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Posted by ブクログ
筆者はこの道数十年の研究者であり、とくにアンデスの古代文明についてフィールドワークと研究を重ねてきている。本書はその知見を存分に盛り込んだ意欲的かつ挑戦的な啓蒙書となっている。
著者は教科書にも記述されておなじみになっている大河を中心に生まれたとされる「四大文明」に大きな疑問を呈する。要約すれば、文明が生まれる条件として「大河」がある必要があるか、むしろ野性植物をドメスティケーションし、栽培作物として定着させ得たかどうかが重要なのではないかという疑問である。著者はそうした観点から熱帯、亜熱帯の高地(具体的に本書で取り上げられている、メキシコ、アンデス、チベット、エチオピア)が文明のセンターとして重要な役割をはたしてきたことを強調し、「高地文明」論を提唱する。
著者が繰り返し述べているように熱帯であっても高地は驚くほど過ごしやすい。確かに高山病などのリスクはあるが、それでも人間は順応してきた。標高が富士山並の3300mであるインカ帝国の首都・クスコなどもそうだ。現在でも30万人の大都市であるクスコがアンデス文明の中心地として栄えたことに多くの人が納得するだろう。
本書を読んでいて昔読んだ中尾佐助の『栽培食物と農耕の起源』を思い出した。中尾氏のこの名著はアジア中心で佐々木高明氏らとともに提唱された「照葉樹林文化論」の基本的文献だが、山本氏の本書はそのフィールドを南米やアフリカにまで拡げていったものとしても読める。とくにアンデスにおけるイモの役割の重要性を述べた部分は圧巻である。アンデスについてはとくに2章分が割かれて詳述されている。
しかし「四大文明」の発案者?提唱者?が騎馬民族説の江上波夫だったとは知らなかった。
Posted by ブクログ
古代文明といえば大河のほとりで生まれた四大文明だという通説を批判し、熱帯高地にも現代世界に大きな影響を及ぼした独自の文明が開化していたとして、アンデス、メキシコ、チベット、エチオピアという4つの地域に生まれ、発展した「高地文明」を紹介。
メキシコやアンデスにも独自の文明が発展していたという認識はあったが、四大文明と比肩するというような認識ではなく、また、チベットやエチオピアが独自の文明という認識もなかったので、本書の主張は新鮮だった。そして、それぞれの高地文明の具体的内容の紹介も興味深かった。
ただ、それぞれ、穀物生産を中心とする四大文明とは異なるいも類等による独自の安定的な食料生産が行われていたり、独特かつ高度な建造物、社会システム等が発達していたりと、文明といって過言ではないとは思ったものの、四大文明と比肩するかというと、時代の古さや規模等の点で疑問なしとはいえないと感じた。また、著者は民族学者ということもあり、現代の民族のフィールドワークの調査成果を安易に過去に投影しているなというきらいもあるなと感じた(自分は大学時代に歴史学を専攻していたこともあり、この点に違和感を覚えた)。
一方、本書で強く論駁されているが、主たる食料がいも類では文明は成り立たないといった説は妥当ではないとは感じた。著者が丁寧に論証するように、アンデス文明における主たる食料はトウモロコシではなくジャガイモという説には説得力があるし、チューニョのような加工によって、いも類でも保存性等の問題はクリアできると考えるからだ。
いずれにせよ、本書は、(古代)文明論への挑戦的な問題提起の書である。
Posted by ブクログ
日本の歴史授業で教えられてきた四大文明説に、著者は疑問を呈する。若き日に探検地として訪れたアンデスの地に"文明"と呼び得るものがあったのではないかと考えたからである。
では、そもそも「文明とは何か」。論者により説はあるが、著者は、「効果的な食料生産」と「大きな人口」という条件に着目する。
そして、ここでのキーワードとなるのは、"ドメスティケーション"である。野生植物の栽培化、野生動物の家畜化という、人類によって行われた自然環境の改変である。環境の改変、新たな問題の発生、解決の探究、これらの繰り返しにより、文明が誕生し、発展したのではないかと、著者は考える。
また、度々の現地訪問を通しての実体験から、世界の中で、「高地文明」と呼べる文明があると著者は主張する。それが本書副題の、もう一つの「四大文明」の発見である。
メキシコのトウモロコシ、アンデスのジャガイモ、、チベットのチンコー(オオムギの一種)、エチオピアのテフ、これら主食となる農耕植物の栽培により農耕技術も発展し、大きな人口を支えることが可能になり、大都市が誕生したことを、様々な資料を基に論証していく。
高地というと厳しい環境をついつい連想してしまうが、実際の気象を数値で示されると決してそんなことはないこと、ドメスティケーションを補助線にすると、栽培植物、家畜について新しい見方ができることを教えられた。
著者の主たるフィールドであるアンデスの説明に比して、メキシコはやや薄く、チベット、エチオピアについては駆け足の記述なので、4つを高地文明と並列されてしまうと少し疑問は感じるが、興味を惹かれる大きな仮説であることは間違いない。
時に自説に対する疑問や批判に対して厳しい応答がなされるが、理系の人らしい明晰な文章で、たいへん読みやすい。
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