小早川涼のレビュー一覧
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文化3年(1820)十一代将軍家斉の世。
江戸城の料理人・鮎川惣介は、丸顔で人がよい。
夫婦になって十五年、二人の子供がいる妻とは他愛もない夫婦げんかをしている。
惣介は天性の鋭い嗅覚を持つ。
四十人いる料理番の一人だったのだが、将軍・家斉に気に入られ、直で会うことが出来る稀な立場になる。
「台所人に身をやつしたお庭番」などと囁かれるが…
あたたかいお汁や、煎り立ての黒豆、その場で淹れる宇治の青茶など、お毒味の後の冷め切った料理ばかりではさぞつまらないでしょうから、こっそり、こんな差し入れが貰えたとしたら楽しかったでしょうね。
当時、将軍はあまり評判の良くなかったような。
しかも、家斉は、跡 -
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人並み外れた嗅覚を持つ江戸城台所人・鮎川惣介と、剣の達人で大奥添番・片桐隼人の幼馴染みコンビが様々な事件に挑む〈新包丁人侍事件帖〉シリーズ第三作。旧シリーズから数えれば第十作になる。
前作は江戸が大雨に襲われた話だったが、今回は一転火事、それも付け火の話。
度々付け火による火事に江戸が襲われる中、火消し同士の大喧嘩まで起きて職人の男が死んだ。喧嘩とは無縁の男の死を不審に思う幼馴染みの町火消から頼まれて、事件の真相を探ることになった惣介と隼人。
だが事は火付けだけでなく贋金作りにも絡んでいて…。
第一話と第二話は一連の話。
付け火の犯人を追う中で、様々な怪しい人物に出会う。人目を避ける者とい -
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人並み外れた嗅覚を持つ江戸城台所人・鮎川惣介と剣の達人の大奥添番・片桐隼人の幼馴染みコンビが様々な事件に挑む〈新包丁人侍事件帖〉シリーズ第二作。
〈包丁人侍事件帖〉シリーズから数えれば第九作になる。
「半夏水(はんげすい)」
豪雨の中、姿を消したイギリス人・末沢主水。かつて彼が在籍していた天文屋敷に向かったかと思われたが来ていないと言われる。調べると金貸しをしていた隠居老女の拐かしに巻き込まれたようで…。
豪雨が収まるように願掛けした隼人が封印したのが親バカというのがコミカル。主水の人の好さが光る。しかし一番印象的なのは老女。こんな目に遭っても口が減らないのだから世話ない。
「大奥、願掛 -
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江戸城の台所人・鮎川惣介と大奥添番・片桐隼人の幼なじみコンビが様々な事件に挑むシリーズ第五作。
学研M文庫版で読んだはずだが既読感がないので新鮮な気持ちで読めた。
前作のゴタゴタで仕事を早引けした代わりに大晦日と元日の当番を言い渡された惣介。
今回はその大晦日の帰宅途中、惣介と隼人が殺人事件に遭遇することから始まる。
またもや陰鬱になるような真実に行き当たるのか…とハラハラしたが、被害者は誰もが口を揃えて指摘する嫌な人物だった。
もちろん嫌な人物だからと言って殺して良いというわけではないが、被害者の嫌がらせで自殺に追いやられた者もいるほどで、喪主自ら殺されて良かったと言われてしまう人物もなか -
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江戸城の台所人・鮎川惣介と大奥添番・片桐隼人の幼なじみコンビが様々な事件に挑むシリーズ第四作。
台所人の一番の腕の見せ所「八朔祝」の日に非番を言い渡されショックを受けた上に当日は家でも外でも散々な一日となった惣介。
それでも麦作という男と出会い、訳ありげながらも下男として雇ってみれば働き者で妻はご機嫌、息子・小一郎は懐き、ホッとしていたのだが…。
麦作が「倅によく似てる」と気に掛けている若者は…ねずみ小僧?
「池袋村生まれの女は奉公に来ると祟りを引き起こす」という都市伝説のような話で奉公先を追い出された少女なみは本当に祟りを引き起こしたのか?
大奥の井戸から血が混ざった水が出てくるようにな -
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江戸城の台所人で人並み外れた嗅覚を持つ鮎川惣介と、幼馴染で大奥添番で剣の達人・片桐隼人が大奥を舞台にした様々な事件に挑むシリーズ第三作。
第一話「稲荷寿司異聞」
万病に効くと噂の稲荷寿司を調べると阿芙蓉(阿片)が混ぜられていた。
一方大奥では将軍・家斉の側室・お美代の方の部屋方・千登勢が殺されたという。
第二話「四谷の物の怪」
惣介の娘・鈴菜の友人・香乃の家<美濃屋>が新築した家で夜な夜な幽霊が出るという。
一方、殺されたはずの千登勢がお茶屋で働いているのを惣介が見つけ…。
第三話「下総中山子守り唄」
将軍・家斉の召し出しの場で思いもかけず側室・お美代の方に頼まれごとをされてしまった惣介 -
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江戸城の台所人・鮎川惣介が天性の鋭い嗅覚で様々な事件の謎解きに挑むシリーズ第一作。
久しぶりの再読だが、改めて読むと様々な発見があって面白い。
まず惣介も相棒の御広敷添番・片桐隼人も家庭内はギスギスしている。惣介の方は言いたいことを言い合っての喧嘩だけに救いがあるが、隼人の方はかなり重い。この時代、結婚して十年経っても子どもが生まれないというのは奥様にとってかなりの重圧だろうが、それだけではない疑心暗鬼を妻に対して抱えているようだ。
確か後の作品では好転していたように覚えているので、それを楽しみに見守る。
また上方から来た料理人・桜井雪之丞がこんな怪しい登場だったというのも忘れている部分だっ -
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ネタバレ『だいじの生類、いかようにもお探し申します』と看板を掲げて迷い犬や迷い猫を探す。
尾張弁がなおらない魁傑な女房千帆と息子千吉。
3人で暮らす長屋では主人公椎名貫太郎は武士の矜持など持たないおさんどんの日々。
何より他に仕事はなかった。
千帆には三行半を突きつけられる始末。
だったが、子犬の行方を探し事件を解決するに従い、
密偵などの知り合いも増えて、どうにか珍商売の運びとなる。
こうして、新商売が軌道にのると夫婦仲もしっくりくるようにもなり、自身も取り戻す。
が、相変わらず家庭第一のところは変わりがないようだ。
微笑ましい家族の風景と、マイホームパパの様相の主人公がナイスな設定で、楽しい