あらすじ
〈戦後最大の“捕虜収容所×忠臣蔵”サスペンス〉
終戦直後、ラバウル。
10万の日本兵がひしめく捕虜収容所で、元情報将校に下された密命はただ一つ――「禁じられた忠臣蔵を上演せよ」。
暴動の火種がくすぶる舞台に、紙の雪は降るのか。
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【読みどころ】
●実在した〈ラバウル捕虜収容所での忠臣蔵上演〉がモデルの歴史サスペンス。
●ジャングルに舞う“雪”が暴く、戦争VS芸術の衝突。
●密林の奥と、地下迷路に封印された〈戦中の極秘事件〉――衝撃の真相ミステリー。
●かつて殺し合った日本兵と豪州軍人。そこに芽生える、希望の絆。
●戦後80年、日本人の「生き方」を問う壮絶なスペクタクル。
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【推薦コメント】
「手に汗握る反乱劇。映画化を熱望!」
――鴻上尚史(作家・演出家)
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「異色の舞台と題材、謎を呼ぶストーリー、熱い人間ドラマ。
どれもが面白く、読みどころが多すぎる」
――細谷正充(文芸評論家・アンソロジスト)
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戦争が終わった時、いかに生きるかの戦いがはじまった。
エンターテインメントで描く〈慟哭〉と〈感動〉の物語。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
終戦直後、日本国内でも禁止された舞台「忠臣蔵」。それがなぜ、ラバウルの収容所にて上演されることになったのか。
驚いたのが、これが事実をもとに作られた物語であること。
そこにあるのは『日本人とはどうあるべきか』という永遠の問い。ある者は誇りをもち、ある者は縛られ、先の見えない状況の中で自分なりの正義を貫く登場人物たち。
そして、敵だったはずの豪軍の兵士たちとの心の交流。興味の持ち方は歪だったかもしれないけれど、そこには歩み寄りがあり、知れば知るほど葛藤や後悔が生まれるという気持ちの変化が見事でした。
いつの時代もそうなのかもしれませんが、戦争を始める人たちは実際に戦場に立つことはほとんどありません。前線の兵士たちは、自分の意思で戦争を始めるわけでも続けるわけでもなく消費されていきます。
戦争という極限状態の中で、捕虜になるのは恥、名誉ある死を、という日本軍の流れは狂気以外の何ものでもないと思っています。ノーと言えない集団圧力の中で『生きる』ということがこれほど難しかった時代があったことを忘れてはならないと思います。
すぐ隣に『死』が立っているような、絶望と隣り合わせの状況の中で、できることをやって『生きよう』とした、日本人の逞しさを感じることができる物語でした。
日本人は強い。ゼロから再生することができる強さを持っている、という希望を持たせてくれる本でした。
Posted by ブクログ
ページをめくる手が止まらなかった。基本的には冒険小説だが、日本人の再生の物語でもあり、誇りとは何かの物語でもある。いろいんな読み方が出来ると思う。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦直後、日本軍最大の前進基地ニューブリテン島のラバウル基地には、10万人の日本兵が捕虜として9つの収容所に収容されていた。
その中の「第九収容所」で密かに暴動の噂が広まり、元商社マンの能力や英語力を買われた霧島中尉に、暴動計画の真偽を探り、計画を阻止する密命が下される。
任務に赴いた霧島は、待ち受けていた元上官の永峰中佐から、捕虜による「忠臣蔵」の芝居上演を提示され、収容所を支配する豪軍への交渉を命じられる。
「忠臣蔵」は、忠君愛国の精神や教育と結びつき、戦前には高い人気を博していたが、敗戦後、GHQから禁止されていた演目だった。
霧島は、暴動を未然に防ぎ、日本兵を早期帰還させるため、豪軍との交渉を進めるが、永峰の真意や誰が暴動を計画しているかの見極めに苦悩する。
当初、忠臣蔵の芝居上演が暴動のきっかけにならないか悩んだ霧島だが、舞台作りや演劇にかける兵士の一途な心情を知るにつれ、上演実現に向けて動こうと決意する。
忠臣蔵上演を言い出した元新国劇役者・神崎、マラリアに罹り瀕死の状態にありながら、舞台作りへの情熱で蘇る元美大生の沢井、全滅部隊の生き残りの秋草ら様々な兵士が登場し、物語をヒューマンなものとして盛り上げる。
特攻隊など自害を厭わない日本人を研究するウィリアム豪軍中尉と霧島の間で芽生える絆も、読ませどころだ。
敗戦で目標を失い、緩んでしまった日本兵が、上演が決まると、活気づき、おのおのの技術と職人芸を懸命に発揮しようとする。
その場面が感動的に描かれる中、暴動を匂わせる不穏な動きもあるスリリングな展開。
脚本家らしい描き方で、エンターテイメントとして、十分楽しめるが、実話をベースに、自死を選ばず、捕虜になったことを恥とする日本の軍国精神が底流にあり、骨太の要素も兼ね備えている。
映画化を期待したい作品である。