山本紀夫のレビュー一覧
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サブタイトルは辛くて熱い「食卓革命」というように、唐辛子は世界の料理に新たな「革命」をもたらしたといっても過言ではない。唐辛子はもともと中南米原産だったのが、大航海時代にヨーロッパ人によっていろいろなところに伝わるようになった。
トウガラシ好きのチベット人と書かれているのを見てびっくりした。チベット料理に詳しくないが、それでも辛いものを好んで食べるイメージがなかったので意外だ。いろいろな料理にトウガラシを使っている。
トウガラシを食べることをアメリカのローズンという研究者の説明を引用している。唐辛子を食べるのはジェットコースターに乗るのと同じで、スリルと快楽を味わっているという趣旨のことを述べている。
一言でいえば、怖いもの見たさとやめられない止まらないだな。
トウガラシを手にした人類は、トウガラシの辛さを知ってしまいトウガラシから離れられなくなってしまった。 -
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ネタバレトウガラシが原産地の中南米から世界各地へどのように伝播していったか、そして各地ではどのように使用されているかをまとめた本。
おもしろかったのは、鳥以外の自然界の動物はトウガラシの辛みを恐れて寄り付かないが、鳥だけはトウガラシの辛みに無感覚で、平気でついばむので、必然的に広範囲に種をまくことができるようになっている。加えて、動物のフンに入っているトウガラシの種はほとんど発芽しないのに対して、鳥からのそれは発芽率が高い、という点だった。
また、野生種のトウガラシはその赤い実が空に向かって生るので、鳥に容易に発見してもらえるようになっている点も興味深い。
これらは、明らかにトウガラシが子孫繁栄のため、意図的に鳥を利用していると思われる。
やはり、植物にも知性があるとの説は本当だと思った箇所であった。
いずれにせよ、激辛好きには必読の書。 -
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トウガラシは中南米発祥の植物である。しかも欧州に伝わったのはコロンブス以降である。にも関わらず、わずか400年程度でほぼ世界中に広まり、その各所で日々の生活に欠かせない調味料もしくは食材として大きな顔をしている。その謎を開かす本。
なのだけど、伝搬についてまだまだ不明点が多いような、なんだか隔靴掻痒的な読後印象が残る。特に日本での使われ方について、胡椒とトウガラシを混同して呼んでいる時期があるにも関わらず「うどんに胡椒と書いてあるのでこのころはトウガラシを使っていなかったようだ」と書いていたりするのがなんだか根拠薄弱に感じた。面白い本なんだけどなあ。
あとは知らなかったことをトピック的に挙げておく。
・パプリカはハンガリーで作られた。ビタミンCはパプリカに非常に多く(オレンジやレモンの5倍以上)含まれ、単離に成功したのはパプリカからだった。
・中国料理ではトウガラシがあまり使われていない。四川料理の、しかもほんの一部だけ。「トウガラシを食べると病気になる」という偏見があったらしい(欧州でも新大陸の食べ物への偏見は強かったとか)。
・韓国では、秀吉の朝鮮出兵後ぐらいにトウガラシが伝わったらしいので日本から伝わった可能性が高い。一方日本では逆に朝鮮出兵のときに朝鮮からトウガラシが伝わったので「かうらい胡椒(貝原益軒「花譜」)」と呼ぶ、との話もある。どっちだ。 -
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ここ最近、インカ帝国物をいろいろと読んでみる中、今年刊行されたものだったので、新しい見解や発見に触れることができるのでは?と思い、読み始めた1冊。
タイトルには“その謎に挑む”とあり、勝手に“血沸き肉踊る”的な謎を知ることができるのかと期待していたが、民族学見地から長年アンデスの農業文化を研究されてきた著者だけあって、アンデス文明を支えた2大食物、ジャガイモととうもろこしに特化し、高度な農耕文化(高度な農業技術)-どうやら、これらが謎であるらしい-について、非常に丁寧に書かれている。
なるほど!と思うことも多かったが、専門家がまじめに書かれているので、やや教科書的な印象は否めない。
インカ帝国についてもっと知りたい!とか、ペルーに行くのでひととおりガイドブックを読んでみたけれど、もっと何か知りたい!という人には、必読の1冊。
インカ帝国についてまだ何の知識もないけど知りたい!という超初心者には全くおすすめできない1冊。超初心者なら、NHKの「失われた文明インカ」をおすすめ。 -
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古代文明といえば大河のほとりで生まれた四大文明だという通説を批判し、熱帯高地にも現代世界に大きな影響を及ぼした独自の文明が開化していたとして、アンデス、メキシコ、チベット、エチオピアという4つの地域に生まれ、発展した「高地文明」を紹介。
メキシコやアンデスにも独自の文明が発展していたという認識はあったが、四大文明と比肩するというような認識ではなく、また、チベットやエチオピアが独自の文明という認識もなかったので、本書の主張は新鮮だった。そして、それぞれの高地文明の具体的内容の紹介も興味深かった。
ただ、それぞれ、穀物生産を中心とする四大文明とは異なるいも類等による独自の安定的な食料生産が行われていたり、独特かつ高度な建造物、社会システム等が発達していたりと、文明といって過言ではないとは思ったものの、四大文明と比肩するかというと、時代の古さや規模等の点で疑問なしとはいえないと感じた。また、著者は民族学者ということもあり、現代の民族のフィールドワークの調査成果を安易に過去に投影しているなというきらいもあるなと感じた(自分は大学時代に歴史学を専攻していたこともあり、この点に違和感を覚えた)。
一方、本書で強く論駁されているが、主たる食料がいも類では文明は成り立たないといった説は妥当ではないとは感じた。著者が丁寧に論証するように、アンデス文明における主たる食料はトウモロコシではなくジャガイモという説には説得力があるし、チューニョのような加工によって、いも類でも保存性等の問題はクリアできると考えるからだ。
いずれにせよ、本書は、(古代)文明論への挑戦的な問題提起の書である。 -
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日本の歴史授業で教えられてきた四大文明説に、著者は疑問を呈する。若き日に探検地として訪れたアンデスの地に"文明"と呼び得るものがあったのではないかと考えたからである。
では、そもそも「文明とは何か」。論者により説はあるが、著者は、「効果的な食料生産」と「大きな人口」という条件に着目する。
そして、ここでのキーワードとなるのは、"ドメスティケーション"である。野生植物の栽培化、野生動物の家畜化という、人類によって行われた自然環境の改変である。環境の改変、新たな問題の発生、解決の探究、これらの繰り返しにより、文明が誕生し、発展したのではないかと、著者は考える。
また、度々の現地訪問を通しての実体験から、世界の中で、「高地文明」と呼べる文明があると著者は主張する。それが本書副題の、もう一つの「四大文明」の発見である。
メキシコのトウモロコシ、アンデスのジャガイモ、、チベットのチンコー(オオムギの一種)、エチオピアのテフ、これら主食となる農耕植物の栽培により農耕技術も発展し、大きな人口を支えることが可能になり、大都市が誕生したことを、様々な資料を基に論証していく。
高地というと厳しい環境をついつい連想してしまうが、実際の気象を数値で示されると決してそんなことはないこと、ドメスティケーションを補助線にすると、栽培植物、家畜について新しい見方ができることを教えられた。
著者の主たるフィールドであるアンデスの説明に比して、メキシコはやや薄く、チベット、エチオピアについては駆け足の記述なので、4つを高地文明と並列されてしまうと少し疑問は感じるが、興味を惹かれる大きな仮説であることは間違いない。
時に自説に対する疑問や批判に対して厳しい応答がなされるが、理系の人らしい明晰な文章で、たいへん読みやすい。
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案の定辛いものが食べたくなりました(笑
民族学者さんが、以前専攻していた植物学の知識を使いながら、トウガラシの性質や、それが世界各地でどう使われているかを纏めた本。
タイトルは「トウガラシの世界史」となっていますが、読後感としては「世界のトウガラシ」かなぁ。。(「○○の世界史」と題した本が中公新書から何冊か出ているので、それに合わせたせいか)
もともとトウガラシ自体は鳥向け(鳥は辛さを感じないとか!)に果実をつけていたという話や、大航海時代をきっかけに中南米から世界各地に広まった(トウガラシを使ったキムチも1700年代からのもの)という話など、興味深い話がちょこちょこ出てきます。口絵や本文中の写真・地図等が多いのも好感。
学者さんらしく誠実な物言いで書かれているのですが、トウガラシの伝来ルートの推測などはノンフィクション・ライターであればもうちょっと突っ込んで調べたり、ストーリー感を盛ってドラマチックに書けたりするだろうなぁと思ったので、ちょっと勿体ないなぁという感覚は持ちました。
とは言え、辛いものと本が好きなら読んで満足するのは間違いないのでは。終章のトウガラシから得られる栄養のくだりも良い読後感をもたらしてくれます。