倉狩聡のレビュー一覧
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タイトルと可愛い装丁からは予想もつかない、まさかのホラー。触れ込みでは「泣けるホラー」とも書かれていて、気になって手に取った。
蟹と私のポップな会話がめちゃくちゃ面白い。あらゆるものを食べ、音楽やテレビを楽しみ、大きさを自在に操る蟹。人間の味を覚えた蟹は一人で家を抜け出し、人間を捕食する。主人公を食べない理由を尋ねると「親友だから」。蟹との関係、人間としての道徳心、色々なものに揺れる主人公は最後にある決断をする。いや〜泣けるよこれは。マンガ的設定なのに、バカバカしさが気にならなくなり、二人の友情物語を楽しく読んだ。
あらすじ
主人公は、無気力で無職の私。
ある日、浜辺で蟹を見つける。観察し -
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日本ホラー小説大賞も受賞し「泣けるホラー」として有名になった小説、かにみそ。
2つの話がはいっていて、ひとつは何でも食べ喋るカニのお話。もう1つは人を誘いこむ百合の花のお話。
どちらも共通しているのは人の弱い心と、その葛藤。そして決断。
個人的には百合の話が好きで、両親が死んだ後に知らない女の人が家にきて共同生活する大学生の男の子の
話です。百合は多少の言葉をはなし、甘く彼らを誘います。百合は町中に広がり、また無気力になる人が増えていき…
百合から得られるもの、失うものを描いたミステリアスな内容で、めちゃ引き込まれました。
変わったホラーを味わいたい人はすぐに読んで欲しい1 -
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ネタバレかにみそ
たった100項と少しのお話、だけど
気付けば蟹の魅力に惹かれ 蟹が好きになっていた
ずるいよ、こんなに可愛いなんて
苦しかった。怖いだとか、グロテスクだとか。そんな言葉では表現できない作品である。言葉に詰まる。なんと言えばいいのかわからなくなってしまいそう。
殺すも、殺されるも、どちらも愛かもしれない
終わりなんて来てほしくなかった、逃げてほしかった
例え世界の理からは外れていたとしても、罪だとしても。それでも生きていて欲しかった
魅力的すぎるんだよねぇ、蟹さん。大好き。
ぜんぶ食べて。おまえに食べられるなら、悪くない。
だってこのままじゃいられないからさ。
生きることは食べる -
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ネタバレ強い啓発が込められた作品。
犬を飼っている人も、飼っていない人にもおすすめ。
いちばん読んでほしいと思うのは、『これから動物を飼おうと思っている人』。
私たち読者は、ヒメが最初からなにを求めてもがいているのかがわかる。分かったうえで、ソレから遠ざかっていってしまうヒメの残酷な運命を見守るしかないのだ。
ヒメの最期は切なさに胸が締め付けられるようだった。
飼い主から愛されなかったヒメと対照的なのが、ミコトとその飼い主・潤一少年だ。
出会った瞬間から、ずっと一緒。
お互いを唯一無二と思い合っている。一緒にいるだけで幸せ、そんなふたりだ。
印象に残るのは、人間側──潤一の愛情の深さで、彼は「ミ -
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ネタバレとても面白かったです。
切なくなるホラーでした。
体の大きさを自在に変えて、人を食べる、喋る蟹と主人公の日々「かにみそ」。
蟹めっちゃいいやつで、無気力な主人公がどんどん「生きよう」という方向へ変わっていくのが蟹のおかげというのが切なくて…
蟹との別れが悲しかったです。蟹が「体が必要としてるものってね、甘いんだよ」と言った通り、蟹はすごく甘かったんだろうな。
「百合の火葬」の方が怖かったです。
群生している白い百合と、その側で自失している人たちを想像するとゾッとします。
蟹は怒ってる人を食べたくなり、百合は悲しい記憶を吸う。
切ないけれど、とても好きな空気のお話でした。
「ねぇ、寒いとさみし -
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「かにみそ」「百合の火葬」の二篇。
カニや百合の花が人を襲うという、モンスターパニック映画じみた設定。しかし、モモンスターパニック自体ではなく、モンスターを通じた心の交流を描いている内容に驚いた。
「かにみそ」では、友達(カニ)と悪事に興じるうちに、感受性に乏しい主人公が共感能力を取り戻し、悪友と決別しようとする過程が描かれている。
「百合の火葬」では、母親を知らない主人公・母親になりたい女性・子供のように無邪気な百合の花(ただし人を襲う)を通して、親子の情愛を描いている。
話の外見はホラーだけれども、内容を読むと異種生物を通した人と人との心の交流という部分に注力されているのが分かり、そう -
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全てに無気力な無職の「私」は、ある日海岸で小さな蟹を拾う。その蟹は人の言葉を話し、体の割に何でも食べる。奇妙で楽しい暮らしの中、私は蟹の食事代のために働き始めた。しかし、ある日職場でできた彼女を衝動的に殺してしまう。
「蟹……食べるかな、これ」
人の言葉を解す蟹との不思議な暮らしを書いたホラー小説。再読した機会に感想追記します。
「色々と」食べてしまう蟹と交流を書いているのもあり、割と捕食シーンなど詳細に描写されています。グロテスクなのにどこか官能的。
食欲と性欲は深い関わりがあると言われているのも頷けます。
蟹と友情を育み、無気力感を埋めていった「私」と蟹のラストシーンは、ぽっかりとし -
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『かにみそ』『百合の火葬』の二本立て。
無気力な青年が海辺で拾った蟹と生活する『かにみそ』。
蟹はなんでも食べてどんどん成長するが肉を特に好んで食べ、人の言葉を話し、主人公と意気投合していた。
ある日主人公が恋人をうっかり殺してしまい、蟹にその死体を食べさせたところ蟹は人の味を気に入って、主人公と蟹はたびたび『狩り』へ出かけるようになった。
モンスターホラーだけど、蟹の人柄が憎めないせいでちょっとコメディの匂いがするし、ラストはちょっと感動してしまった。
『百合の火葬』は不気味に増殖し人を惑わせる百合の話。母性というものに恐ろしさと切なさを感じてしまう作品。 -
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300頁に満たない短い話なのに、この愛しさ、切なさと恐ろしさはどうだ。
ある日の流星群、不思議な石を舐めた犬のヒメ。彼女は人間の知性を身につけるが……。
喉元に刃を突きつけられた。
人は可愛い、癒される、といった理由から動物を飼うが、本当にそうだろうか。
彼らを道具として見ていないか? 自分の生活のアクセサリーとして見ていないか?
この問いかけは痛い。何より犬の口からその言葉が出ることにどう言い返せばいいのか、真剣に考えてしまった。
昨今のペットブームの陰で捨てられ、死んでいく動物は多いという。彼らは動物が居なくなったあとの家でのうのうと暮らすのだろうか。暮らせるのだろうか。己が捨てた「命」