哉都の前に突然現れたのは、かつての大学の同級生・汐崎。
彼は、哉都と彼の兄が愛人関係にあると思い、「関係を解消してくれ」と言いに来たのだった。
確かに哉都は、「ジゴロ」を仕事にしていて、愛と身体を売ってはいたけれど、彼の兄とは関係を持ったことなど一切なく、完全に汐崎の勘違いであった。
けれ
...続きを読むど、はなから哉都の言い分など聞く耳を持たず、手切れ金まで差し出して自分の思い込みだけで話を進める彼に、哉都は「所詮その程度にしか思われてないのか」と意地になった哉都は売り言葉に買い言葉で、ついつい関係を認めるような発言をしてしまう。
すると、あろうことか汐崎は「俺がお前を買う」と言い出す。
それこそ、冗談じゃないと思った哉都だったけれど、汐崎の言い草に、契約愛人(プロ)としてのプライドを刺激され、その条件を飲んでしまう。
それきり、哉都の住んでいるマンションを「愛人に買ってもらったものだろう」と決め付けられ、連れ出されてしまった哉都は、汐崎が用意するマンションで生活することになる。
いきなり無体な行為をしかけられたため、「したくない」と言えば汐崎は手を出さず、哉都の作った料理をおいしそうに食べて帰っていく。
哉都が望めばもちろん、身体の関係も持つけれど、基本的に汐崎の哉都に対する扱いはとても丁寧であった。
そんなまるで新婚のような生活に慣れない哉都は落ち着かない――という話でした。
そんな折、友人である汐崎の義理の弟と会っていたことを、他の愛人と会っていたと勘違いされてしまい――
という話でした。
実は哉都は、大学時代に汐崎のことを「いいな」と思っていて、けれど自分とはまったく違う世界に生きている人間だと思っていたので、話しかけることもなく、たまたま重なった空き時間をいつも決まった席に座っている汐崎を見つめるだけで終わっていて。
また、汐崎もそんな自分を見ている哉都を、気にしていて。
卒業して数年が経った再会の暇でも忘れていなかった……というピュアっぷり。
どっちもどっちなんですが、はっきり一言「好きだ」って言ってしまえばいいのだけれど、どっちも素直じゃないからその一言が認められなくて。
結局、こじれにこじれてしまった――という。
なんというか哉都の意地の張り方がとってもかわいくて。
おまけに、愛を売り物にしてしまったがゆえに、売らない愛のささやき方がわからなくて。
そいう不器用なところもかわいいなーと思わせてくれる作品でした。