あらすじ
全てに無気力な私が拾った小さな蟹。何でも食べるそれは、頭が良く、人語も解する。食事を与え、蟹と喋る日常。そんなある日、私は恋人の女を殺してしまうが……。私と不思議な蟹との、奇妙で切ない泣けるホラー。
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Posted by ブクログ
タイトルと可愛い装丁からは予想もつかない、まさかのホラー。触れ込みでは「泣けるホラー」とも書かれていて、気になって手に取った。
蟹と私のポップな会話がめちゃくちゃ面白い。あらゆるものを食べ、音楽やテレビを楽しみ、大きさを自在に操る蟹。人間の味を覚えた蟹は一人で家を抜け出し、人間を捕食する。主人公を食べない理由を尋ねると「親友だから」。蟹との関係、人間としての道徳心、色々なものに揺れる主人公は最後にある決断をする。いや〜泣けるよこれは。マンガ的設定なのに、バカバカしさが気にならなくなり、二人の友情物語を楽しく読んだ。
あらすじ
主人公は、無気力で無職の私。
ある日、浜辺で蟹を見つける。観察していると砂を食べて、栄養を吸収し、要らなくなったものをだんご状にしていた。
目で追っていると急に蟹の動きがぴたりと止まり、目が合っているような感覚に。観察しているはずが、相手も私を観察している。
手を差し伸べても逃げない、撫でても逃げない、手を差し伸べてみると掌に乗った。
それから私と蟹の暮らしが始まる。
私の方に向けてハサミを振ってくる蟹。欲しいのか、と思い食べていた魚肉ソーセージをあげると貪った。鶏ももをあげると喜んで食べた。雑食の蟹は二ヶ月もするとかなり大きくなった。私は蟹の旺盛な食欲を満たすため、派遣の仕事を始めていた。
私は、職場で出来た彼女を衝動的に殺してしまう。そしてふと思いついた。
「蟹……食べるかな、これ」。
すると蟹は言った。
「じゃ、遠慮なく……」
Posted by ブクログ
日本ホラー小説大賞も受賞し「泣けるホラー」として有名になった小説、かにみそ。
2つの話がはいっていて、ひとつは何でも食べ喋るカニのお話。もう1つは人を誘いこむ百合の花のお話。
どちらも共通しているのは人の弱い心と、その葛藤。そして決断。
個人的には百合の話が好きで、両親が死んだ後に知らない女の人が家にきて共同生活する大学生の男の子の
話です。百合は多少の言葉をはなし、甘く彼らを誘います。百合は町中に広がり、また無気力になる人が増えていき…
百合から得られるもの、失うものを描いたミステリアスな内容で、めちゃ引き込まれました。
変わったホラーを味わいたい人はすぐに読んで欲しい1冊です!
Posted by ブクログ
かにみそ
たった100項と少しのお話、だけど
気付けば蟹の魅力に惹かれ 蟹が好きになっていた
ずるいよ、こんなに可愛いなんて
苦しかった。怖いだとか、グロテスクだとか。そんな言葉では表現できない作品である。言葉に詰まる。なんと言えばいいのかわからなくなってしまいそう。
殺すも、殺されるも、どちらも愛かもしれない
終わりなんて来てほしくなかった、逃げてほしかった
例え世界の理からは外れていたとしても、罪だとしても。それでも生きていて欲しかった
魅力的すぎるんだよねぇ、蟹さん。大好き。
ぜんぶ食べて。おまえに食べられるなら、悪くない。
だってこのままじゃいられないからさ。
生きることは食べることだよ。そうでしょ?
Posted by ブクログ
蟹が出てきます・・・。怖い蟹です(;'∀')
考えられないような動きをする蟹に恐怖を覚えました・・・。作中の表現にとてもリアリティがあり、想像できるのがより一層怖く感じさせる作品だと感じました
Posted by ブクログ
蟹が人間を食べる話。
かなりグロい話かと思いきや、
蟹の人柄(なにそれww)が良くて
何だか可愛くて普通に読み進められた。
最後・・・切ない!
個人的には書下ろし併録の中編
「百合の火葬」
の方が好き。
こちらは植物である百合の花が人間を惑わす話。
どちらも素晴らしい話だった!
自作の「いぬの日」も期待ができそう。
Posted by ブクログ
かにみそ面白いです‼‼ 蟹の話し方は大人みたいだけど(自分的にば)蟹との会話を読んでいるとなんだかほっこりしますε-(´∀`*)ホッまるで自分が5歳児と会話をしているような、、、百合の火葬という話も収録されており満足感倍増!!!オススメですのでぜひ!!! 面白い小説を探している方やお金に余裕のある方! ぜひ買ってみてください!!!! あっ これホラー文庫ですよ
Posted by ブクログ
とても面白かったです。
切なくなるホラーでした。
体の大きさを自在に変えて、人を食べる、喋る蟹と主人公の日々「かにみそ」。
蟹めっちゃいいやつで、無気力な主人公がどんどん「生きよう」という方向へ変わっていくのが蟹のおかげというのが切なくて…
蟹との別れが悲しかったです。蟹が「体が必要としてるものってね、甘いんだよ」と言った通り、蟹はすごく甘かったんだろうな。
「百合の火葬」の方が怖かったです。
群生している白い百合と、その側で自失している人たちを想像するとゾッとします。
蟹は怒ってる人を食べたくなり、百合は悲しい記憶を吸う。
切ないけれど、とても好きな空気のお話でした。
「ねぇ、寒いとさみしいってきっと語源が一緒だよね」
Posted by ブクログ
「かにみそ」「百合の火葬」の二篇。
カニや百合の花が人を襲うという、モンスターパニック映画じみた設定。しかし、モモンスターパニック自体ではなく、モンスターを通じた心の交流を描いている内容に驚いた。
「かにみそ」では、友達(カニ)と悪事に興じるうちに、感受性に乏しい主人公が共感能力を取り戻し、悪友と決別しようとする過程が描かれている。
「百合の火葬」では、母親を知らない主人公・母親になりたい女性・子供のように無邪気な百合の花(ただし人を襲う)を通して、親子の情愛を描いている。
話の外見はホラーだけれども、内容を読むと異種生物を通した人と人との心の交流という部分に注力されているのが分かり、そうした部分をホラーというジャンルで描こうとしていることに大変驚いた。罪もない人が犠牲者になっていく部分は大変ホラーっぽかったけど。
Posted by ブクログ
人を食べる蟹が恐怖対象ではなく、愛着が湧くような性格をしている。かわいいと感じてしまうほどである。
ホラーという感じはあまりしない。
物語の終わりが近く感じるにつれ、もっとこの話を読んでいたい。終わって欲しくない。という気持ちが溢れた。蟹に情が湧いてしまった。
切ない。
蟹より主人公の人間の方が怖い。
蟹によって仕事をするようになり、人と接することの良さを知れたのは良かったと思う。
表題作の他に「百合の火葬」という作品も収録されている。幻想的な作品だった。
同じ流星群の降る世界が舞台という「いぬの日」も読みたくなった。
Posted by ブクログ
全てに無気力な無職の「私」は、ある日海岸で小さな蟹を拾う。その蟹は人の言葉を話し、体の割に何でも食べる。奇妙で楽しい暮らしの中、私は蟹の食事代のために働き始めた。しかし、ある日職場でできた彼女を衝動的に殺してしまう。
「蟹……食べるかな、これ」
人の言葉を解す蟹との不思議な暮らしを書いたホラー小説。再読した機会に感想追記します。
「色々と」食べてしまう蟹と交流を書いているのもあり、割と捕食シーンなど詳細に描写されています。グロテスクなのにどこか官能的。
食欲と性欲は深い関わりがあると言われているのも頷けます。
蟹と友情を育み、無気力感を埋めていった「私」と蟹のラストシーンは、ぽっかりとした喪失感が悲しくも力強くて良いです。
ホラー小説なのに、どこか文学味がある。
あと、とにかく蟹が可愛い。友達になりたいなっておもってしまう。でも人間食べるんだよねこの子……。
同時に収録されている『百合の火葬』も良作です。
息詰まるような百合の香りの中で起こる、怪異と成長と喪失の話。美しく息苦しい。
Posted by ブクログ
かにみそと百合の火葬の2本。かにみそが圧倒的に良かった。無気力な無職の青年が、不思議な蟹と交流することにより働くようになったり、ハートフルな展開が胸を打つ。まるで寄生獣のミギーじゃないか。そんな序盤から急にホラー方向へ舵を切るのも面白い。蟹と青年の友情も切ない。
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海辺で拾ったカニ。
食欲が止まらないカニは何でも食べてしまう。
昨晩衝動的に殺してしまった彼女も食べてくれないかな。。
ほっこり系の表紙とは裏腹に内容はグロい。
Posted by ブクログ
『かにみそ』『百合の火葬』の二本立て。
無気力な青年が海辺で拾った蟹と生活する『かにみそ』。
蟹はなんでも食べてどんどん成長するが肉を特に好んで食べ、人の言葉を話し、主人公と意気投合していた。
ある日主人公が恋人をうっかり殺してしまい、蟹にその死体を食べさせたところ蟹は人の味を気に入って、主人公と蟹はたびたび『狩り』へ出かけるようになった。
モンスターホラーだけど、蟹の人柄が憎めないせいでちょっとコメディの匂いがするし、ラストはちょっと感動してしまった。
『百合の火葬』は不気味に増殖し人を惑わせる百合の話。母性というものに恐ろしさと切なさを感じてしまう作品。
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どこか欠落した感情がある主人公が不思議な蟹と出会い奇妙な友情を育んでいく表題作『かにみそ』と、異常な成長をする百合の恐怖を扱った『百合の火葬』の二編が収録されていて、どちらもスプラッタだったりホラーだったりしつつもどこか物悲しさや切なさが入り交じった作品になっていた。
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これは大学生の時に読んだ作品ですね。人を殺した後、遺体はどう処理したら良いでしょうか? 蟹が食べてくれたら!?この作品、カニバリズムから来ているのでしょうか。 もう一度読んでみたくなりますね。 '2210/2 '2311/19
Posted by ブクログ
人語を話し大きくなって人を食うカニが登場。それだとホラーっぽいけど、主人公とカニの友情を中心に最後は切ないお話し。生きるために命を奪い食べるという、人が避けられない行動についても考えさせられます。
Posted by ブクログ
2話目の百合の火葬…子への愛、母への愛が沁みる話でした。自分の母親をちゃんと好きだって言えること、素敵です✨
かにみそもですが、そんなホラーな小説ではないです…切なさの方が勝ちます。
Posted by ブクログ
これもホラー特集。ホラー小説優秀賞を取ったからというより、どこかの書評で勧められていたから入手したものか。中編2作から成るけど、表題作が特に秀逸。カニとの不思議な友情も面白いし、あまりスプラッタを感じさせない描写も良い。最後のほろ苦い別れも含め、読まされる作品でした。これだけだったら満点でも良かった。もう片方の百合の話も、それなりに楽しめはするんだけど。
Posted by ブクログ
お食事小説のようなあたたかな食卓を想像させるタイトル。
しかし本書を読んで食欲が刺激されることはない。むしろ衰退してしまう。
『かにみそ』という美味しそうな言葉の響きにみごとに引っ掛かってしまった。
物語は流星群の翌朝、無気力で20代無職の「私」は海岸で小さな蟹を拾う。
しかしその蟹は普通とはかけ離れていた。
奇妙で楽しい暮らしの中、「私」は職場でできた彼女を衝動的に殺害してしまう。
「蟹…これ食べるかな?」
蟹「じゃあ遠慮なく」
何か友達にお菓子食べる?くらいの軽いノリなんだよね。この軽いノリがなぜか怖い。
なんでたろう?
おそらく「私」も蟹も罪悪感がないから。
子供が遊び半分で虫の脚や羽をちぎって殺すような感じかな。何か大切なものが欠けている。
もし自分だったら寝ている間に食べられやしないか怖くて寝てられないよ。
だけど物語の中にはさほど「おどろおどろしさ」は感じられないから不思議だ。
この蟹仕草や言動が可愛らしいところがあり、人懐っこくて何か憎めない奴なんだよね。
そのギャップがまた面白いのかも。
極めつけは感動(?)のラストシーン!
蟹がある意味で究極の「おもてなし」をする。
これも愛なのか?
「今までありがとう。元気出せよ」と言わんばかりだ。
最後主人公の「私」はどうなったのか?重い十字架を背負ったのは確かだ。
しばらくは蟹はやめておこう…
そんな読後感だ!
Posted by ブクログ
定職に就かず実家暮らしをする20代男性が主人公。
ある日海で蟹を見つけて、家で飼うことにするが、何とその蟹は言葉を話すことができた。
主人公はある日衝動的に彼女を殺してしまう。
主人公は思う。「蟹、食べるかな、これ」
蟹「じゃ、遠慮なく」
といったあらすじ。
表紙、タイトルがインパクト大。
序盤は蟹が話すことや捕食シーンなどが淡々と特別感もなく描かれていて、不思議な気持ちになりました。
蟹が人を食べますが、わたしたち人間も魚や動物、野菜などの命をいただきます。
蟹からみれば、人間も罪深きもの。
様々な命をいただき生きている命なので、意味ある人生にしなければいけないと思いました。
Posted by ブクログ
ずっと気になっていた一冊。なかなか見つからないのでネットで購入。
「泣けるホラー」というけれど、泣けないし全然怖くない。でも蟹はとても可愛い。
水槽を空けるために今飼ってる熱帯魚を窓からぶちまけて殺したり、散々罪を重ねておいて「え、今更?」ってタイミングで罪悪感に駆られる主人公の方がヤバい。「百合の火葬」はよくわからなかった。
Posted by ブクログ
ホラーというよりは筒井康隆のシュール小説っぽい。
猫を飼ってる人間としては、手の中に小さい命を預かることの恐ろしさみたいなものは身に覚えがあって、ラストシーンのしんどさはよくわかるつもりだけど……うーん、ホラーなんだろうか。
ホラー小説大賞ってことで手に取ったから、出会い方が悪かったかもね。
Posted by ブクログ
2本の小説が書かれた本。
どちらも愛情不足でそだった男性が主人公のお話。どんな関係にもいつか別れが来るということを教えてくれた。読み終わるとちょっぴり切なくなりました。
Posted by ブクログ
どんなものでも食べる、人語を話す蟹。主人公はそんな蟹を面白がり、飼い始める。
設定も面白いし、蟹のキャラクターも楽しかった。
一方、同書に収録されている『百合の火葬』は、気味の悪さが際立つホラーだった。
それぞれ毛色の違うホラーで、楽しく読むことができた。
Posted by ブクログ
おすすめの小説だというのを見て買った一冊。
かにの話と百合の話の2つの話の小説だった。
蟹の話は、クソみたいな青年が、拾った蟹を育てて行くにつれて、まともっぽい人間に成長していく話だった。
蟹は友達は食べないと言っていたが、青年は友達を食べてしまう。
なんかいい話みたいな感じで話は終わったが、重大な問題が残ってるんじゃないか?と感じた話だっだった。
百合の話は母親の愛情を知らない青年が、ふらっと現れた女性を母親じゃないかと思いながら接する話だった。
こちらの話はいい感じで終えた話だった。
喋る蟹に百合。
それらに触れて他人が成長していくいい話だと思うが、現実離れしていてマンガみたいな話だなとも思った小説でした。
Posted by ブクログ
【購入きっかけ】
「短編 ホラー」で検索すると上位にヒットするので購入。
【感想】
表題作「かにみそ」は面白かった。
主人公と蟹の対比がいい。死んだ人間をただの食糧とみなす蟹に対し、主人公ははじめこそ蟹が人間を食べる様子を楽しんでいたが、やがて罪悪感に苛まれ、このままではいけないと思う。また、蟹は主人公を「友達」だといい友達はぜったいに食べないと誓う。一方、主人公は蟹を食べてしまいたいと思うようになる……。
ハンターハンターのキメラアント編よろしく、「けっきょく一番怖いのは人間ですよ」っていうオチなわけだけど、これはホラーなのか?と言われると結構微妙な気がする。個人的には蟹との友情と別れを描いたSFものという認識。
同時収録されている「百合の火葬」はちゃんとしたホラーだった。幻想的な雰囲気でなかなかよかったのだけど、話が冗長で退屈してしまった。
というわけで☆3つ。
【どういった人におすすめできるか】
今晩の夕食が蟹鍋の人。
Posted by ブクログ
角川ホラー文庫から出版され、2013年の日本ホラー小説大賞、優秀賞受賞作品。食事をして人語を解す不思議な蟹との泣けるホラー!と、銘打たれていたのでそういえばホラー小説ってあんまり読んだことないな(乙一の「夏と花火と私の死体」くらいかな)、どんなんだろう、と思って読んだんですが、これはもはや純愛小説ではないかと。
何事に対しても無気力で流されるように漠然と生きていた主人公が、偶然浜辺で出会った蟹ちゃんとの生活の中でどんどんと変わっていく、そんな主人公の成長もありつつ、もうとにかく蟹ちゃんが可愛い。まじで。本当に蟹ちゃんが可愛すぎて、終盤の主人公の気持ちとシンクロしてしまう。そんな苦しさもありつつ、読み終わった後にはどこか決意めいた余韻を残される、美しくて切ない純愛小説、という印象でした。
ただ、割と途中にグロテスク?な描写もあるので万人にはオススメできないなー残念。
一緒に収録されている「百合の火葬」、こっちは割とホラー寄りなのかな?まあホラー小説の定義がわからないので何ともいえないのですが!
しかし、この倉狩聡という作家、特殊な技巧を凝らした文章というわけではないのに兎にも角にも描写が上手い。どこかファンタジーめいた情景のはずなのに、匂いや質感も伴って想像ができる文章を書く。淡々としているのだけれど、不足しているわけでもなく、過剰でもない。上手いなーと思いながら読んでました。