namoのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これまでのあさひは職人の真似事をしているようなものだった。だとしたら、展示会の片隅であっても作品を人目に晒すならば、それは職人として歩みだすようなもの
そうなれば客に商品として見られるだけでなく、同業者との力量比べも発生すると
雄介と共に展示が並べられた事は彼女にとって自分の作品は他者と比べてどのように受け止められるのか、という点を強く意識させるものとなったね。そのように捉えると、あさひの父がかつては鎚起銅器職人を志していたが挫折したというのも己の父と比べて心折れてしまった出来事だったとも考えられるのか
ならば、自分より間違いなく実力が上の雄介と作品比べをする事はあさひにとって職人を辞めるかもしれない一つの分水嶺として存在していたわけだ
けれどあさひは負けなかったね。実力が自分より上だろうが自分よりも熱意無く銅を打つ雄介に負けなど許せない。自分の優秀さを示す為ではなく、勝つ為に息を荒くする彼女の姿には凛々しさがあったよ
けれど、展示会である以上はそのような方針で銅器を打つのは宜しく無いわけで
修が学んだばかりのプロダクト思想を織り交ぜてあさひに指導する場面は良かったな。あさひに足りないものを教える場面と成りつつ、同時に修の成長も見られた
そうしてあさひが作り上げた作品は意表を突くものだったね…!実力を示す為でも雄介に勝つ為でもなく。自分はどのような職人に成りたいかを思うが儘に示し上げた作品は彼女という人間をこれでもかという程に表現していたよ
そりゃ高畠のお爺さんだって「…良い銅器だ」って褒めるよ!また、これに伴って雄介に熱の欠片を与える物となっているもの良かったな
そうして一つの分水嶺を越えられたあさひと雄介はライバルとなっていくかと思いきや…
オチてる…!雄介の野郎、あさひにオチてる……!
あそこまで冷淡というか熱のない対応をしていた雄介がこうもあっという間にあさひに惚れてしまうとは思わなんだ。どうやらあさひから受け取った熱は職人としてのものだけではなかったようで
2人での買い物をデートと認識し、その上であさひに似合う花を選ぶなんて相当本気だよ!ただ、あさひからはそういった視線を一切向けられてなさそうな点は今後どうなるのかねぇ…
本作は修としいなが主役だから、その2人を主体として描いてきた。それだけに修の祖父・総一郎の若かりし頃を描いた48話は異色でありつつ、職人とは何かを示すものとなっていたね
弟子入りしても雑用ばかりで面白さを見いだせない日々。なのに、すぐ近くにいる兄弟子・四条は花形の仕事をさせて貰っているし、成形を任されても四条の下働きかのよう
人が腐るのは当たり前とすら思える環境。総一郎が“気の抜けた銅器”を作ってしまったのも仕方ないかもしれない。でも、それは仕事を任せてくれた人を裏切る行為かも知れず
あのお父っつぁまの言葉はキツいなぁ……。勿論、直接に何の言葉も無い事もキツい。けど、お父っつぁまとて、言葉もなくコツコツやる総一郎の姿を見て評価してくれていたわけで。なら、総一郎がどん底のようなそこから返せるものはやはり言葉も無い行動に拠ってのみといえるのかも
それからの総一郎はまさしく継続の日々だろうね
以前は詰まらないと感じていた毎日をより真剣に繰り返し、雪と出会った事で始まった新たな日々を繰り返し、職人として独立してからの日々を繰り返し
そんな彼がかつては手直しできなかった口惜しい作品を継続の先に在った職人としての生活にて修理する様にはそれこそ言葉に表せない感動が詰まっているように感じられたよ
修はゆりとのコラボを通してプロダクトを学んだ。隣に居るしいなはプロダクトを自然と理解していると思っていたのだけど、ここに来て彼女にもより広い形でのプロダクトを学ぶ機会が訪れたね
しいな考案の「猫のブローチ」に大型注文、それはしいなとしてどうしても力の入ってしまう企画。そこで既に出来上がっている製品にパッケージを付けるというのは思い入れの強さを感じさせる
だからハコ屋へ商談を持ち込んだ際の彼女は大きく夢を描いていたわけで。迎えるパッカポッカは大型発注という前提で話を聞く事に成るわけで
商談の場面での擦れ違いは怒涛の勢いで生じていたね。そもそも両者において“大型”の定義が全く異なるし“かわいい”に何を求めているかも違った。しいなとしては全く知らぬ業種の常識を前に太刀打ちできない状態。流されてしまいそうに成るその一瞬に修が助け舟を出す展開は良かったな
修とて認識が通じていないのは判るが、それをどう伝えれば良いかまでは判らない。それでもしいなが困っているのは判る。だから企画を通すよりも、まずは彼女を助ける事を優先したわけだ
その優先順位の問題は修だけが持つものではないね。パッカポッカだって持っているし、富川堂だって持っている。つまり商談では優先順位の摺合せこそ行うべきだった
パッカポッカが作るハコにもプロダクトが有る。そして富川堂が作るブローチにもプロダクトが有る。正解を知っていて教えなかった美登は少し意地悪だけど、こうした感覚はそれこそ間違いからしか学べないものだろうね
そうして形となったハコはとてもブローチの良さを伝えるものと感じられるし、またこの経験を通してしいなは番頭として貴重な経験が出来たとも感じられたよ
ただ、しいな的には金沢と仲良くなれた事も結構な成果になっているような…(笑)
20歳の誕生日を迎えた後、花に包まれながらキスされたしいなが可愛すぎて悶絶してしまったよ…… -
Posted by ブクログ
金沢に住むことになって、天気、方角、交通手段など、太平洋側に住み続けていた私は、生活の根本的なところから慣れなければいけませんでした。また、自然が強い地域のせいか、自分を守るためにも、人と繋がることが自然だった気がします。人とのつながりが希薄な東京育ちの私には、戸惑ってばかりの大変な環境でした。知り合いはひとりもいませんし、いつかは出ていくような人間なので、信用してもらうのも一苦労でした。慣れたら住み心地の良い環境でしたけど、そこに辿り着くまでには様々な苦労を味わいました。
コミュニケーションが苦手と思える職人の家、日本海側の新潟を舞台にしたこの漫画を読んでいると、金沢に住んでいた頃を思い出して、懐かしい気分になります。また、自分には馴染みの薄い『鎚起銅器』という美しい仕事も興味津々です。続きの楽しみな漫画に出会えました。気になった漫画に『ハルタ』と書いてあったら、相性間違いナシのようです。 -
Posted by ブクログ
しいなが20歳になって一種の一人前を迎えた事で修は改めて”一人前”とは何かを考え始めたようで
彼は半人前とは言い難いが、他方で既に作品を世に出すなど一端の職人として活躍している。そんな彼が目指すべき”一人前”とは何か?
そのように悩んでいると却って前に進み続けているしいなが大きく見えすぎてしまったのかな?それだけに、しいなとて修に追い付きたくて頑張ったし、そんな頑張ってる自分に付いて来ないつもりなら置いていくと叱咤するしいなはイイ彼女だね
この二人はこれからも二人三脚で歩んでいく様がありありと想像できるね
今巻の修としいなは成長のヒントを探す為に高岡へ。修は度々己を成長させる為に工場の外へと飛び出すね。そうした貪欲さは見上げたもの
けど、そうした貪欲さは吸収できるものがあって、初めて成立するものでもある。今回、修が指導を受ける事になった凛はそうした貪欲さを強く持つタイプか。会社を継いだ時にはずぶの素人、会社の敷地内にスケボーのジャンプ台を作り、自由に跳んでいる
いわば修には全くない価値観に基づいて活動している職人。また、凛の方だって修から学ぶものだってあるかもしれない。彼女と修が共に銅器に向き合えば得られるものは数限りない
…と思わせてくれる流れだったけど、まさか修から提供するのは恋愛指南術なんだ⁉普通に燕の技術を見せるとかじゃないんだ⁉
まあ、確かに第三者的には幼馴染の彼女を連れて技術研修に来る将来有望な若職人ってそりゃ人生上手くいってるように見えるか
ただ、読者は重々承知しているように修にそのようなスキルが有るわけもなく。これはしいなの出番かな?と思いきや、しいなはしいなで研修しているし
これはダメな奴……!おまけに肝心のしいなも別に恋愛強者じゃなかったとか、尚更にダメな奴……!
だから凛の依頼は兎も角として、修としては当初の目的通り高岡の技術を学ぶ事こそ重要で
千紘が話す高岡銅器の特徴や来歴は修に判らないを判らせるものとなったようで。今の彼は多くを悩む必要がある。それだけにこうして他者の発展経緯を知る事は己をどう発展させていくかのヒントとなり得るのだろうね
そして修と二人三脚の存在と言えるしいなはブランディングについて学んだ事で、これまでは感覚的にイイとか褒めていた銅器について、その背景や理念を汲み取れるようになったようで
並べられた製品を見て、思想の違いを言語化できるようになるなんて、初期の彼女からは考えられない程の成長ですよ!
三津川製作所の話を聞く中でしいなはブランドを分けた事で得られた利点や分ける際の注意点を聞くし、またこの製作所でも本作が度々描いてきた時代の変遷に対応する銅器職人の在り方も学ぶね
だからこそ、しいなの頭に浮かぶのは修が父祖から受け継いできた伝統の先端に居ながら、これから伝統を作り出せる場所にもいるという点
そうして多くの学びを得たしいなが、学びを形にしようと藻掻く修に伝える言葉の重みがけれど軽やかに響くわけだ
本作は様々な角度から銅器への向き合い方を描いてきたわけだけど、終着点はそこを目指すわけか。何とも感慨深いね
そして、後書きで凄いコンセプトの下に考案されたキャラであると明かされた凛と千紘、幾つかのすれ違いはありつつも、お互いに相手を尊敬しているのだから、素直になれば何の問題もないわけで
いや、それにしても凛の素直になる方法は凄かったね!わざわざあのシーンの為に着飾ったんだ⁉
まあ、収まるべきところに収まってめでたしめでたしという感じですよ
何もかも変わらずには居られない。だからこそ、変わっていく中でも変えたくない何かを手中に残しつつ前に進んでいく
ラスト、総一郎達は盛大に勘違いしてそうだけど、修としいなが明かすだろう自分達なりの伝統の作り方を次巻にてどう実現していくのか楽しみですよ!