堂目卓生のレビュー一覧
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10年前にベストセラーになったのが頷ける。スミスの『道徳感情論』の翻訳本を一読したが、難解過ぎて大半がわからなかった。本書は、『道徳感情論』・『国富論』を当時のイギリスの置かれた経済・政治の状況を踏まえて、その要点をわかりやすく解説してくれる。スミスが社会的存在としての人間を想定し、他者への同感と他者からの称賛・非難を想像して生きている。人は「賢明さ」と「弱さ」を持っており、賢人でさえも他者からの非難や蔑みを恐れる。神を信じ理性と徳のみを是とする模範的な人ではなく、等身大の生の現実的人間をスミスは想定していたことがわかった。市場は、他者との交流の場でもあり、かつ虚栄と必要以上の富とを求める人の弱さで活発化する。しかし、弱さは狡さと同義ではないゆえに、市場のフェアプレイを維持する法律が必要になる。法学の講義も担当していたスミスの基本的人間観とそれに基づく経済システムと法の必要性との関係も、本書を読んで初めて理解できた。
スミスは、人間の幸福は実は身近なところにあると説いていた。また、人間の心は、逆境にあっても、一定の時間の後に、幸福の前提となる平静な状態に回復するとも考えていた。コロナウィルスで暗い世相の今でも、スミスの言葉は力強く響く。 -
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堂目卓生 アダムスミス 論。アダムスミスの思想体系から 現代に生きる知恵を抽出している。
この解説本は とても面白いのだが、岩波文庫 「 道徳感情論 」は読みにくい。
時代背景として、技術進歩が進む反面、戦争による財政難や格差の問題があり
「道徳感情論」や「国富論」は これらを解消するために 人間とは何か、富や経済成長とは何か、幸福とは何か を問うた という位置づけ。
アダムスミスの思想体系
*道徳感情論=同感が 社会の秩序と繁栄に導く
*国富論=分業と資本蓄積が社会の繁栄を促進する
いずれも同感をキーワードとしている。同感=他人の感情を自分の心に写しとり、同じ感情を自分の中に起こす能力。
人間は社会的存在である という命題に対して
*道徳感情論は、人間は 賢明さと弱さを持つものとして、賢明さは社会秩序の基礎となり、弱さは 社会の繁栄を導く力になるものとした
*国富論〜は、個人の利己心=社会全体の利益とした。ここでの個人は他人に同感し、同感される社会的存在としての個人を前提としている
富は人と人をつなぐ というアプローチについて
*市場とは、同感により 人と人が富を交換する社会
*経済成長とは、富の増大であり、富んだ人と貧しい人のつながりを生むプロセスとした
*自由で公平な市場は 政府の管理強化より 個人の同感をベースとして道徳的に成熟する方が得られる
幸福とは 心が平静であること
*人間が幸福を得るには、それほど多くのものを必要としない
*幸運の中で傲慢にならず、不運の中で絶望せず、自分を平静に引き戻す
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ネタバレ「道徳感情論」読破に向けた登攀準備。
自己の利益追求をする市場参加者が自分の意図を超えて、市場が調整してくれる、という資本主義というか、市場経済のマニフェストと目されるアダム・スミスだが、そんな感じでもないんじゃないのということで、最近、注目されているのが「道徳感情論」。
実は、ポスト資本主義の社会にもういるんだろうけど、メンタルモデルはまだまだ資本主義にどっぷり浸かっている私たちの道徳的基盤を整理するのにいいかな?
「道徳感情論」と「国富論」が矛盾なく繋がっているところが、うつくしい。
「道徳感情論」は、最近の脳科学や心理学の研究結果とも合致する。そして、「神の見えざる手」って、要するに「自己組織化」だったんだね。
アダム・スミスは、複雑系の思想家だったのかも。。。 -
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現代社会で解決が難しい問題について大阪大学で行っている研究プロジェクトをもとにその成果からどのようにアプローチしていったらいいかを解説した一冊。
本書を通してやっかいな問題に粘り強く取り組み続けるしくみをつくることが大事であることや誰もが許容可能と感じる成解をつくることな度が大事であることが理解できました。
また、本書で取り上げられている学際共創の取り組みでは論文だけが成果ではなく問題との関わり方の方が大きな成果となることや当事者と対峙することで感じることや社会イノベーション教育の実施、学生の意識の変化などを通じて大学生に問題に向き合う前の考え方の準備など大学生をフォローするために行なっていることも知ることができました。
実践編としてKIITOでの取り組みと風の人を育てるという理念やとつユメプロジェクトで地域の中学生と大学生がどのようにして地域に溶け込み学びを得ているか、問題をアートと農村の融合の観点から捉えて成解を出そうとする試み、マイノリティの小さな声に向き合うということはお互いの声を聞き合うことが差別や偏見をなくすことにつながることなど実践編では実際の姿を通して多くの学びを得ることができました。
本書ではハブとなる人物の重要性を社会が感じていないことを感じ、そこから研究での数々の事例を見て現地で向き合うことの難しさや失敗することで学ぶことの大切さを感じました。
多様性が叫ばれている現代で本書での取り組みは数々の問題を解くために社会に提供されている場であると感じた一冊でした。 -
Posted by ブクログ
アダム・スミスの二つの主著である『道徳感情論』と『国富論』の内容を紹介し、彼の倫理学と経済学のつながりについて解説している本です。
自由放任主義というイメージをいだかれることの多いスミスですが、『道徳感情論』において展開されている彼の倫理学では、人間と社会についてのリアリスティックであるとともに人間性についての深い信頼にもとづく議論がおこなわれています。とりわけ、人間には他者に対して同感をいだく存在であり、それにもとづいて公平な観察者をみずからのうちに設定することが、人びとの公正な判断を可能にしていることが解説されています。
つづいて、こうしたスミスの倫理学上の考えかたの上に立って、『国富論』に展開される彼の経済思想の内容が検討されています。そのうえで、農業・製造業・外国貿易という順番で経済発展がなされることがもっとも自然だとするスミスの考えと、じっさいのヨーロッパの歴史においてこの順序が逆転されるという事態が生じたためにさまざまな問題が生じたという彼の時代診断が説明されます。さらに、漸進的な問題の解決を説くスミスの現実主義者としての側面と、喫緊の課題とみなされていたアメリカ植民地問題に対する彼の意見についても触れられています。