ジェイムズ・A・ロビンソンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書自体は膨大な歴史実証の本で大変素晴らしい内容であるが、上巻に比べると、ケーススタディばかり書いてあって上巻に加えた純な付加価値はほとんどなかった(つまり、オチが一緒だった)ので、読んでいて正直退屈であった。従って、本書を読む際は新たな理論的枠組みを知ろうという目的で読むと期待外れな結果になってしまうので、上巻の理論的枠組みの事例紹介の続きを読むような心持ちで読んだ方が良いと思った。言い換えれば、経済成長史の本として読むのが適切であろうということである。
個人的に付加価値があるなと思ったのは最終章(15章)で、ここでは本書の締めくくりのみならず開発経済学の観点から見て興味深いポイントがいくつ -
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Posted by ブクログ
国がどうやって繁栄するのか、なぜ衰退するのか、を色んな角度から説明してくれる本。
経済的な制度と政治が重要だとはわかった。文化的や地理的な説も多いが、それは違うとも言っている。日本で生まれたことは恵まれたことだなぁ、私は自由だなぁと感じられた部分もあった。今の私レベルだと「へぇ~そうなんだ〜」という感じだが、いつか何かのきっかけでこの知識を思い出せたらと思う。
とはいえ、翻訳だと一文が長くて、なかなか読みにくい。うーん、くどいかも。内容は魅力的だから、この本をもとに池上彰さんとか日本語を平易に使ってくれる方に再編集してもらって、図録付きで出版してくれたら、と思ってしまった。もっと軽快なテン -
Posted by ブクログ
ネタバレ長期的な経済発展は、地理的、環境条件、社会学的要因、文化の違い、生物学的遺伝的差異でもなく、政治・経済制度の違いにある。
包括的な政治制度と包括的な経済制度の組み合わせが必要。収奪的政治制度と包括的経済制度ではだめ。新自由主義は、その見本。
収奪的政治制度のもとでは、破壊的イノベーションは起きても潰されやすい。既得権益を守るため。規制緩和は限界をむかえる。
中国のような収奪的政治制度のもとでは、経済の自由度が高まっても破壊的イノベーションは起きにくいので、経済成長は持続しない。
収奪的政治制度がデフォルト。
長期的には、自由民主政治と資本主義は不可分。格差があっても、経済強者の交代可能性 -
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Posted by ブクログ
世界には豊かな国(地域)と貧しい国(地域)があるが、それらを隔てる境界線が「包括的な政治・経済制度」か「収奪的」かの違いにある、という主張。「包括的」という言葉の意味するところは、自由主義や民主主義、多元主義といったイデオロギーを重視する政治であり、私有財産や市場経済を重視する経済制度を指す。
別に目新しくはない。日本の歴史教科書にはこの手のメッセージがすでに散りばめられている。啓蒙思想、西洋史観と言って良いかもしれない。実際に本書には「収奪的な政治・経済制度から包括的なものにうまく変革できた成功例」として明治維新が紹介されているが、深みは学校で学ぶ程度のものだった。でも本書には範囲の広さが -
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Posted by ブクログ
国家間の経済発展の違いについて分析された一冊。結論は単純明快で「制度の違い」だ。
隣の国、北朝鮮と韓国を例に挙げるとわかりやすいかもしれないが、収奪的な政治・経済制度と包括的な政治・経済制度のちがいによって、片や経済発展のインセンティブが阻害され、片や経済制度と政治制度が好循環に機能し、経済発展が進んでいく。結局は民主化バンザイってことなんだろう。
ただ、包括的な制度をとっている国においても、諸手を挙げてハッピーかといえば決してそうではない。貧富の差の拡大なんかもあって、包括的な制度と一括りにしても、細部に目を向けるとまだまだ課題は多い気がする。 -
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購入済み
訳者のあとがきがすべて
上下巻に分かれた大部な書物であるが、手際よくまとめられた訳者のあとがきがすべてを語っている。
「包括的」「多元的」「収奪的」という単語が頻出するが、普通に使われている意味とかなり異なるので私はいちいち下記のように言葉を置き換えて読み進めた。
包括的=>自由公正
多元的=>広範囲
収奪的=>専制的
基本的には、マルクスの主張とは逆に政治社会が経済を規定するという主張。納得できるところは多いが、なぜイギリスに「包括的」社会政治体制が発達し、フランスは遅れたのか、「偶然」で片付けているが腑に落ちない。
著者二人の経歴からも明らかなように、欧米特に英米中心の記述。東アジアに関しては粗雑な記