津上俊哉のレビュー一覧
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2000年代頃はまだ経済的に日本の方が強かったので中国との対立といってもどことなくヘラヘラしたようなところがあった気がするが、2010年代の後半あたりから中国がアメリカにも対応しうる大国に成長し、対中関係の緊張感が格段に上がった気がする。
香港のこととコロナを経て今の日本人の中国に対する警戒感は凄まじく高いが、今後もずっと中国が膨張政策を取ることはないと著者は言う。膨張政策を取らないというか取れなくなっていくようだ。
文革時代の革命の嵐から改革開放時代の拝金主義まで中国はドラスティックに変化する国でもある。今の習近平政権下の中国の左傾化・保守化も下の世代に渡ればまた右傾化・自由化の揺り戻しが起 -
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よくある中国本とは一線を画す。著者の情報量と的確な分析力は他を圧倒している。
要点は、中国は今後急速な高齢化と人口減少で経済が失速し、GDPで米国を追い抜くことはない。ただしこれまでのストックがあるから、経済が一気に破綻することもない。共産党1党支配についても、中流層の現状維持慣性により、喧伝されるほど不安定化しない。
本当にその通りだと思う。バブルというのはどんな時でもその最中では見えにくいものだが、さすがに今年(2015)に入って失速ぶりが誰の目にも明らかになってきた。中国政府も”新常態”として当の中国人民のセンチメントを変えようと必死である。一方南沙諸島では力で現状を変える動きが加速して -
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最近バブル崩壊報道の多い中国ですが、本書は現在の中国の経済状態を解説しており、同国のおかれた状況を把握するに適した一冊と言えます。
またそれ以外に、経済と言う観点から観た米中関係や両国の狭間にいる日本の姿を解説しており、東アジアにおける国際政治を考える際、大いに役立つのではないでしょうか。
内容の方は、リーマンショック後に取られた景気刺激策の後遺症に苦しむ中国の現状や、様々な国内問題の解決を目指す習近平改革の内容とその問題点を解説した後、
「経済に誤魔化しは効かない」、「国の盛衰は経済次第である」との考えに基づき、国際、国内政治における中国政府の事情や思惑、そしてアメリカの事情や思惑等を推 -
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今後のアメリカの対中政策がどうなっていくのかが、興味ふかい。米中貿易戦争と言われる様な状況が生まれた。それは、一体 何を巡って争っているのか?そして、それをお袈裟に仕掛けたのがトランプ大統領。中国に対して「関与政策」から「封じ込め政策」に変化した。
米中貿易戦争は、それがトランプ個人に起因するものなのか、あるいは米国社会の変化に基づくものなのか?トランプが再選されれば続けられるが、バイデンに変われば、対中政策は変わるのか?
米中貿易戦争の行方を注目したい。
アメリカファーストと言って、保護貿易主義にトランプは大きな舵取りをした。コロナ騒動によって、世界貿易の変容は生まれ、人々の往来は極めて少な -
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たくさんのデータを使っているにも関わらず、非常に読みやすい本です。
氏は、元官僚、ちょっと前は、会社の社長、今は、中国研究家と、相当な中国通だと感じられる経歴の持ち主です。
氏の独特のユーモアが効いているのか、難しい中国経済の話しもスラスラ読むことが出来ます。
日本では、「そろそろ中国経済が崩壊するのではないか?」、「不動産バブル崩壊!」、
「一党独裁崩壊!」と、中国に関して、ネガティブ報道が主流ですが、どれも、
根拠に欠ける気がしていました。
どちらかというと中国の「反日」に対する少なくない日本人の「願望」のような気がしていました。
氏は、統計データーから、中国経済の現状を解説してい -
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中国の停滞は一過性ではないよ・・・
中国経済は瀬戸際あるよ・・・
著名な中国ウォッチャーの新刊・・・
リーマンショック後、苦しむ先進国を尻目に高成長に返り咲いた中国・・・
今後も高成長を続け、2030年までにはGDPでアメリカを追い越すとまで見られていたけども・・・
シャドーバンキングの問題がクローズアップされるなど、ここ最近どうも変調を来たしている・・・
短期的には下記の後遺症の問題、中期的には国有企業が幅を利かせる非効率な経済による生産性の低下、長期的には日本と同じく少子高齢化から来る人口オーナスの増大・・・
前著で中国台頭の終焉を予見した著者だけれども、今回はその続き・・・
リーマンシ -
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中国は2017年にもGDPでアメリカを抜き世界一の経済大国になる・・・
という楽観的な見通し・・・
そこまででなくても、いずれ、10年もすれば、アメリカを抜くだろう・・・
こんな見通しをよく聞きます・・・
が、果たして?
著者はそんなものは幻想であると言う・・・
まず、ルイスの転換点を通過した中国は、そもそもに5年前に既に中成長モードに入っていたろうと推測する・・・
過去、中国の劇的な成長を支えた要因の多くが、既に、もしくは今後ピークアウトしていく・・・
今や、既にもう、潜在成長率が5%前後の中成長時代だろう・・・
そして、そんな中成長の中国に短期、中期、長期の課題が待ち構え -
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新型コロナウイルス感染症の流行以降、米国と中国との対立があらわになった。これから中国はどう動くのか?同国で今起きている変化、課題を読み解き、その未来を見通す書籍。
2020年、米国は、コロナ・パンデミックの責任は中国にあると批判し、新疆ウイグル自治区での人権侵害批判も強めた。
一方、中国の対米政策も、米国と「長期持久戦」を闘っていく、という方針に大きく転換した。その理由は、次の2つだ。
・米中関係の回復は望めそうにない、と見切りをつけたこと。
・対米観に大きな変化が生まれたこと。かつての米国は仰ぎ見る存在だったが、中国の経済発展につれて、「中国の方が優れている」という考えが生まれるようになっ -
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リーマンショックを受け、中国は57兆円もの公共投資を発動する。おかげで中国経済は劇的な回復を遂げ、いっときは世界経済の救世主とまで讃えられる。しかし、負債と投資を増やして成長を嵩上げするやり方は、いつかは止めなければならないときがくる。行け行けどんどん方式の投資は、本来やるべきでない、値打のない投資に手を出し、償還まで金が回らない低収益な投資事業を山のように生んでしまう。不採算投資がマクロに積みあがっていけば、経済全体で将来の融資に回せるお金が減る。借金は積みあがっていくのに経済全体のパイは大きくならない。財政には持続可能性の欠片もない。儲けの出ない資産とそのための負債が膨張し続けると、国全体
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■中国台頭の終焉
A.今の中国経済は、効率の悪い政府や国有企業が経済の中心を占めている。特に4 兆元投資の大半が国有企業に流れたため、国有セクターの膨張・隆盛と民営セクターの相対的衰退の傾向はますます顕著になった。このままでは、中期的にも5%の潜在成長力さえ失って、停滞に入る危険が大きい。
B.中国には、少子高齢化という長期的な問題もある。2010 年の調査によれば、中国の出生率は1.18 と、日本よりも低い。この数値を基に推計すると、中国の総人口は20 年をピークに減少に転じ、生産年齢人口は13 年をピークに減少に転じる。
C.労働人口が減少すると、現役1 人1 人が頑張っても、国全体