、日本人の美意識「いき」とは何かについて書かれた本。絶妙なバランスや 本来とずれていること 二元性 あきらめ 意固地 などがいきを理解する上でのポイントと書かれている。

    0
    2025年12月31日