【感想・ネタバレ】アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年03月23日

道徳感情論の話はなかなか面白かった。道徳を持った上で経済活動をすると幸福になれる????かも

その行動が他人に対してどんな影響を与えるのか、もう1人の自分(公平な観察者)で判断する。

インタラクションが誤解を解く(これは対外的な問題であり、身の回りの人と関わることもそうだし、海外の人と関わること...続きを読むも同じようなもんだろう)

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Posted by ブクログ 2022年08月27日

 アダム・スミスというと『国富論』という書物の名前とともに歴史の時代に覚えさせられた。市場に見は「見えざる手」があり、それに任せればうまくいくという市場自由主義の提唱者のように覚えていた。本書はそれが少し間違っているかもしれないと思わせる内容である。
 『道徳感情論』については殆ど知らなかった。人に...続きを読むは他人から同感され称賛されたいという思いがあり、それが不道徳なことを不正を退け、また周囲から認められる方法として富を獲得しようとするのだという。胸中にある公平な観察者、つまり道徳心のようなものを人は成長とともに獲得し、現実社会と比較する。賢人は独特的に生き、必要以上の富を求めないが、その他の人間はついより多くの富を求めてしまうというのだ。結果的にこの非賢人たちが経済を発展させていったのだという。
 スミスの考えの奥には人間は同感し、されたい生き元であるという極めて道徳的な考えがある。単なる市場信奉者ではないのだ。それは彼が生きたイギリスにとって不本意な時代の影響を受けているといえる。
 日本の現状は経済学的に行き詰まっているとよく言われる。このときに議論されるのは常に国際競争力であり、勝つか負けるかの考えである。スミスの考えていたことはもう少しスケールが大きかったようだ。この視点を持てば少し違った考えも浮かぶかもしれない。

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Posted by ブクログ 2021年12月12日

アダムスミスの思慮深い考えを知ることができます。

特に、『道徳感情論』の「同感」に対する考え方は興味深いです。

「神の見えざる手」という言葉だけで
自由市場主義の単純な人、と誤解していたのが恥ずかしいです。

本書は知的好奇心を満たしてくれ、文句なしにおススメです

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Posted by ブクログ 2021年10月02日

丁寧な解説。正しくは原書にあたるべきなのでしょうが、やはりきちんとした解説書はありがたいです。もし無人島で一人で暮らすのであれば不要な富を求めるのは虚栄心。しかし、虚栄心が経済を発展させる。

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Posted by ブクログ 2020年12月04日

見えざる手で知られるアダムスミスが、何を訴えたかったのかがわかる本。
自分の欲望のままに経済にに関われば経済は成長するという主張かと思っていたが、実はまったく違った。社会的人間として、理性と共感を持つこと、経済や富が人を繋げる手段となること、産業は自然の成り行きで発展すべきであって、過度な政治的な規...続きを読む制などは必要ないこと、など今の社会にも通じることが多いとても教訓となる本

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Posted by ブクログ 2020年03月07日

アダム・スミス様、申し訳ありません。
ワタシは貴方のことを誤解していました。教科書レベルでしか知らない『国富論』から、市場万能主義者と思っていましたが、貴方は経済学者である前に哲学者であり、倫理学者であり、グラスゴー大学で道徳哲学を教えていた人なのでした。『国富論』の前に書いた『道徳感情論』こそ、貴...続きを読む方の原点であり、そこには緻密な人間観察に裏打ちされた哲学者としての矜恃すら感じられます。人間は他者という存在に共感し、この共感は自身の目ではなく、他者の目による基準で発生すると述べられています。人間の善意を信じると言う思いが根底にある貴方の考えは、資本主義が逆境を迎えたとも言われるこの時代に、改めて見直すべきものだと感じます。

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Posted by ブクログ 2018年03月28日

道徳感情論と国富論を並べて見せる本です。
アダム・スミスの射程の深さを知りました。ミクロ経済学だけでなく、行動経済学まで含むのだな、と思いました。

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Posted by ブクログ 2018年02月07日

周囲が持つイメージでアダムスミスを捉えてしまっていたことがよくわかった一冊。


ここに書かれているのは、ストア派をベースにした人間についての深い洞察と、理想的な「秩序と繁栄を謳歌する経済」の姿でした。フロイトの超自我にも通じる「公平な観察者」や、硬直した考えを持つ人物を「体系の人」と読んでみたり、...続きを読む人の本性を鋭く捉えた感覚がよく伝わってきた。

ちなみに「人は合理的に行動する」とは書かれていなかった。それどころか、非合理的な判断をすると読めるのだけど。

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Posted by ブクログ 2017年06月13日

本書が出るまで、一般に日本においてスミスは損な役回りを担ってきました。新自由主義の古典や源流として、反対する立場から冷たい目でみられ、かといって推進する立場からは特に擁護もされず。
今や、新自由主義の賛否両陣営にとって様々なパラダイムシフトが必要になりました。推進の立場にとっては、見えざる手が有効で...続きを読むあるための土台である、共感やフェアな競争とは何なのか改めて検討する必要があります。また反対の立場からは、フェアな競争が存在しうるのか改めて検討する必要があります。スミスは装いを新たにしたのです。

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Posted by ブクログ 2016年08月12日

本書は、アダム・スミスの二大著書『道徳感情論』『国富論』を俯瞰することによって、アダム・スミスの描く世界、および両書の関係性を紐解くことを試みた本である。
アダム・スミスは自己と他者との感情、とりわけ同情に関心があり、その相互作用のいかんによって国家の繁栄が決定づけられることを論じた。彼の論じた内容...続きを読む、すなわちアダム・スミスの描く世界は、思うに徹底した人間観察から得られる経験的な推論と、そこから想像力を駆使して論理的に導かれる帰結を描いた実証研究、および世界がどのようになるべきかという規範研究の両方が含まれており、その内容は現代社会をよりよくするための含意も多い胃に含まれているように思える。
一方で、『道徳感情論』と『国富論』の関係性についてだが、『道徳感情論』は上述した内容を理論的に説明したものであり、一方で『国富論』はその理論を実施に社会に反映するにはどうしたら良いかという具体案であると述べられている。
本書は、アダム・スミスの思想のエッセンスを、具体的に、しかし分かりやすく解説しており、とても良書のように思えた。この本を読んで、『道徳感情論』を実際に読んでみたいと思うようになった(『国富論』も読んでみたいと思うが、個人的にはアダム・スミスの道徳哲学に興味があるので、どちらかというと『道徳感情論』の方が読んでみたい、という気持ちである)。

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Posted by ブクログ 2015年10月10日

良書である。古書店にて値段の安さから珍しく衝動買いした本書、『道徳感情論』は素より『国富論』すら未読の経済学ビギナーというか完全に門外漢の自分にも、平易かつ丹念な記述でアダム・スミスの思想を判りやすく教えてくれる。アダム・スミスといえば『国富論』の「神の見えざる手」が有名だが、もう一つの著作『道徳感...続きを読む情論』で展開される「同感」「胸中の公平な観察者」等のタームを知ることで、競争の必要性を論じつつも急進的な変化を〈反感を招く〉として嫌い、心の平静を第一とした堅実な〈観察者〉としての姿が浮き彫りになる。

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Posted by ブクログ 2014年09月07日

今までイメージしていたスミスとは全く違う内容に衝撃を受けた。

スミスの人間に対する深い洞察力と、当時の社会情勢に関する冷静な分析、そして社会をより良いものにしようとする静かな情熱に心を打たれた。

スミスの著作が時代を越えて読み継がれる理由がよく理解できた。一方、いくら時代が経って物質的には豊かに...続きを読むなっても人間の本質は全く変わっていないということが改めて認識できた。

One of the best books I've ever read!

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Posted by ブクログ 2014年01月13日

アダム・スミスを誤解していた。経済自由主義(経済学)の始祖とも言えるスミスがこれほど倫理についても考えた人とは思っていなかった。特に経済において「フェアプレイの精神」を強く説いていることが印象的。また価値があるのは貨幣ではなくそれと交換される必需品や便益品である、との指摘は現在の金融資本主義の批判の...続きを読むようでもある。また、理想が正しくても急進的な改革は批判していた。この本をきっかけにもう一度経済的自由主義を見直したいと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年05月06日

最後のページにある文章が、時を超え、
幸福へと運んでくれる真理として、心に響きました。

「スミスは、真の幸福は心が平静であることだと信じた。
そして、人間が真の幸福を得るためには、
それほど多くのものを必要としないと考えた」

「たいていの人にとって、真の幸福を得るための手段は、
手近に用意されて...続きを読むいるのだ」

「与えられた仕事や義務、家族との生活、友人との語らい、
親戚や近所の人びととのつきあい、適度な趣味と娯楽。
これら手近にあるものを大切にし、それらに満足することによって、
私たちは十分幸せな生活を送ることができる」

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Posted by ブクログ 2023年08月26日

高名な『国富論』を文庫で読んでみようかなと思ったら、思いの外分厚かったので、解説本の方を読んでみた。

『道徳感情論』の方は、1759年、『国富論』は1776年(アメリカ独立宣言の年!)の発刊。

両著は毛色の違うテーマだが、「秩序と繁栄」を重んじる点で一貫している。

コテコテの自由主義者と思って...続きを読むいたが、自由競争が善となるには、「フェアプレイ」の精神が必要条件で、その道徳の大事さを国富論の17年前に説いている点がミソだ。

有名な「見えざる手」(invisible hand)は、分厚い著作の中でたった一度だけしか出てこないフレーズだそうだが、キャッチーなので、ここまで広まったのだろう。

アメリカ独立戦争前に、イギリスは自発的に植民地を放棄するべきで、それが(一部の特権的立場の商人を除き)みんなのためになる、と説いた、圧倒的に先見的な世界観に頭が下がる。
太平洋戦争中に、石橋湛山(ジャーナリスト、戦後短命首相)が同じようなことを言ったが、その150年以上前から、経済学者の草分けが論理的にそれが最善だと説いているのが感慨深い。人間の進歩の足は早いようで遅く、悲劇的な結末を経ずには学べないこともある、ということか。

“グレート・ブリテンは自発的に植民地に対するすべての権限を放棄すべきであり、植民地が自分たち自身の為政者を選び、自分たち自身の法律を制定し、自分たちでが適切と考える通りに和戦を決めるのを放任すべきだと提案することは、これまで世界のどの国にとっても採用されたことのない、また今後も決して採用されることがない方策を提案することになるだろう。”
(四篇七章三節)

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Posted by ブクログ 2023年07月06日

武器としての哲学の推薦本である。道徳感情論と国富論を読まずに理解させる気にさせる。当時のイギリスのアメリカへの植民地政策が大きな影響を与えているという説明がある。さらに、当時のイギリスの重商政策がわかりやすく説明されている。国富論の説明が短い章でどんどん行われているのが特徴である。

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Posted by ブクログ 2021年07月02日

『国富論』に関する俗説を、『道徳感情論』を基盤に据えて、丁寧に解体し、スミスの思想を手堅くまとめている。新書の見本のような好著。アメリカとイギリスとの関係について大胆に提案した箇所は読みどころ十分だった。

経済活動については『国富論』の妥当性は失われていないと思うが、派遣制度などを通して儲けている...続きを読む「強欲さ」は冬至から変わっておらず、人間が一番の阻害要因になっている。だからこど『道徳感情論』の論が説得的だ。「賢人」と「弱い人」の指摘など”切れ”があるからだ。

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Posted by ブクログ 2021年03月11日

◾️概要
経済学の原点を学ぶため、読みました。最も印象に残ったのは、利己心に基づく経済成長の促進だけを肯定しているわけでない点です。道徳感情論の説く社会秩序と繁栄、国富論の説く分業と資本蓄積を両輪としています。

◾️所感
アダム・スミス=神の見えざる手、と思っていた私のイメージが覆されました。人々...続きを読むの幸福についても言及され、富や地位が個人に不変の幸福を与えるとは決して述べないのが印象的です。

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Posted by ブクログ 2021年01月11日

■著者が扱っているメインテーマ
社会の秩序と繁栄に関する思考とは?

■筆者が最も伝えたかったメッセージ
真の社会繁栄とは、一人一人心が平静であり幸福でいられること。
身近にあるもので幸せがつかめること。
そのためには、最低水準の富が増大するような徳への道と財産の道を歩んでいくことで
人と人がつなが...続きを読むっていく社会を実現すること。

■学んだことは何か
財産だけでは幸せになれない。人としての正しい道徳の心を
同時に高めていかなければならない。

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Posted by ブクログ 2020年03月10日

 10年前にベストセラーになったのが頷ける。スミスの『道徳感情論』の翻訳本を一読したが、難解過ぎて大半がわからなかった。本書は、『道徳感情論』・『国富論』を当時のイギリスの置かれた経済・政治の状況を踏まえて、その要点をわかりやすく解説してくれる。スミスが社会的存在としての人間を想定し、他者への同感と...続きを読む他者からの称賛・非難を想像して生きている。人は「賢明さ」と「弱さ」を持っており、賢人でさえも他者からの非難や蔑みを恐れる。神を信じ理性と徳のみを是とする模範的な人ではなく、等身大の生の現実的人間をスミスは想定していたことがわかった。市場は、他者との交流の場でもあり、かつ虚栄と必要以上の富とを求める人の弱さで活発化する。しかし、弱さは狡さと同義ではないゆえに、市場のフェアプレイを維持する法律が必要になる。法学の講義も担当していたスミスの基本的人間観とそれに基づく経済システムと法の必要性との関係も、本書を読んで初めて理解できた。
 スミスは、人間の幸福は実は身近なところにあると説いていた。また、人間の心は、逆境にあっても、一定の時間の後に、幸福の前提となる平静な状態に回復するとも考えていた。コロナウィルスで暗い世相の今でも、スミスの言葉は力強く響く。

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Posted by ブクログ 2020年01月14日

堂目卓生 アダムスミス 論。アダムスミスの思想体系から 現代に生きる知恵を抽出している。


この解説本は とても面白いのだが、岩波文庫 「 道徳感情論 」は読みにくい。


時代背景として、技術進歩が進む反面、戦争による財政難や格差の問題があり

「道徳感情論」や「国富論」は これらを解消するため...続きを読むに 人間とは何か、富や経済成長とは何か、幸福とは何か を問うた という位置づけ。


アダムスミスの思想体系
*道徳感情論=同感が 社会の秩序と繁栄に導く
*国富論=分業と資本蓄積が社会の繁栄を促進する

いずれも同感をキーワードとしている。同感=他人の感情を自分の心に写しとり、同じ感情を自分の中に起こす能力。


人間は社会的存在である という命題に対して
*道徳感情論は、人間は 賢明さと弱さを持つものとして、賢明さは社会秩序の基礎となり、弱さは 社会の繁栄を導く力になるものとした
*国富論〜は、個人の利己心=社会全体の利益とした。ここでの個人は他人に同感し、同感される社会的存在としての個人を前提としている


富は人と人をつなぐ というアプローチについて
*市場とは、同感により 人と人が富を交換する社会
*経済成長とは、富の増大であり、富んだ人と貧しい人のつながりを生むプロセスとした
*自由で公平な市場は 政府の管理強化より 個人の同感をベースとして道徳的に成熟する方が得られる


幸福とは 心が平静であること
*人間が幸福を得るには、それほど多くのものを必要としない
*幸運の中で傲慢にならず、不運の中で絶望せず、自分を平静に引き戻す

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Posted by ブクログ 2021年08月08日

社会学部を卒業しているにもかかわらず、今までアダム・スミスの書物を1度も目にしたことがなかった。恥ずかしながらアダム・スミスについての良書が出たととある書評で読んだので、買ってみた。アダム・スミスといえば「みえざる手」で余りにも有名で、本書にあるとおり、「規制を撤廃し、利己心にもとづいた競争を促進す...続きを読むることによって、高い成長率を実現し、豊かで強い国を作るべき」というイメージが強かった。ところが、本書の解説を読んで、そのイメージは覆された。経済書であることは勿論だが、人徳者としての一面を垣間見た。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年03月05日

「道徳感情論」読破に向けた登攀準備。

自己の利益追求をする市場参加者が自分の意図を超えて、市場が調整してくれる、という資本主義というか、市場経済のマニフェストと目されるアダム・スミスだが、そんな感じでもないんじゃないのということで、最近、注目されているのが「道徳感情論」。

実は、ポスト資本主義の...続きを読む社会にもういるんだろうけど、メンタルモデルはまだまだ資本主義にどっぷり浸かっている私たちの道徳的基盤を整理するのにいいかな?

「道徳感情論」と「国富論」が矛盾なく繋がっているところが、うつくしい。

「道徳感情論」は、最近の脳科学や心理学の研究結果とも合致する。そして、「神の見えざる手」って、要するに「自己組織化」だったんだね。

アダム・スミスは、複雑系の思想家だったのかも。。。

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Posted by ブクログ 2017年07月27日

アダム・スミスに対する既存のイメージである、「国富論」の主張である「規制を撤廃し、利己心に基づいた競争を促進することで高い成長を実現し、豊かで強い国を作るべきだという考え」、一方で「道徳感情論」では「人間にとって最も重要なのは心の平静を保つこと」「真に幸福を得る手段は手近に用意されていること」「正義...続きを読む・慈恵・利他」が必要と説いている。これは現代社会にも必要(ただし、十分ではない)なことであり、起業、経営、社会の運営等の基本となる考え方を学ぶことができた。

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Posted by ブクログ 2016年01月11日

自由主義市場経済の父と称されるアダム・スミスの思想を、生涯の二つの著書『国富論』と『道徳感情論』から再構築した、サントリー学芸賞受賞作(2008年)。
最近のアダム・スミス研究では、『道徳感情論』を『国富論』の思想的基礎として重視する解釈が主流となりつつあるが、本書では、二つの著書を「社会の秩序と繁...続きを読む栄」という観点から、論理一貫した思想体系として捉えている。
著者は、スミスは、『道徳感情論』で、人間本性の中には「同感=sympathy」(他人の感情を自分の心の中に写し取り、それと同じ感情を自分の中に起こそうとする能力)があり、この能力によって社会の秩序と繁栄が導かれることを示し、『国富論』で、このような人間観と社会観に立って、社会の繁栄を促進する二つの一般原理、分業と資本蓄積を考察したと言う。即ち、スミスは確かに、『国富論』において、個人の利己心に基づいた経済行動が社会全体の利益をもたらす(=「見えざる手」)と論じたが、そこで想定される個人は、社会から切り離された孤立的存在ではなく、他人に同感し、他人から同感されることを求める社会的存在としての個人なのである。
そして、著者は終章で、スミスが到達した境地を、「スミスは、真の幸福は心が平静であることだと信じた。・・・諸個人の間に配分される幸運と不運は、人間の力の及ぶ事柄ではない。私たちは、受けるに値しない幸運と受けるに値しない不運を受け取るしかない存在なのだ。そうであるならば、私たちは、幸運の中で傲慢になることなく、また不運の中で絶望することなく、自分を平静な状態に引き戻してくれる強さが自分の中にあることを信じて生きていかなければならない。」と記している。
経済学の解説を超えた著作として読むことができる。
(2009年2月了)

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Posted by ブクログ 2014年09月19日

アダム・スミスの著書『道徳感情論』と『国富論』を分かりやすく解説した本。引用も多くかなり詳しく解説してあるため後半は退屈した。いきなりの原書はハードルが高かったのでいい踏み台になると思います。

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Posted by ブクログ 2014年03月01日

ある事象に対して、自身の心中における「公平な観察者(客観性)」と「世間の評価」との兼ね合い、均衡を保ちつつ、前者を優先する「一般的諸規則」を重要視する、と説く一冊。
スミスが述べる社会秩序は
1.自然の摂理(種としての保存と繁栄)
2.人間の諸感情
3.一般的諸規則からの逸脱
とある。

この中で、...続きを読む富、つまり人と人とを繋ぐものが重要になってくる。
しかし、必ずしも富を得ることが幸福に直結するのではない。
「真の幸福とは、心が平静であることだ」
とあるように、何に足りて、満足するか?
この目的を達するための行動の取捨選択が肝要になる。

富に対する見解、またこうした考えがどうした時代背景から生まれたのか。
幸福=心の平静と説く、アダムの聡明さを確認させられる一冊。

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Posted by ブクログ 2024年04月06日

アダム・スミスの二つの主著である『道徳感情論』と『国富論』の内容を紹介し、彼の倫理学と経済学のつながりについて解説している本です。

自由放任主義というイメージをいだかれることの多いスミスですが、『道徳感情論』において展開されている彼の倫理学では、人間と社会についてのリアリスティックであるとともに人...続きを読む間性についての深い信頼にもとづく議論がおこなわれています。とりわけ、人間には他者に対して同感をいだく存在であり、それにもとづいて公平な観察者をみずからのうちに設定することが、人びとの公正な判断を可能にしていることが解説されています。

つづいて、こうしたスミスの倫理学上の考えかたの上に立って、『国富論』に展開される彼の経済思想の内容が検討されています。そのうえで、農業・製造業・外国貿易という順番で経済発展がなされることがもっとも自然だとするスミスの考えと、じっさいのヨーロッパの歴史においてこの順序が逆転されるという事態が生じたためにさまざまな問題が生じたという彼の時代診断が説明されます。さらに、漸進的な問題の解決を説くスミスの現実主義者としての側面と、喫緊の課題とみなされていたアメリカ植民地問題に対する彼の意見についても触れられています。

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Posted by ブクログ 2020年06月12日

『国富論』と『道徳感情論』をざっくり掴める。
読めるのなら本書を挟まずに原文読んでしまった方がいいかも。というのも、ひたすら解説続きなので、あまり著者の意見がない。

古典作品を書いた人の本質を見抜く力、洞察力は本当に頭が上がらない。勿論スミスもその一人で、特に『道徳感情論』は読みたい一冊。

これ...続きを読むだけの洞察力があって『道徳感情論』があったからこそ、不朽の名作『国富論』があり、名言の「神の見えざる手」があるというのは理解できた。

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Posted by ブクログ 2013年09月17日

国富論の章まで読むことができなかったが、道徳感情論を読むだけでも、スミスの考え方が理解できる。
ずっと、自由放任主義=なんでも自由と考えてきた私は、スミスに対して否定的な考えをしていたが、そうではなかった。むしろ、道徳心を否定するような自由主義経済に対しては否定的だった。おそらくスミスの考えがうまく...続きを読む浸透せずに、ブルジョアは権力と結びつきとめどない自由となってしまったのだろう。

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