大久保喬樹のレビュー一覧
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明治以降の日本文化論について、自然観・美意識・倫理・形而上学・言語・心理・歴史観など人文的レベルの観点から比較文化的視点で論じた書。
序 鏡を覗きこむ日本人
1 明治開国と民族意識のめざめ
・志賀重昂『日本風景論』
・新渡戸稲造『武士道』
・岡倉天心『茶の本』
2 民俗の発見
・柳田国男『遠野物語』『山の人生』
・折口信夫『古代研究』
・柳宗悦『雑器の美』『美の作法』
3 日本哲学の創造
・西田幾太郎『善の研究』
・和辻哲郎『風土』
・九鬼周造『「いき」の構造』
4 文人たちの美学
・谷崎潤一郎『陰翳礼讃』
・川端康成『美しい日本の私』
5 伝統日 -
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はっきり言えば、この本で「いき(粋、意気)」というものを理解するのは「現代では」難しい、の一言ですし、この本の解説を「いき」に感じるのであれば、「現代では」感性がズレていることになるでしょう。
でも、それこそが九鬼周造が「いき」を通じて見つけた真髄だという一点において読んで面白く感じました。
つまり、「いき」とは何かを解説することはできる、だが、その構造の1つ1つからは「いき」に到達せず、帰納的な説明しかできず、事実を積み上げての演繹的な解法にならないことを明らかにしています。そして、それは確かにその通りだと思いました。
そして、それが哲学が持つ普遍性の追求にはなり得ないことにも言及している点 -
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お茶を始めたので読んでみた。「茶の本」と「東洋の理想」(序章と終章)が解説とともに収められている。
岡倉天心は東京藝大や日本美術院の礎を作った美術評論家である。英語に巧みで、アメリカの美術館で東洋部の顧問をするとともに、日本や東洋の文化をプロモーションしていた。「茶の本」は茶道(原文では Tea ceremony ではなく Teaism らしい)を東洋独自の美と調和の精神の結晶として紹介し、西洋の文化とは別の価値を持つものとしている。
「茶の本」を茶道思想のスタンダードになる教科書的読物だと思っていたが、どちらかといえば天心独自の見解を開陳したものだった。茶には老荘思想、道教、禅の考 -
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いきという言葉の意味は、結局時代や見る人の立場によって、様々だということだと思います。
あと、「媚態」「意気地」「諦め」の3要素だけで語るのは、無理があるように感じました。
1.この本を一言で表すと?
・「いき」という日本独特の文化を分析した本
2.よかった点を3〜5つ
・いきな衣装
→湯上りの浴衣姿は媚態、つかず離れず、をよく表していると思う
・九鬼周造の生涯と思想
→「いき」を哲学的に追及する背景をぼんやりだがわかった気がする
2.参考にならなかった所(つっこみ所)
・邦楽における「いき」
→音楽のことは、文章で説明されてもイメージができない。
・「いき」な言葉づかい
→こ -
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茶道の本ではありません。
茶道にほとんど触れずに茶道の考えを解説しています。
そのことで日本の文化を浮きだたせています。
1.この本を一言で表すと?
・「茶」を通した日本文化の精神の解説
2.よかった点を3〜5つ
・茶の哲学は・・・倫理や宗教と結びついている(p17)
→茶は単純に語れるものではなく、様々な背景が結びついたもの。
・生きる術を授ける宗教(p50)
→過程が重要ということ。茶を飲むことよりそこに至る過程が重要。人生も死という結果よりそこに至る過程が重要ということ。
・美しく自然らしい清潔さ(p85)
→常にまわりの環境を見て自然らしさを考えなければいけないということ。
・完全 -
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明治から現代に至るまでの主要な日本文化論をたどっています。とりあげられているのは、志賀重昂、新渡戸稲造、岡倉天心、柳田國男、折口信夫、柳宗悦、西田幾多郎、和辻哲郎、九鬼周造、谷崎潤一郎、川端康成、坂口安吾、岡本太郎、丸山眞男、土居健朗の15人です。
ただ、著者自身の観点はあまり正面に押し出されておらず、たとえば青木保の『「日本文化論」の変容』(中公文庫)などにくらべると、ややもの足りなく感じました。もっとも本書があつかっているのは、日本人のナショナル・アイデンティティをとらえようとする日本文化論ではなく、文字通り日本の文化そのものについての日本人による著作が中心となっており、批判的に検討を加 -
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ネタバレ「茶の本」というタイトルですが、それだけでなく日本文化のこれまでとこれからに対する著者の思想を伝える本でした。
(当時の時代背景を考えると仕方ない部分もあるのかもしれませんが)東洋文化を賞賛するあまり西洋文化に対して過剰に批判的になっている印象を受けました。
また、著者の歴史認識についてですが、それが正しいのかどうか知識不足から判断できません。ひとつの見方として受け取っておきたいと思います。
日常の些細な美を見逃さない態度はぜひ身につけたいと思いました。
が、全体としては一読では理解が追いつかなかったので、また時間が経ったら読み返してみたいと思います。 -
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「いき」という言葉のもつ世界観を教えてくれた.「いき」と二元性をなす対のことばは「野暮」となる。これら関連の言葉「渋味」ー「甘味」、「上品」ー「下品」、「派手」ー「地味」を「美意識の六面体」としての表現にとても興味を持った.この「いき」という言葉は、日本独特のものらしい.英語では、raffine, chicが近い言葉として例示され、「美意識の六面体」のどの辺りを表すかを立体的に説明している。言葉の意味の持つ空間性にとても新鮮さを覚えた.作者「九鬼周造」の経歴も波乱に富み、彼の母は、岡倉天心との不倫によって離婚し、幼少期から岡倉天心を伯父さんとして、身近に接する.自信も女性癖のため、離婚する.意