佐々木実のレビュー一覧
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小泉内閣で大臣を務め、現在でもその言動が話題になる竹中平蔵。格差社会の「元兇」として、ネット上ではもっぱら批判の対象として語られるが、その実像はいったいどうだったのか、以前から気になっていたため、受賞するなど評価が高い本作を読んでみた。読んでみて印象に残ったエピソードはいくつかあるが、ここでは以下の3点について取り上げたい。ひとつめは、竹中がまだ表舞台に登場する前の1984年のこと。処女作を上梓するのだが、なんとそれはじっさいは共同研究だったものを、共同研究者に無断で個人の研究成果として発表してしまったというのである。竹中はのちに国会やメディアの場でときに独善的ともいえるような主張をしばしば展
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こんな人だったんだとおもろきの1冊。
宇沢さんといえば、数学が得意で、経済学の科学化に貢献した人。でも、市場原理主義ではなくて、社会資本、公共財といったところにも、議論を広げた人という印象だった。
が、これによると、もともと数学科だったのが、マルクスにいき、その後、アメリカで行動主義的な経済学者として業績をだしたのち、日本に帰ってからは、公害問題などに関心をもって取り組んだ人。
つまり価値中立的ではなく、価値判断をいれるしかないということをやった人なんですね。
これはすごいことだ。
そして、それを定性的に語るのではなくて、定量的、経済学の一般均衡論のロジックを使って、その理論の内在的 -
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経済学という学問にこれまでどうしても興味を持てなかった。
世の中の実に多様な側面を、「経済」という一つの視点だけで切り取り、それだけで「良い悪い」を判断している学問だという偏見を持っていたからだ。
でも本当に優れた経済学者は、決して経済が世の中の良しあしを決定する因子ではなく、
あくまで人間の幸せを考えたうえで、そのアプローチの一つとして経済学を認識していることを知り、そういった優れた学者たちに畏敬の念を覚えた。
本書の主役である宇沢弘文さんは、その優れた経済学者の最たる人物であろう。
経済学の世界の最先端であるアメリカ・シカゴ大学のスター教授の一人として、輝かしい経歴を持ちながら、人類、 -
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金融界の不良債権処理にあたっての繰延資産税金資産算入を厳格化、監査法人を指図して銀行を破綻させ、公的資金投入を実現、郵政マネーに目をつけたアメリカになびくような郵政民営化の推進、オリックス宮内社長と組んで規制改革利権に手を染めるなど、竹中氏の利にさとい戦略的な手法に切り込む。
猛烈な野心を持ち学者と称しながら政治的、柔軟ではあるが節操がない、効率性のみを追求し、公正、平等性を無視する・・・竹中氏の真の姿が著者によって鋭くえぐり出される。
テレビなどで見る穏和な表情と柔らかいしゃべり方から自分が持っていた竹中像が音をたてて崩れおちた。
「改革派」という聞こえの良さとは裏腹に多くの敵を作っている -
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数理経済学という学問分野において、間違いなく日本を代表する存在として、多数の論文により学問の進展に多大なる影響を与えつつ、突然の沈黙により学会から距離を置き、半ば”仙人”のような風貌で晩年を送った経済学者、宇沢弘文。本書は彼の半生と数理経済学という学問の発展とその限界を炙り出す超一級の評伝である。
経済的合理性に基づいて一切の行動を取るという仮定の存在たるホモ・エコノミクスの存在を前提とし、近代の経済学では人間行動を数学を用いたモデルにより表現することで学問としての精緻さを明晰にすることに成功した。一方、そうしたホモ・エコノミクスという存在の仮想性に目を付け、新たな理論を立ち上げたのが20世