【感想・ネタバレ】「米中経済戦争」の内実を読み解くのレビュー

あらすじ

大統領選挙期間中、トランプ氏は「中国製品に45%の関税をかける」という公約を掲げた。当選後の米中首脳会談では一転、中国側が貿易赤字削減のための100日計画を作ることのみが発表されたが、米中の世界経済における覇権争いには今後大きな波乱が訪れるのではないかと考える人も少なくない。本書では、中国経済の的確な見立てに定評のある著者が両国の今後を読み解く。特に、北朝鮮をめぐる「取引(ディール)」がすでに始まっている可能性があると説く。中国がこれまでの基本姿勢を改めて北朝鮮の現体制を崩壊させるように動く代わりに、在韓米軍が撤退する――日本にとっては極めて憂慮すべきシナリオも考えられるというのだ。さらに、後半の章では中国経済の行方を明快に解説。これまで極めて健全であった中央財政の赤字幅も急増しているという衝撃について語る一方、モバイルネットワークを活用した「ニューエコノミー」が急成長しているという明るいニュースも紹介する。

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Posted by ブクログ

今後のアメリカの対中政策がどうなっていくのかが、興味ふかい。米中貿易戦争と言われる様な状況が生まれた。それは、一体 何を巡って争っているのか?そして、それをお袈裟に仕掛けたのがトランプ大統領。中国に対して「関与政策」から「封じ込め政策」に変化した。
米中貿易戦争は、それがトランプ個人に起因するものなのか、あるいは米国社会の変化に基づくものなのか?トランプが再選されれば続けられるが、バイデンに変われば、対中政策は変わるのか?
米中貿易戦争の行方を注目したい。
アメリカファーストと言って、保護貿易主義にトランプは大きな舵取りをした。コロナ騒動によって、世界貿易の変容は生まれ、人々の往来は極めて少なくなった。ある意味では、コロナ騒動によって、貿易そのものが低減する事態が生まれた。
トランプが、アメリカファーストとして、世界のリーダーという座を降りることで、TPP離脱、2017年6月に気候変動対策のパリ協定から離脱すると宣言し、2019年11月4日に正式に離脱した。大きな世界の力関係が変わってきている。一方で、習近平は、一帯一路、AIIB(アジアインフラ投資銀行)を中心とした、中国中心のグローバリズムを初めている。トランプが明け渡した隙間に着実に浸透している。米国主導のIMF(国際通貨基金)や、日米主導のADB(アジア開発銀行);68の国が加盟。がある。AIIBは、2020年9月時点で、AIIBには102の国・地域が加盟。2020年7月時点での投融資額は約200億ドル(約2兆1千億円)。先進7カ国であるG7内で見てみると、日本と米国だけがAIIB未加盟。
そういう中で、津上俊哉の「米中経済戦争の内実を読み解く」を読んでみた。
著者は、通産省の役人で、中国日本大使館の参事も経験があり、中国のデータの読み解きは、わかりやすい。
中国では、ニューエコノミー(IT・ビッグデータ経済)が好調だが、オールドエコノミー(官製重厚長大型経済)不振傾向が継続しているという指摘は、重要だ。とりわけ、オールドエコノミーは、国有企業で規模も大きい。権益者があるので、介入も難しい。これが、放置されることが、中国の債権が、積み重なっていく。
「アメリカ人の雇用を奪ったのが、中国である」というトランプの言葉が、エスタブリッシュや中国に不信を感じている人々が、そっくり取り込まれた。その中心的な政策的リーダーが、ナヴァロ 国家通商会議委員長で、「中国がもたらす死」や「米中もし戦わば」を売り物にしている。
中国は、米国債の大量保持者であり、為替問題で争うことは、中国に大量売却させることになるので、為替問題では攻められない。また、中国の首脳陣はよく心得ているので、元安を誘導する。そこで、貿易の関税問題で戦うことになる。アメリカと中国は、新型大国関係として成立している。
台湾、北朝鮮に関してのトランプと習近平のやりとりは、よくつかまれている。北朝鮮は、どうしても核を放棄することは、できないので、それを習近平とトランプの駆け引き材料とされる。
中国は、習近平を中国共産党中央の核心として位置付けることで、江沢民派に対して腐敗摘発に勤しむことができた。一方で、地方政府が、土地の地上げにアクセルを踏み、不動産のバブルが続いている。どう、中国の経済を安定させるかがポイントであるが、中国には「2020年に国内総生産(GDP)を10年の2倍にする」という大きな国家目標があ李開発、習近平も承認している。中国共産党はその達成が貧困層の撲滅、国民の生活水準向上につながると言ってきたので、21年に建党百周年を迎えることもあり、絶対に下ろせない金看板だ。そのためには6.5%以上の成長を続けざるを得ない。
新常態ーニューノーマルの中で、GDP成長だけにとらわれない新しい成長の基準を出せるかにかかっている。中国を総合的に俯瞰的に見ることができた。

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2020年10月07日

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