あらすじ
◆中東のハーバード! ?といわれるエジプトの名門カイロ大学! ?
◆小池百合子が卒業していたことで注目を浴びた大学はあのサダム・フセインから、アラファト議長をはじめガリ国連事務総長、
ノーベル文学賞受賞者からアルカイダ指導者まで多種多様な人材を輩出した特殊な大学であった。
◆かつてカイロ大学に通っていた著者が現在のキャンパスを丹念に調査し、その歴史までもひもとく入魂のノンフィクション!
◆中東の近現代史にきわめて重要な存在感を出す、カイロ大学はエジプトという政治大国における首都大学という位置づけだけでなく、
特異な建学の精神、過激な学生運動から、もたらされる文化・伝統にあった! ?
◆学生生活からエジプト革命まで謎のベールが今明かされる
■“闘争”と“混乱”が生み出す世界最強のカイロ大学
筆者がカイロ大学のオリエンテーションを受けたとき、担当者からいわれた最初の言葉は「混乱の世界へようこそ! 」です。
実際、カイロ大学のキャンパスで実体験した混乱の根は想像以上に深いものでした。
そんな混乱を経験済みのカイロ大学出身者の共通点は、乱世に強いことです。
(中略)カイロ大学は世界に混乱をもたらす人物と平和を求める出身者が混在しているのが特徴です。
どちらの側につくにしても、両者の間では死ぬか生きるかの思想闘争が繰り返されています。
混乱と闘争という学風を持つカイロ大学が彼らの人生に、学びの園という領域を越えた影響を与えているというのが本書の主題です。(本文より)
◆本書の内容
■第1章 カイロ流交渉術の極意
■第2章 世界最強の大学―カイロ大学
■第3章 カイロ大学―混乱と闘争の源流
■第4章 カイロ大建学者思想の申し子たち
―――ターハ、バンナ、ナセル、クトゥブ
■第5章 カイロ大学―政治闘争と思想輸出の前線基地
■第6章 カイロ大学留学のススメ
■第7章 カイロ大学留学体験記
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
カイロ大学が話の中心とはいえ大学の内容よりも、エジプト人の近代化へと進む過程にぶつかるアイデンティティーの模索(自身をアラブ人を軸として考えるかイスラム教を軸として考えるか)が、日本の近代化の時の苦しみ(欧米人の自我と日本人の自我の違いなど)と同じと勝手に解釈しながら興味深く読みました。
エジプトではカイロ大学の理念の揺れ動きによって(時代によって支持する思想が変わっていくので)時の政権と軍事衝突を起こしているようです。
そうした流れでアルカイダやISが生まれたらしいが、それを踏まえて考えると彼らには国の概念が無いのも頷けました。
人間を国や民族ごとに分けて考えるのではなく、信仰している宗教によってまとめあげようとしているのかと。
かつてのイエズス会を思い出して怖くなってしまいました。
Posted by ブクログ
【混沌に学んで】ヤセル・アラファトやサダム・フセインが在学したこともあるエジプトのカイロ大学。実際に留学経験を持つ著者が,何故に同大学が「世界最強」であるかを熱狂的に語り記した作品です。著者は,『日本は世界5位の農業大国』等の著書でも知られる浅川芳裕。
留学記としての面白さはもちろんのこと,一味違った中東近現代史の紹介本としてもオススメ。特に,カイロ大学の興りとエジプトのアイデンティティをめぐる問題の記述は非常に勉強になりました。
〜カイロ大学とは自分を信じる若者にとって,底知れない漆黒の海のようなものかもしれません。〜
「著者は,読者が本作品により実際に留学したことに伴う諸々の責任を負うものではありません」という但し書きは必要な気がしますが☆5つ
Posted by ブクログ
エジプトは、日本人の私をそのままで受け入れてくれるなど、多様性の高さを感じた。その根底がわかるような内容であった。様々な時代を様々な考えをぶつけ合いながら乗り越えてきたエジプトは奥が深い。他の中東国のように一辺倒ではない。
カイロ大学出身の友人が「日本を嫌いになることはないですよ。」と穏やかに言うその言葉も、この本を読んでみるととても深い言葉に思える。
また、今世界中で起きているイスラムにまつわる事件に、カイロ大出身者がからんでいることもわかった。よくあることだけど、最初に考えをもって行動した人と、それに影響されて行動した人では、どんどん考えがずれていってしまい、混乱につながる。
Posted by ブクログ
ベスト新書らしからぬテーマなのだが、持ち込み企画ではないらしい。編集は小池百合子の話をメインにしようと思ったのだろうが、とんでもなく濃厚な作品に仕上がってしまった。それでもベスト新書の色が出ているのは著者が研究畑ではなく、ネタ系の国際本を多く手がけているからか。元在校生として中田孝をリスペクトしているが、小池をぞんざいに扱っている訳でもない。著者と小池は入学の経緯は直談判ということで共通しているらしい。在校生27万というのは世界最大規模なのかどうか分からんが、UNAMやブエノアイレス大はそれ以上だったかな。日大は10万と言われていたけど、7万程度なのか。カイロ大のウィキでも有名人ザクザクが分かるが、中東プロパーの人たちにとっては、別格になるんかな。アズハル大、カイロ・アメリカン大という両極とは違って、全てを包容するのがカイロ大ということになるんだろうが、著者が在籍したアメリカン大の記述はあるが、アズハル大は何で詳しく言及されていないんだろう。逮捕勾留の武勇伝は何とも言えんけど、大学と出身者の記述は素晴らしい。