ジェイムズ・A・ロビンソンのレビュー一覧

  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    研究は膨大なため、途中様々な国、それも普段触れない国の細かな歴史が紹介されるため、興味を保つのが難しい。ただ、本研究で明らかにしようとしている仮説は興味深く、示唆に富む。末尾の解説が丁寧であり、理解が深まった。解説にあるとおり、筆者の見解は多くの失敗した試みが登場し、また昨今の脆弱な民主主義やトランプ、習近平、プーチンのような独裁への執着が見られる中では、悲観的なメッセージに映る。それでも炙り出した真実は、包括的な政治経済制度を目指す人々に自信を与えるものであり、今一度この提示を噛み締めて世界を俯瞰的に見れるようになりたいと思う。

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    2026年01月24日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    国家が繁栄するための必要条件がわかりやすく説明されています。多様性の高い包括的政治制度と、所有権の侵されない包括的経済制度が重要。この2つの制度の上で、創造的破壊が繰り返されて、繁栄に繋がっていきます。今の日本は、ちょっとヤバいかな。創造的破壊がされない。中国よりはマシですが。今後の中国が凋落していく様子をしっかりと見届けたらと、思っています。

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    2024年12月28日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    絶対主義的な政治制度は経済的に発展しない。包括的な政治制度を目指すべき。創造的破壊を恐れてはいけない。所有権の保証、大切。

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    2024年12月07日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

    Jie

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    例が細かく多様

    言ってしまえば、核心は変わらず様々なケーススタディで繰り返し主張への説得力を固めていく形。でもそのケース内容が細かくて、じわじわと教養も広がって、既存の知識と結びついていく感じがして読みがいもあるし、主張内容も納得。

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    2024年11月30日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    購入済み

    ローマ人の物語の併読を推奨

    民主政、共和政が過度にお気に入りの様子なので、少しおかしなこと言ってるのではないの、
    みたいなとこもあります。
    塩野先生のローマ人の物語で裏をとってください。
    ローマは、王政、共和政、帝政、東西に分割、西、東の順番に消失になります。
    ライン河、ドナウ河の南西部が最盛期の領土で、ルーマニア、当時はダキア、ローマニアと発音すべき気もします。
    領土的には出っ張りもあります。
    共和制で協議しちゃうと決定するのに時間がかかる、戦争仕掛けられて対応の協議に時間がかかるのとか、まずいと思いますし、
    仕掛けた場合も同様です。そこで頭にいる皇帝が速やかに仕切るようにしたのが帝政ローマ。
    初めの約200年はパスクロマーナと呼ばれていて、前世のお手本のように言われてます。
    ルビコン渡ったカエサル、英語だとシーザー、7月の人ですね、後釜のアウグスチヌス、8月の人、
    の後任のティベリウスが塩野先生の言っていた通りに
    ボロカス言われているのは、この人ほんとに嫌われていたんだなと思います。
    話は面白いです。お好みで。

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    2024年11月01日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    社会の繁栄と貧困の差は、政治と経済の制度の違いによって生まれたと説明する。

    多数の資源を少数が搾り取る収奪的制度では、所有権が保護されず、経済活動のインセンティブも与えられない。少数は、自らの利益のために収奪的制度を維持し、手に入れた資源を利用して政治権力を強固にする。収奪的制度の下でも、政治的中央集権化化によって、ある程度の成長が可能だが、創造的破壊によるイノベーションが起こらないため、成長には限界がある。また、政治権力をめぐって闘いが発生するため、社会は不安定になる。

    包括的政治制度では、政治権力が幅広く配分され、法と秩序、所有権の基盤、包括的市場経済が確立される。有史以来、収奪的制度がごく普通だったが、14世紀のペスト流行、大西洋貿易航路の開通、産業革命といった歴史的な決定的岐路において、既存の制度との相互作用によって包括的制度が生まれた。

    今後、収奪的制度下でも政治的中央主権下で成長しそうな国は、アフリカではブルンジ、エチオピア、ルワンダ、タンザニア、ラテンアメリカでは、ブラジル、チリ、メキシコなど。中国は、持続的成長をもたらさないため、いずれ活力を失うと予測する。

    本書は、ポール・コリアー、ウィリアム・イースターなどから称賛されているが、ジェフリー・サックスは単純な制度決定論と批判している。

    近代化とは、収奪システムから普遍システムへの移行であるという説明は、今まで読んだ本の中で一番わかりやすかった。

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    2018年10月31日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    世界に裕福な国と貧しい国が生まれた理由を歴史的に解き明かす。緯度や気候などの地理的条件、宗教や民族ごとの価値観などの文化的側面は、世界的な不平等の説明にはならず、経済と政治の制度が重要であると説く。

    ヨーロッパの植民地としての歴史を持つ南北アメリカ大陸に相違が生まれた理由がおもしろい。スペインが支配するアメリカ大陸の植民地では、金銀の略奪段階が過ぎると、労働力としての先住民を分け与える制度であるエンコミエンダなどの制度を導入し、土地を奪い、労働を強制し、低い賃金と重税、高い商品を売りつけた。コンキスタドールとその子孫は大金持ちになり、先住民の生活水準は最低となる不平等な社会となった。スペインは、1808年にナポレオンが率いるフランス軍に侵攻され、王が退位させられると、評議会が結成されてコルテスと呼ばれる議会を組織してカディス憲法を生み出したが、南米のエリートは、労働力としての先住民を分け与える制度であるエンコミエンダ、強制労働、絶対的権力による制度を守り、独立していった。

    イングランドはアメリカ大陸の征服に遅れたため、先住民がたくさんいて鉱山のある場所はすでに占領されており、北米しか残っていなかった。入植者たちは先住民を支配することができなかったため、入植の支援をしたヴァージニア会社は人頭権制度を導入して土地と家を与え、1619年には議会が設立されて法と制度の決定権が与えられた。メリーランドでは荘園社会がつくられたが、議会が創設されると荘園領主の特権は剥奪された。1720年までに、アメリカ合衆国となる13の植民地のすべてに知事がいて、選挙に基づく議会があった。

    ヨーロッパでは、14世紀のペスト流行による人口減少が、地域ごとに異なる結果を生んだ。イングランドでは労働力不足の結果、農民は強制労働と多くの義務から解放された。しかし、封建君主が組織化されていた東欧では、もともと広かった小作地はさらに拡大され、労働者の自由は奪われた。1500年以降は、西欧が東欧の農産物を輸入し始めたため、地主による労働者の支配は強くなり、無給労働が増えた(再版農奴制)。

    政治制度の違いも重要な影響を与えた。16世紀末のイングランド、フランス、スペインは、いずれも絶対君主に支配されていたが、イングランドとスペインの議会は課税権を手に入れていた。スペイン国王はアメリカ大陸からの金銀から膨大な利益を得ていたが、イングランドの女王は税金を上げる見返りに、独占企業を創設する権利が奪われていった。イングランドでは、大西洋貿易と植民地化によって、国王とつながりのない裕福な商人が大勢現れ、政治制度の変化と国王の特権の制限を要求して、名誉革命において決定的な役割を演じた。名誉革命によって、所有権が強化・正当化され、金融市場が改善され、海外貿易における国家承認専売制度が弱められ、産業拡大の障壁が取り除かれた。包括的経済制度の下で、ジェームズ・ワットをはじめとする人々が機会とインセンティブを与えられて、産業革命が始まった。

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    2018年10月31日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    タイトル通りではあるが、なぜ繁栄している国家と貧困にあえぐ国家があり、後者は貧困を脱することができないのかがクリアになる。やはり自由、信頼、イノベーションは必須で、行き過ぎた統制、独裁は進歩を妨げるのだ。ジャレド・ダイアモンドの説より腹落ちする内容で、国家だけでなく組織に当てはまることで学びが多い。読み応え十分。

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    2016年07月12日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    繁栄する国家と、逆に落ちていく国家。その違いを、地理や文化といった(役に立たない)理論に求めるのではなく、経済と政治に関する、歴史の中では小さな選択にあるされています。なぜイギリスが産業革命で成功したのか、他のヨーロッパ諸国はそうならなかったのか。少々の偶然の要素もあったのですが、違う制度を取った国々の差を広げこそすれ、そのベクトルを決めたのは、その選択にあったということ。
    具体的な歴史を、読みやすく、読ませる書き方で書かれており、現代の我々が立っている位置が、どのように出来上がっているものなのか。また維持するために、何に注意していなければならないのかを教えていただきました。

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    2015年04月23日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    「世界には四種類の国がある。先進国、発展途上国、日本、アルゼンチンだ。」ノーベル賞経済学者のサイモン・クズネッツの有名な言葉だそうだ。1914年のアルゼンチンは50年ほどの経済成長を達成し世界で最も裕福な国の一つだった。しかしその後は独裁主義と民主主義の間を行ったり来たりした。民主主義と言ってもペロンの正義党は巨大な集票組織による利益供与の賜物で権力は著しく集中していた。そして2001年には経済危機を迎え先進国から果て得ん途上国へと滑り落ちていった。

    日本は逆に19世紀中頃までは中国とともに鎖国政策の元で停滞していたが完全な中央集権の中国とは違い、薩摩藩が琉球を通じた交易で密かに力を蓄えていた。中国はアヘン戦争以降国力を落とし、太平天国の乱は一時期江南一帯=中国の穀倉地帯を征圧したにもかかわらず後に自壊し、辛亥革命後も統一政府は作られず各地の軍閥が地方を支配し、抗日戦の一時期を除いて国共内戦が続いた。鄧小平の改革開放以降少しずつ所有権や個人の権利は拡大し経済は発展してきてはいるが独裁的な政治体制が続いている。日本の明治維新が成功しより包括的な政治制度へと踏み出したのに対し、なぜ太平天国の乱や辛亥革命は収奪的な制度を維持してしまったのか。藩の独立性が高かったことで説明しているのだが藩内部の構造は収奪的で独裁的だったのではないのか。中国の軍閥の争いが誰が独裁者になるかと言う争いなのに対し、明治維新後は中央集権制の下で少なくとも民主化が進んでいる。徳川家を打倒した後薩長内戦が起こり、薩摩独裁政権が生まれても不思議ではない。しかし現実は坂本龍馬の船中八策と言う当時の常識ではかなり急進的な政策が採用され政治制度が生まれ変わった。

    歴史的な記録は近代化が必ずしも包括的な制度に結びつかないことを示している。20世紀初頭豊かな工業国として発展したドイツと日本でナチスドイツや日本の軍国主義の拡大を防げず弾圧的独裁政権と収奪的制度に屈し工業化はそれを支えてしまった。21世紀のアルゼンチンは未だにとがめ立てもされずに国民の財産を収用できる。敗戦後の日本がアメリカ主導で民主化に一機に向かったのはアメリカ国内の例をみると必然だったとも言えない。そのアメリカの収奪的な制度の名残は今でもまだある。1901年に書き直されたアラバマ州憲法256条は現在でもこう述べている。「議会は、公立学校制度、公立学校の資金の割当制度、白人の子供用と有色人種の子供用の別々の学校を創設し、維持する義務を負う。(中略)どちらの人種の子供も、もう一方の人種用の学校に通ってはならない。」この憲法を削除する修正案は2004年に州議会で僅差で否決された。18世紀末にイギリスで始まった奴隷貿易廃絶は1807と翌年に英米で法制化されたが大英帝国で奴隷制度が廃絶されたのは1834年であり南北戦争に負けた後も黒人に投票権が与えられた南部ではプランテーション農業は存続し、差別的な法律がいくつも成立した。これらの制度が崩壊しだしたのは1950年代からの公民権運動によるものだ。

    アフリカの植民地の大半では奴隷制は20世紀になっても存続した。例えばシエラレオネの首都フリータウンは送還された奴隷の安息の地として築かれた町であるにもかかわらず奴隷制が最終的に廃止されたのは1928になってやっとのことであり、すぐ南の国リベリアもアメリカ奴隷のために建国された国だが1960年代になっても労働人口の1/4は強制労働に従事している。イギリスの植民地政府はまずシエラレオネに収奪的な制度を作り、独立後はアフリカ人の政治家達が制度を引き継いだ。イギリス人は大首長を終身制にしこの制度は今でも続いている。シエラレオネ東部の現在はダイヤモンド鉱区であるコノのスルク王=大首長の玄孫は2005年にスルクのために設けられたサンダーと言う保護領の大首長に選出された。イギリス国内で作り上げた包括的制度は植民地政策には適用されなかったということだ。現在のアメリカの自由主義の輸出がうさんくさいのも同根だろう。

    アフリカにも包括的な制度を導入できた国がある。ツワナ人の国ボツワナは南アの北にあり、西はドイツ支配下のナミビア、東にボーア人支配のトランスヴァール(現南ア)やセシル・ローズのローデシア(ジンバブエ)に挟まれていた。これらの勢力の拡大を防ぐためにイギリスが支配したが植民地化には値せず出来るだけ手をかけない方針だったがツワナの三人の首長はよりましな方、イギリス人の支配の強化を求めた。1895年チェンバレンの言質を取りイングランドを遊説し庶民の支持を得た。またコットゥラと言う集会所では成人男子の総会が開かれ誰でも発言が出来る。そして実力が認められれば誰でも首長になれる。イギリスの力を借り収奪的な勢力から身を守ったボツワナは1966年に独立した時点では世界最貧国の一つであったがーだからイギリスも植民地化しなかったー翌67年に世界最大級のダイヤモンド鉱山が発見されるとすかさず国営化し、その収益でインフラを整え一人当たりGDPでは2013年世界80位となっている。これは中国やタイよりも上位なのだ。

    ここで得られた結論は制度は変えられると言う楽観論でもあり、しかし容易には変わらないと言う悲観的な見方でもある。現在の中国のように収奪的な制度化であっても一定期間の経済成長は歴史上多く見られた。包括的な制度が永遠に続く保証はなくメディアや国民の監視によってなんとか続けていくものなのだろう。そして収奪的な独裁制の下での持続的な発展が続いた例は歴史上ない。

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    2015年02月13日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    ジャレド・ダイアモンドは「銃・病原菌・鉄」で文明発祥と伝播には栽培可能な穀物や家畜が反映する社会を生んだ原動力となり東西には伝播しやすく自然環境の異なる南北には伝播速度が遅いと唱えた。それは一つの強力な仮説だが本書の調査結果によると歴史的に野生の牛や豚が棲息した地域の分布はヨーロッパからアジアの非常に広い範囲に及び米の原種はインドから東南アジアにかけて広く分布している。小麦の原種も肥沃な三日月地帯だけでなく地中海東岸からイラン、アフガン、中央アジアの「スタンズ」にまで広がっている。ダイアモンド自身も「文明崩壊」で同じ島でありながら崩壊しつつあるハイチと発展を目指すドミニカの違いを書いている。また、ニーアル・ファーガソンは西洋文明が優位になった理由を「競争、科学、所有権、医学、消費、労働」とまとめた。

    それに対して本書では北朝鮮と韓国、フェンスを挟んで貧富の差が激しいアメリカとメキシコのノガレスなどを上げながら地理や気候と経済的成功の間には単純な、あるいは持続的なつながりはないことを明らかにしていく。そして政治制度が包括的で多元的であれば繁栄の好循環を生み、収奪的で独裁的であれば貧困の連鎖を生むとしている。包括的と多元的と言うのがわかるようでわからない訳なのだがinclusiveとextractiveの対比らしい。包括的な市場と言うのは個人の権利が尊重され、権力者による搾取がない市場、包括的で多元的な政治制度とは参政権が広く開かれ、色々な考え方が許容される政治制度と考えればいい。その最も極端な姿が民主主義だ。収奪的な独裁制の元では個人が努力するモチベーションが働かない。産業革命がイギリスで生まれたのは偶然ではなく、イノヴェーションが個人の利益を生むと言うモチベーションが後押しした。

    しかし歴史的には封建社会が長く普通でイングランドで包括的な制度が生まれたのは偶発的なものだった。1688年の名誉革命によって王権の制限や多元的な制度を求めた商人達を含むグループが勝利したのは100年前にイングランドがスペインの無敵艦隊を破り大西洋がイングランド承認に開かれたことに端を発する。それでもイングランドで包括的な制度が力を持つにはまだまだ時間がかかり、1733年に飛びひを発明したジョン・ケイやジェニー紡績機のハーグリーブスはラッダイト運動でイノヴェーションに対する抵抗に会っている。それを黙認したのはイノヴェーションにより政治権力が脅かされることを怖れた権力者だ。君主制化の17世紀には王家や貴族は専売制の独占権の分配によって収奪的な制度を維持しておりこれが国家の大きな収入源だった。1642年独裁的なチャールズ1世に対抗した議会はオリヴァー・クロムウェルの指揮の下王党派を破りチャールズ1世を裁判にかけて処刑したがそれはただ、クロムウェルの独裁を生んだだけだった。そして王政復古後絶対君主制を復活させようとした弟のジェームズ2世は議会に破れ、議会はオレンジ公ウイリアムとメアリを招き立憲君主制を成立させた。王と議会の力関係が代わりより多元的になったわけだ。

    逆に繁栄が上手くいかなかった例としては13世紀のヴェネツィアがある。定住し資金を提供する商人と自身は財産を持たず商人のパートナーとして旅をする貿易商からなるコメンダ(ワンタイムの合資会社)によりヴェネツィアの経済は発展し大評議会が生まれ毎年100人の新たな評議員が任命された。独立した裁判所、契約法と破産法が生まれ現代の銀行業の元が生まれた。しかし既得権益を持つ貴族勢力は評議会を世襲化し、コメンダの利用を停止した。1314年に貿易を国営化し、個人商人に高額の税を課すようになるとヴェネツィアの経済は衰退を始めた。ヴェネツィアは世界経済の中心から今では地方の観光地、よく言えば往事の繁栄を記録した博物館になっている。

    「発見」された当時のアメリカ大陸では現在のアメリカとカナダの人口密度が最も低くこれだけでも地理説は力を持ちにくい。どこで差がついたかと言うとアメリカの入植はことごとく上手くいかず入植者に所有権と参政権を与える試みだけがうまく働いたのは収奪するほどの先住民がいなかったということでもある。メキシコや南米に入植したエリートは強制労働を元にした植民地制度を享受していたからだ。そしてクーデターはあっても制度は維持された。アメリカ合衆国が楽園とは言えずとも世界最大の経済大国になった成り立ちには自由主義や民主主義が大きなモチベーションとなったことは間違いはない。

    では共産党一党独裁の元で収奪的な政治制度の下で繁栄する中国はどうなるのだろうか。収奪的な制度の下で経済的な発展を達成するケースはある。中央集権制がない政治制度よりはまだ条件としては整っている。「漢江の奇跡」の韓国の政治が包括的制度に移行したのは1980年代盧泰愚政権の時だ。しかし著者の見立てでは中国が韓国の様に包括的制度に移行する見込みは薄い。

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    2015年02月11日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    本書の主張は極めてシンプルだ。収奪的制度をしく国家は衰退する。なぜならイノベーションへのモチベーションが起こらないから。国家を企業に置き換えるととても分かりやすいのではないかと思う。苦労してイノベーションを成し遂げたとしても、単に収奪されるだけで報奨がなければ、モチベーションが上がらないのは当然だ。では何故収奪的制度がなくならないのか。権力の掌握は富の独占を生むからだ。そうした体制において、イノベーションは既存権力を脅かす存在として排除される訳だ。これはリアルでわかりやすい。
    興味深いのは、ルーズベルトがニューディール政策を推進するために、最高裁判所判事の任命権を大統領の与える法案を通そうとした時に、米国では、経済的効果が期待できるにもかかわらず、行政権の濫用(=収奪的制度)につながるという理由で通らなかったことだ。現状の日本の状況に似ていると感じるのは気のせいだろうか。日本が収奪的な国家へ向かわなければよいと思うのだけれど。

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    2014年06月29日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    人民に労働対価が与えられないと、その国は滅んでいく。ということを、実例をいくつも挙げながら説明している。特に、アフリカ諸国での絶対的権力政治が、現状に至っていることがよくわかる。ソマリランドの無政府状態が何故続いているのかが、判りやすく書かれている。平易な言葉で書かれているが、中身が非常に濃すぎるだけに、読むのに時間がかかる。3回くらい読み直してやっと、筆者の言いたいことが判るのかもしれない。

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    2014年06月19日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    経済は政治の上にある。政治が正しく平等で安定していないと投資もできないし新しい産業は(既存の権力者に)つぶされる。で政治は民主的なほうが長続きしやすくて、王政や社会主義とかだと一時的に発展はするが継続しない。まっ100年ぐらいは持つかもしれないみたい。ソ連は持たなかったけど。
    南米やアフリカの収奪的な政治を何とかしないと経済発展や飢饉の対策はできない。
    となるとまずは地域の自治レベルでの民主制の萌芽を目指すのかな。フランス革命も三部会とかの影響もあったし。

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    2014年06月13日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    包括的制度を打ち立てた欧州がアフリカで、南米でいかに収奪的に利益を得て来たか、それが現地の独裁的体制にまるまる引き継がれてきたか、胸が苦しくなる事例のオンパレード。上巻は一気読みでしたが、下巻はページをめくるのが遅くなりました。上巻でちょっと感じた「新自由主義」を賞賛するのかな?という裏読みも、それは開発独裁の変型であるとの毅然としたスタンスでした。そういう意味では一党独裁の資本主義国、中国も成長は続かないと言い切ります。ちょうど天安門事件から25年目、黙殺の6月。

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    2020年05月06日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    ネタバレ

    世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか、本書は、政治・経済上の「制度」による違いがその理由であることを古代ローマから、マヤの都市国家、中世ヴェネツィア、名誉革命期のイングランド、幕末・明治期の日本、ソ連、ラテンアメリカとアフリカ諸国、現在の中国といった広範な事例を用いて説明するもの。
     これからの日本を考えると、既得権益に縛られずに、世の中のニーズに応じた創造的な技術・仕組み・取組みが自由活発に進められる社会により良く変えていくことが重要で、政治・行政としてもその基盤を作ったり、後押しすることが役割になろうと感じました。
     今後の日本、また世界を考えていく上で必読の良書です。ちなみに、筆者は同じヨーク大学・LSE出身の政治経済学者で親近感があります。

    【ポイント】

    ・豊かな国には自由で公平、開放的な経済制度があり、技術革新・創造的破壊による持続的な発展のインセンティブがある(一方で、権力者が国家を食い物にして民衆から収奪する仕組みあり)。また、法の支配、民主主義、多元主義といった政治的基盤がそれを支えている。

    ・日本の明治維新とその後の経済発展は、イギリス名誉革命、フランス革命と並んで偶然性も相まった稀有の出来事。

    ・現在の中国の急速な発展も、既存技術の導入などに留まっており限定的で、政治的な開放がなされていない統制的な経済制度では、長続きしないのが歴史的な必然。

    ・あくまで制度という人間によって左右できるものが主要因であることは楽観的、一方で、人の問題であるがゆえ一度形作られた制度は硬直的でなかなか変わらないことは悲観的(奴隷制、植民地時代の制度が未だに残っているアフリカ、南米など)。

    ・これまでの国際機関や開発機関による「開発援助」は往々にして途上国の時の権力者を肥太らせ、また国際機関から現場に至るまでに幾重にもピンはねされるために、真の援助が必要な大衆には届かず、必要な制度を作るにも至っていないのが現状。一方で、何もしないよりは何かした方がマシなのも事実。

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    2014年05月16日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    ネタバレ

    世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか、本書は、政治・経済上の「制度」による違いがその理由であることを古代ローマから、マヤの都市国家、中世ヴェネツィア、名誉革命期のイングランド、幕末・明治期の日本、ソ連、ラテンアメリカとアフリカ諸国、現在の中国といった広範な事例を用いて説明するもの。
     これからの日本を考えると、既得権益に縛られずに、世の中のニーズに応じた創造的な技術・仕組み・取組みが自由活発に進められる社会により良く変えていくことが重要で、政治・行政としてもその基盤を作ったり、後押しすることが役割になろうと感じました。
     今後の日本、また世界を考えていく上で必読の良書です。ちなみに、筆者は同じヨーク大学・LSE出身の政治経済学者で親近感があります。

    【ポイント】

    ・豊かな国には自由で公平、開放的な経済制度があり、技術革新・創造的破壊による持続的な発展のインセンティブがある(一方で、権力者が国家を食い物にして民衆から収奪する仕組みあり)。また、法の支配、民主主義、多元主義といった政治的基盤がそれを支えている。

    ・日本の明治維新とその後の経済発展は、イギリス名誉革命、フランス革命と並んで偶然性も相まった稀有の出来事。

    ・現在の中国の急速な発展も、既存技術の導入などに留まっており限定的で、政治的な開放がなされていない統制的な経済制度では、長続きしないのが歴史的な必然。

    ・あくまで制度という人間によって左右できるものが主要因であることは楽観的、一方で、人の問題であるがゆえ一度形作られた制度は硬直的でなかなか変わらないことは悲観的(奴隷制、植民地時代の制度が未だに残っているアフリカ、南米など)。

    ・これまでの国際機関や開発機関による「開発援助」は往々にして途上国の時の権力者を肥太らせ、また国際機関から現場に至るまでに幾重にもピンはねされるために、真の援助が必要な大衆には届かず、必要な制度を作るにも至っていないのが現状。一方で、何もしないよりは何かした方がマシなのも事実。

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    2014年05月16日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)

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    2014年30冊目。

    包括的政治制度が包括的経済制度を生み出し、それによって勃興する新しい層が多元性を生み出して包括的政治制度を支える好循環がある一方で、
    収奪的政治・経済制度を持つ政権を打倒したところで、新たな政権は同じ制度を繰り返す、更には強化してしまうという悪循環も存在する。
    悪循環を断ち切り好循環へと転じる歴史的事例は確認できるものの、それは生半可なことでは起こらないという印象を受けた。

    「国家の貧しさは、エリートによって意図的に生み出される」という大きなメッセージを受け取った。
    リーダーの良し悪しが政治において決定的だとは聞いていたが、その重いが強まった。
    これからの世界の発展を考えるのに、非常に重要な示唆を得た。

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    2014年05月06日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

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    2014年25冊目。

    わずか一枚のフェンスで区切られた「ノガレス」の北と南で大きな経済的格差が生じるのはなぜか。
    地理・気候・民族が同じ北朝鮮と韓国でこれだけ貧富が違うのはなぜか。

    国家の貧富を左右するのは「地理」「病気」「文化」ではなく、
    “収奪的”ではなく“包括的”な経済「制度」とそれを構築する政治「制度」が有るか否かだというのが、本書の主張である。

    ■「収奪的制度」:絶対主義、一部のエリートによる支配、新技術導入への渋りや妨害、商業の独占・・・etc
    ■「包括的制度」:多元的政治体制、議会の機能、イノベーション(創造的破壊)への寛容性や促進、認められた財産権・・・etc

    これらの制度の違いによって(たとえ小さな相違でも)、決定的帰路(たとえば、「新大陸の発見」や「産業革命」)が訪れた際に、その恩恵を享受して継続的な発展を手にできるかどうかが決まるという。

    収奪的制度の元でも、一定の発展は見受けられる。
    しかし、包括的制度の元での発展と違うのは、そこに「持続性」が認められないこと。

    これらの主張を、原始時代、ローマ帝国、コンゴ民主共和国、ロシア、産業革命前後のイギリス・・・非常に広範な歴史を紐解いて論じている。

    ■巻末に出展と解説が多少あるものの、脚注がないため、やや信憑性に欠ける部分がある
    ■全ページが塗りつぶしたように文字ばかりで、箇条書きでのまとめなどがないため、読み辛さを感じる時がある

    などの点は気になったが、「全ては制度」という明快な主張を通していて、一読の価値はとても高いと思う。
    下巻では明治維新に至る日本の事例も出るそうなので楽しみ。

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    2014年04月27日
  • 国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)

    Posted by ブクログ

    ☆チャーリーおすすめの一冊!
    非常に難しい内容ではありますが、とてもためになります。活用できる部分も多く、自分に取ってはバイブルとなる1冊です。

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    2014年03月26日