小早川涼のレビュー一覧
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ネタバレあとがきによれば、シリーズ最終巻だそう。
文政八年(1825年)初春で終わるけれど、ペリー来航まではまだ28年あるとは言え、日の本の海周りはしきりと異国船が取り囲み、たびたび無断上陸を図るなど、すでに鎖国の危機、激動の時代を迎えている。
この巻の中でも異国船の件は取り上げられ、また、藩政の破綻など、悩んで痩せるだけで何もできない将軍様ってどうよ、と思う。
前々巻くらいまでは、賢明なお人柄、と自分も褒めていたと思うが、それは江戸城内で始末がつくことに関してであって、日の本全体を見る目や、先々の外交を見通す目には限界があるように感じる。
第一話の、薩摩藩と富山藩の件も、第二話の切支丹絵草紙の件も -
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江戸城の御膳所で料理人を務める、ぽっちゃり系鮎川惣介の新シリーズ第二弾。
鮎川家は、惣介と妻の志織、長女・鈴菜、長男・小一郎のほか、将軍家斉から内密にお預かりしている英吉利人・末沢主水(すえさわ もんど)、主水に料理を教えるために鮎川家に身を寄せている、ふみ、その息子の伝吉と、なかなかに賑やかな大所帯となった。
第一話 半夏水(はんげすい)
梅雨の集中豪雨で浸水被害の対応に追われる中、家斉から預かっているイギリス人水夫の主水が行方不明になった。
人の心が闇に堕ちる理由はさまざまあれど、上に立つ人間が気付いてやれないのも、今回に限ったことではない。
シングルマザーのふみさんがかなりのしっかり者 -
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将軍家斉の食事を用意する、江戸城の台所人、ぽっちゃり系・鮎川惣介と、その友人で、大奥の添番(警護)を務めるイケメン・片桐隼人のシリーズ、第4弾。
京都から下って来た、西の丸の料理人・桜井雪之丞のイケズぶりもいい味を添える。
時は文政四年(1821年)
ペリー来航は、家斉の子である次の将軍・家慶(いえよし)の代、1853年だから、「幕末」にはちょっと間がある。
しかしすでに、日本列島のまわりは外国船がうろうろと嗅ぎまわり、国内は終末の予感を漂わせている。
隼人は常に「悩める青年」風であるが、妻の懐妊を素直に喜ばず一悶着。
しかしそれは、先の世への不安、息子に自分と同じ武士の道を歩ませることへ -
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うっかり、「新・包丁人侍事件帖」の方を先に読んでしまったので、元のシリーズの方を一から順番に読むことにした。
それにしても面白いシリーズ、巡り会えてうれしい。
徳川は家斉の時代、文政三年(1820年)から始まる。
江戸城の台所人、ぽっちゃり系の鮎川惣介は、ちょっとした失言で夫婦喧嘩。
あ〜、料理人の夫から料理の事言われたくないよね〜
14歳の長女と10歳の長男を持つ、30代半ばの夫婦の関係は、現代と変わらず。
そんな、惣介の日常も微笑ましく描かれるが、ひとたび登城すれば・・・
権力ある所に陰謀あり。
一見小さな事件が、実は遥か上の方で、大物たちの操り人形芝居で繋がっている。
片桐隼人は惣介 -
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将軍の料理番シリーズ全7巻に続く、包丁人侍事件帖シリーズ第4巻(完結)
この本は完結版トイいうことで、お腹がでっぱった料理が何より大好きで食べることが大好きな鮎川惣介が主人公のこのお話は私のお気に入りの一つで、噛み締めるように読み終えた。
一番長く将軍を務めた徳川家斉の料理番でもあり、数いる料理番の中でも家斉の代大期待のお気に入りで、表立っては禁じられているお休み前の、軽食を請われれば用意する係でもある。その時に世間話をしてみたり、食のよもやま話で楽しんだり、日頃毒味が入り、決して美味しく食事をできない将軍だが、鮎川惣介の作る温かな気持ちのこもった逸品を何より楽しみにしている。
そんな将軍か -
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江戸城の御膳所で将軍の食事を作る料理人・鮎川惣介の物語。
この時代の江戸は火事が多かったと聞く。
文政七年如月、立て続けに5件の火事が起きた。
付け火の疑いもある。
そして、以前の事件で知り合いになった火消しの勘太郎に、友人の不審死について調べてほしいと惣介に依頼がくる。
それにと並行して、江戸幕府上層部では、贋金造りの捜査も進んでいた。
火事に関して、多分それ以外にも、江戸幕府がさまざまに危機管理対策を考え、政治を行ってきたのだなと思う。
しかし、その影で、都合の悪い事件はもみ消しにされたりして・・・
ま、現代と同じかな。
いかにも良い人過ぎる人は胡散臭いかなと疑う。
お人好しの惣介は気 -
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江戸城御広敷御膳所で将軍家斉の食事を作る、ぽっちゃり系の御家人・鮎川惣介(あゆかわ そうすけ)と、その幼馴染で大奥の添番(そえばん)(警護)を務める、シュッとした御家人・片桐隼人(かたぎり はやと)が事件を解決するシリーズ第7弾。
今回は、優れた弓の腕を持ちながら、酒で身を持ち崩しそうになっている若い旗本と、いよいよ生活習慣病の危機か、という惣介のウエスト周りをどうにかしなくてはならない、というストーリーを軸に、例によって、大奥で怪しい事件が起きる。
第一話 嫌な女
大奥の厠で赤子の骸が見つかる。
「嫌な女」レベルではない。
以前出てきた「池袋の女」顔負けのサイコパスでは?
ある意味無邪気だ -
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江戸城の料理人、ぽっちゃり癒し系・鮎川惣介(あゆかわ そうすけ)と、幼馴染で大奥の警護係を務める片桐隼人(かたぎり はやと)のシリーズ、第6弾。
惣介は、家斉からまたも、内密の調査を命じられる。
職場でのいじめ・・・自殺・・・
現実でも、学校のいじめで先生も一緒に葬式ごっことか、あったなあ・・・
隼人の見ている大奥でのドロドロは、江戸城内での特殊感があるが、今回の西の丸御膳所のケースは、現代に通じるものがあって、とてもリアルに感じられる。
そして、惣介たちに家庭内の悩みもあり。
隼人の妻・八重がやっと子宝に恵まれ、無事に赤子を産み落としたが、双子だったために悶着になる。
この姑の要らん発言 -
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第11代将軍・家斉の食事を作る「お広敷御膳所台所人」、ぽっちゃり癒し系の鮎川惣介のシリーズ第五弾。
「春の絆」の春は、新春のこと。
以前、勝手に早退したと上司の長尾に叱られ、大晦日も元日もシフトを入れられた惣介が、さらに事件に巻き込まれる。
血生臭い事件も起きるが、出汁の匂いが立ち込める江戸城の台所や、惣介の自宅で作られる料理の描写はとても美味しそうで、食べ物のことが書かれている場面は血の匂いも忘れ、登場人物たちも幸せそうである。
今ある和食がほとんど江戸時代に確立していることを考えると、色々美味しいものがあったのだろうなと思う。
江戸の神社の行事はともかく、あまり知られる機会のない大奥の -
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江戸城の台所人、ぽっちゃり系の鮎川惣介のシリーズ三作目。
前作のラストがどうもすっきりしない気分だったが、「まだ終わっていない」という事だったのだ。
それにしても、大奥というものは日本史上、他に例を見ない恐ろしい場所である。
一度入ったら出られぬ牢獄。
常識が変。
重力も変なんじゃないか?
人の命が「栄達」の前には雪虫くらいに軽いのだ。
出世の為という理由は、人を殺める罪悪感に対してよく効く麻酔薬なのか。
しかし、隼人や大鷹の方も、よく斬る。
侍の常識も、庶民の感覚とは程遠い。
今回の件は決着したが、このような人物が十人二十人と現れたら徳川の御代(みよ)も終わるやもしれん、という隼人の予感 -
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江戸城の台所人・鮎川惣介のシリーズ二作目。
今回から颯爽と登場したのは、惣介が一連の事件の黒幕ではないかと疑っている、寺社奉行・水野和泉守その人に仕える、大鷹源吾(おおたか げんご)
もしかしたら敵サイドかもしれないのに、誠に爽やかなイケメンで、惣介は気に入る。
知らずに新シリーズの一巻を先に読んでしまったので、個人的にネタバレ侍(笑)
今回も、鮎川家のちょっとした夫婦喧嘩から始まるが、豆狸みたいなご夫妻は、喧嘩の内容も可愛らしい。
それに対し、惣介の幼馴染で、大奥の添え番(警護)として働く片桐隼人(かたぎり はやと)夫妻の夫婦喧嘩は、美男美女ゆえということでも無いだろうが、少し深刻である。 -
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<新包丁人侍事件帖>シリーズ完結編。思いがけず早く回ってきたため、再読が全く追いつかないまま読む。
このシリーズは<包丁人侍事件帖>シリーズが七作、<新包丁人侍事件帖>シリーズが四作ある。時間的には四年ほどの話だが、シリーズ初期の作品を読んだ後にこの完結編を読むと色々感慨深いものがある。
まずは主人公の台所人・鮎川惣介の子どもたち。
初期作品ではだらしないほど身なりに構わない鈴菜が落ち着き、医師の道を目指すべく曲亭馬琴の息子・宗伯に弟子入りし勉強している。口の方は相変わらずだが大鷹源吾との出会いで娘らしさが出てきたようだ。
そしてもう一人、惣介以上の口達者の小一郎。初期作品では父・惣介の台所