倉狩聡のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
お食事小説のようなあたたかな食卓を想像させるタイトル。
しかし本書を読んで食欲が刺激されることはない。むしろ衰退してしまう。
『かにみそ』という美味しそうな言葉の響きにみごとに引っ掛かってしまった。
物語は流星群の翌朝、無気力で20代無職の「私」は海岸で小さな蟹を拾う。
しかしその蟹は普通とはかけ離れていた。
奇妙で楽しい暮らしの中、「私」は職場でできた彼女を衝動的に殺害してしまう。
「蟹…これ食べるかな?」
蟹「じゃあ遠慮なく」
何か友達にお菓子食べる?くらいの軽いノリなんだよね。この軽いノリがなぜか怖い。
なんでたろう?
おそらく「私」も蟹も罪悪感がないから。
子供が遊び半分で虫の脚 -
Posted by ブクログ
定職に就かず実家暮らしをする20代男性が主人公。
ある日海で蟹を見つけて、家で飼うことにするが、何とその蟹は言葉を話すことができた。
主人公はある日衝動的に彼女を殺してしまう。
主人公は思う。「蟹、食べるかな、これ」
蟹「じゃ、遠慮なく」
といったあらすじ。
表紙、タイトルがインパクト大。
序盤は蟹が話すことや捕食シーンなどが淡々と特別感もなく描かれていて、不思議な気持ちになりました。
蟹が人を食べますが、わたしたち人間も魚や動物、野菜などの命をいただきます。
蟹からみれば、人間も罪深きもの。
様々な命をいただき生きている命なので、意味ある人生にしなければいけないと思いました。 -
Posted by ブクログ
おすすめの小説だというのを見て買った一冊。
かにの話と百合の話の2つの話の小説だった。
蟹の話は、クソみたいな青年が、拾った蟹を育てて行くにつれて、まともっぽい人間に成長していく話だった。
蟹は友達は食べないと言っていたが、青年は友達を食べてしまう。
なんかいい話みたいな感じで話は終わったが、重大な問題が残ってるんじゃないか?と感じた話だっだった。
百合の話は母親の愛情を知らない青年が、ふらっと現れた女性を母親じゃないかと思いながら接する話だった。
こちらの話はいい感じで終えた話だった。
喋る蟹に百合。
それらに触れて他人が成長していくいい話だと思うが、現実離れしていてマンガみ -
Posted by ブクログ
【購入きっかけ】
「短編 ホラー」で検索すると上位にヒットするので購入。
【感想】
表題作「かにみそ」は面白かった。
主人公と蟹の対比がいい。死んだ人間をただの食糧とみなす蟹に対し、主人公ははじめこそ蟹が人間を食べる様子を楽しんでいたが、やがて罪悪感に苛まれ、このままではいけないと思う。また、蟹は主人公を「友達」だといい友達はぜったいに食べないと誓う。一方、主人公は蟹を食べてしまいたいと思うようになる……。
ハンターハンターのキメラアント編よろしく、「けっきょく一番怖いのは人間ですよ」っていうオチなわけだけど、これはホラーなのか?と言われると結構微妙な気がする。個人的には蟹との友情と別れを描 -
Posted by ブクログ
角川ホラー文庫から出版され、2013年の日本ホラー小説大賞、優秀賞受賞作品。食事をして人語を解す不思議な蟹との泣けるホラー!と、銘打たれていたのでそういえばホラー小説ってあんまり読んだことないな(乙一の「夏と花火と私の死体」くらいかな)、どんなんだろう、と思って読んだんですが、これはもはや純愛小説ではないかと。
何事に対しても無気力で流されるように漠然と生きていた主人公が、偶然浜辺で出会った蟹ちゃんとの生活の中でどんどんと変わっていく、そんな主人公の成長もありつつ、もうとにかく蟹ちゃんが可愛い。まじで。本当に蟹ちゃんが可愛すぎて、終盤の主人公の気持ちとシンクロしてしまう。そんな苦しさもあり