鈴木智のレビュー一覧
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終戦直後のラバウルでの話。主人公は霧島といい、戦うことより商社マンとして駆引きしたりする方が好き。英語が堪能。暴動が起きそうな噂あるので、調べて止めて欲しいのと、忠臣蔵を皆で演じようとしているのを取り持って欲しいという二つの命題を与えられ、ラバウル第九収容所に行かされる。なので、話は誰がどうやって暴動を起こそうとしているのか、という推理仕立ての面と、近しい人たちが日本兵に殺されたという恨みを抱えた豪州兵(管理側)との折衝や、戦争が終わって劇や舞台を作る喜びを感じているドラマチックな面の両方で進みます。戦時中にラバウルの置かれた特異的な側面に加え、主人公霧島が抱える戦争中の塊根も話の流れに強さを与え、かなり面白く読みました。終戦ものと感じられない読み心地の良さです。
ラバウルで忠臣蔵が演じられたのは事実らしく、そこにいた水木しげるさんなども本文中に少し出てきます。戦争は壊したり殺したりして勝者を決めますが、作り守る方が圧倒的に尊い事だと感じさせられました。
回想などで戦争のシーンもあり、基本は中学校から。早熟小学生個人渡しなら大丈夫です。 -
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ネタバレ終戦直後、日本国内でも禁止された舞台「忠臣蔵」。それがなぜ、ラバウルの収容所にて上演されることになったのか。
驚いたのが、これが事実をもとに作られた物語であること。
そこにあるのは『日本人とはどうあるべきか』という永遠の問い。ある者は誇りをもち、ある者は縛られ、先の見えない状況の中で自分なりの正義を貫く登場人物たち。
そして、敵だったはずの豪軍の兵士たちとの心の交流。興味の持ち方は歪だったかもしれないけれど、そこには歩み寄りがあり、知れば知るほど葛藤や後悔が生まれるという気持ちの変化が見事でした。
いつの時代もそうなのかもしれませんが、戦争を始める人たちは実際に戦場に立つことはほとんどありません。前線の兵士たちは、自分の意思で戦争を始めるわけでも続けるわけでもなく消費されていきます。
戦争という極限状態の中で、捕虜になるのは恥、名誉ある死を、という日本軍の流れは狂気以外の何ものでもないと思っています。ノーと言えない集団圧力の中で『生きる』ということがこれほど難しかった時代があったことを忘れてはならないと思います。
すぐ隣に『死』が立っているような、絶望と隣り合わせの状況の中で、できることをやって『生きよう』とした、日本人の逞しさを感じることができる物語でした。
日本人は強い。ゼロから再生することができる強さを持っている、という希望を持たせてくれる本でした。 -
Posted by ブクログ
[こんな人におすすめ]
*戦争に関するドキュメンタリーや報道を観るべきだとは思うけれど、暗くて気が進まない人
戦争を扱った本の中ではトップクラスに読みやすく、最初の一冊としておすすめです。戦争の話だけでなく、ミステリー要素や、かつて敵国だった人との友情といった人間ドラマもふんだんに盛り込まれており、飽きずに読み進められる可能性が高いです。
フィクションと言ってしまえばそれまでですが、80年前に戦争が終わったこと、ラバウルで亡くなった人、そして生きて日本に帰ってきた人がいたことは事実です。戦争を知り、今の時代を考えるうえで、学ぶことの多い一冊だと思います。
[こんな人は次の機会に]
*秀逸な文体や、一見無駄に感じる描写も含めて楽しみたい人
場面の一つ一つ、時代・戦争について説明する部分のどこを切り取っても無駄な描写がなく、スマートさを感じさせる小説です。一方、文学的表現や、作家の癖や愛おしさを感じる場面は少ないです。「時代背景の説明が長すぎる。もう少し削ったほうがよかったのでは……取材したことを全部書きたかったのかしら、困った作者ね」とニヤニヤしながら読むタイプの人には、少し物足りないかもしれません。 -
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水木しげるさんも出征したパプアニューギニアのラバウル。ここの日本人捕虜収容所で演じられた忠臣蔵。これが、まさかの実話ベースということに驚いてしまった。
終戦と突然言われても、極限で戦っていた兵士達がすぐに平常になれるわけではない。捕虜となり、生きるか死ぬかの世界で、なぜ忠臣蔵?となるのだけど、上演されるまでの経緯や準備段階の様子などを知るうちに、少しずつ元兵士達の気持ちが理解出来た気がする。
脚本家だった鈴木智さんが、脚本だけでは映画化は難しいと、28年もの年月をかけて書いたこの小説。
これは、もう映画化されるってことですよね?
その時は絶対観に行こうと思う。
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Posted by ブクログ
第二次世界大戦直後、日本軍最大の前進基地ニューブリテン島のラバウル基地には、10万人の日本兵が捕虜として9つの収容所に収容されていた。
その中の「第九収容所」で密かに暴動の噂が広まり、元商社マンの能力や英語力を買われた霧島中尉に、暴動計画の真偽を探り、計画を阻止する密命が下される。
任務に赴いた霧島は、待ち受けていた元上官の永峰中佐から、捕虜による「忠臣蔵」の芝居上演を提示され、収容所を支配する豪軍への交渉を命じられる。
「忠臣蔵」は、忠君愛国の精神や教育と結びつき、戦前には高い人気を博していたが、敗戦後、GHQから禁止されていた演目だった。
霧島は、暴動を未然に防ぎ、日本兵を早期帰還させるため、豪軍との交渉を進めるが、永峰の真意や誰が暴動を計画しているかの見極めに苦悩する。
当初、忠臣蔵の芝居上演が暴動のきっかけにならないか悩んだ霧島だが、舞台作りや演劇にかける兵士の一途な心情を知るにつれ、上演実現に向けて動こうと決意する。
忠臣蔵上演を言い出した元新国劇役者・神崎、マラリアに罹り瀕死の状態にありながら、舞台作りへの情熱で蘇る元美大生の沢井、全滅部隊の生き残りの秋草ら様々な兵士が登場し、物語をヒューマンなものとして盛り上げる。
特攻隊など自害を厭わない日本人を研究するウィリアム豪軍中尉と霧島の間で芽生える絆も、読ませどころだ。
敗戦で目標を失い、緩んでしまった日本兵が、上演が決まると、活気づき、おのおのの技術と職人芸を懸命に発揮しようとする。
その場面が感動的に描かれる中、暴動を匂わせる不穏な動きもあるスリリングな展開。
脚本家らしい描き方で、エンターテイメントとして、十分楽しめるが、実話をベースに、自死を選ばず、捕虜になったことを恥とする日本の軍国精神が底流にあり、骨太の要素も兼ね備えている。
映画化を期待したい作品である。 -
Posted by ブクログ
いわゆるドローン、正確にはクアッドコプターを、これから自作で始めるにあたって適した内容だと思います。私はwebの情報を参考に、px4ベースのクアッドを制作して活用してますが、事前に本書を読んでおけば多少は楽に飛ばせるところまで持って行けたかなと思います。あくまで多少はですが。
ドローンの概要から始まり、パーツの選定方法と組み立て、FCU, GCSやコンパニオンコンピュータ等の各システムの接続、そしてパラメータ調整まで、一連の手順が説明されており、ドローン制作において必要な情報をカバーしています。特に、トリムや姿勢(ヨー応答)、位置制御パラメータの調整法については、大変参考になりました。現状、px4のデフォルト設定で問題なく飛ばせているのであまり気にしていませんでしたが、自分でもやってみようと思います。ただし、書籍の弱点ではありますが、オートパイロットシステム等のアップデートに伴い、記載されている情報はすぐに陳腐化するので、結局自分で調べないといけない部分はあると思います。
また一方で、ドローンの制御理論の解説については非常に物足りない内容になっています。ドローンの位置姿勢を推定するための拡張カルマンフィルタ、および姿勢のフィードバック制御について、いくつかの式に基づいて簡単に説明されているのみとなっています。制御理論について学びたい場合は、本書の説明で概略を知り、別途専門書での学習を想定されているようです。フライトコントローラのコードについても、ardupilotでの処理の概略を示すにとどめています。
総合して、本書はクアッドコプター自作入門者向けの情報をまとめたものとして、非常にとっつきやすく役にたつ実用書だと思います。