浅川芳裕のレビュー一覧
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カイロ大学が話の中心とはいえ大学の内容よりも、エジプト人の近代化へと進む過程にぶつかるアイデンティティーの模索(自身をアラブ人を軸として考えるかイスラム教を軸として考えるか)が、日本の近代化の時の苦しみ(欧米人の自我と日本人の自我の違いなど)と同じと勝手に解釈しながら興味深く読みました。
エジプトではカイロ大学の理念の揺れ動きによって(時代によって支持する思想が変わっていくので)時の政権と軍事衝突を起こしているようです。
そうした流れでアルカイダやISが生まれたらしいが、それを踏まえて考えると彼らには国の概念が無いのも頷けました。
人間を国や民族ごとに分けて考えるのではなく、信仰している -
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実は日本の農業の実力は高く、農林水産省の陰謀で過小評価されているだけですよと主張する一冊。
副題にある食糧自給率を例に出すと、
・日本の自給率はカロリーを基準にするため、野菜を作っても自給率はほとんど上がらない
・実際海外の国でカロリーベースの自給率を使用している国はほとんどない
・家庭菜園などで作られる作物は考慮されていないため、自給率が過小評価されている
・外食における食べ残しや、揚げ物に使用する油も必要カロリーとして考慮されているため、自給率が必要以上に低く見積もられている
等々問題だらけであることを暴露する。
ちなみにだが、筆者の履歴がかなり変わっており、カイロ大学でセム語(アラ -
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【混沌に学んで】ヤセル・アラファトやサダム・フセインが在学したこともあるエジプトのカイロ大学。実際に留学経験を持つ著者が,何故に同大学が「世界最強」であるかを熱狂的に語り記した作品です。著者は,『日本は世界5位の農業大国』等の著書でも知られる浅川芳裕。
留学記としての面白さはもちろんのこと,一味違った中東近現代史の紹介本としてもオススメ。特に,カイロ大学の興りとエジプトのアイデンティティをめぐる問題の記述は非常に勉強になりました。
〜カイロ大学とは自分を信じる若者にとって,底知れない漆黒の海のようなものかもしれません。〜
「著者は,読者が本作品により実際に留学したことに伴う諸々の責任を負 -
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日本の農業に力があると言っているだけでなく、農水省の食料自給率アップの政策に、自らの省益をまもろうという意図があることを明らかにしている。また、カロリーベースの自給率の分母には食品廃棄物も含まれており、生産額ベースの自給率が66%というのも目から鱗の思いであった。
最も読み応えがあったのは、農水省の政策(規制)を解説した2章と3章。減反政策をまもっているかどうかを確認するために何万人もの職員が水田を見回っていることや、小麦やバターの国家貿易、ミニマムアクセス米の管理、豚肉の差額関税などによって、特別会計の財源にしているとか、食糧安全保障を行わない場合の不安をあおっているという。農業生産者や国 -
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日本は工業立国ではあるけれど、農業人口は少なくて食料自給率は低く、戦争がない平和な世界だから良いものの、また、製造業がお金を稼いでいる内は良いけれど、ひとたび危機がくれば日本国民は飢え死にしてしまう、というのが先週までの私の認識でした。
実際、この趣旨で書かれている本は多くあると思います。ところがこの本を読んで具体的な数値を示されて、「そうではない」と確信しました。
実は、これと同じ内容を今までにただ一人「日下公人氏」が著作の中で言っていたのは印象的であったので覚えていますが、それについて書かれた本ではなかったので、具体的な数値も少なく、考え方を変えるまでにはいきませんでした。
こ -
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農業に関してド素人の自分には、あまりにも衝撃的。1ページも目を離すことができない。自給率というもののデタラメさ、農水省による農業の統制経済化、天下りのためのいらない仕事の創出等々、年金未納問題発覚時の社会保険庁に匹敵するダメさ加減。経済政策、金融政策の場面でもおなじみの官僚の無謬性という、丸山眞男が半世紀前に論じたことがここでも顔をだし、おなじみのキャリア官僚の無能さが農業の現場ではアクセル全開だ。
年金問題の時に厚生族の議員達に対しても思ったけど、自民党の農水族という連中は、一体なにをやっていたのだろう。ここまで酷い状態を放置していたというのは連中のガバナンス能力が皆無であることを示して -
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政府や農水省のプロパガンダとして掲げられることの多い、食料自給率はまさかの意味のない数値だったという、とんでもない暴露から始まる本作。
当たり前と言えば当たり前だが、国内産業保護のため、農作物に対して高い関税を掛けつつ、国内の農家を補助金漬けにする政策により、日本の農業は危機に瀕している。
資産管理と同じで、農作物の供給源も分散していることが望ましい=国内自給率を高めても安全とは言えない。
また自由貿易、自由競争を促進し、市場の原理を適用することで、生産性が高まっていくはずであるが、日本の農業は保護されすぎて鈍っている。
経済原理からすれば至極当たり前だが、なぜか農業に対してはノスタル -
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エジプトは、日本人の私をそのままで受け入れてくれるなど、多様性の高さを感じた。その根底がわかるような内容であった。様々な時代を様々な考えをぶつけ合いながら乗り越えてきたエジプトは奥が深い。他の中東国のように一辺倒ではない。
カイロ大学出身の友人が「日本を嫌いになることはないですよ。」と穏やかに言うその言葉も、この本を読んでみるととても深い言葉に思える。
また、今世界中で起きているイスラムにまつわる事件に、カイロ大出身者がからんでいることもわかった。よくあることだけど、最初に考えをもって行動した人と、それに影響されて行動した人では、どんどん考えがずれていってしまい、混乱につながる。 -
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本当は選挙終了までに読み切りたかったが、ドナルド・トランプが次期大統領に決まってしまってから、読み終えることとなった。
選挙中盤、ドナルド・トランプが優勢なのではないかという噂を耳にして、なぜそのようなことが言われるのだろう?と思うと共に、日本ではアメリカの実際の声が入ってきていないのかもしれないという思いも沸いてきていた。
傍目からすると、豪快なでっかいおっさんが、突如現れ次々と候補者をなぎ倒していく。それに対して、ヒラリーはそつなく大統領候補となっていく。
日本人の目からすると、ヒラリーの方が次期大統領としては望ましいと思われたというバイアスもあったのだろう。
しかし結果は違った。 -
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食の安全に興味があって購入。
日本の食料自給率が低いと思い込んでいた背景が書かれていて、カロリーベースと生産額ベースで見るとこんなに違うのかとビックリした。
農家の数は減っても生産性が増えてるから、少数精鋭ということらしい。
そもそも趣味でやってる人は年金生活の人も多いから、平均年齢が高齢化するという事実に納得。
確かにスーパーに行っても、キャベツや玉ねぎとか、普通の野菜は国産が多いと思ってたから、7割はまかなえてると言われて納得。
広い庭で趣味で作ってる生産物は集計に入らないのに、野菜の廃棄物は分母に含めるって何だか不思議。
最近は企業と個人やインターネットでの販路の拡大とか、政府に媚びな