kazzu008さんのレビューを見て、読んでみようと思った。
書かれた時代は1862年、ロシアの農奴解放の年である。「子」の一人はアルカーシャ。ロシアの田舎の大地主の息子で、貴族階級。もう一人の「子」はアルカーシャが尊敬する親友のバザーロフ。バザーロフは雑階級で医者の卵で何事も信じない「ニヒリスト」で、その新しい考え方がアルカーシャを魅了している。二人が大学を卒業して三年ぶりに帰省する際、アルカーシャは自分の家にバザーロフを連れてくる。貴族階級の古い頭の父親とその兄(伯父)には、バザーロフと彼に賛同するアルカーシャのことが理解出来ない。まだ、父親のほうは、最近の本などを読んで、一生懸命若者の考えを理解しようと努めるのだが、かつての貴族の栄光にしがみついて生きる伯父のほうは、バザーロフとは敵になってしまった。
アルカーシャとバザーロフは、ある貴婦人を巡って三角関係になり、その頃から友情関係が怪しくなり、バザーロフの明晰さも狂いだす。
バザーロフは雑階級だが、そうはいっても使用人に身の回りのことは何でもさせる家の出身だし、どちらも結局お坊っちゃんなので、二人が粋がって言っていることが机上の空論のように思えた。
物語が急展開を見せたのは中盤を過ぎてから。「父」の世代は何もしない、格好ばかりの貴族だと思っていたが、実はロシア人ってすごく根深くて、重たい感情を持っているのだ。こういう根深さがロシア文学に重みを出しているのか。
結局、幸せになるのは……。ロシア革命の半世紀くらい前の話。まだロシア社会は実際には大きくは変われなかったということだろう。
ロシア文学は重厚で長大だが、ロシアは長く「指図するように出来ている地主とそれに従うように出来ている農民」に分かれていた国。ツルゲーネフも社会の動向をよく観察していた作家だが、大地主の息子だった。「従う」立場にあった人により書かれた文学があれば読みたいと思った。