小林晋のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
著者は二人でペンネームは創作。片方が好んでいた名前(フランシス)と、もう片方の家がある地名(ビーディング)から合作されている。ともにオックスフォード大を卒業して国連で勤務した異色の経歴。フーダニット(Who has done it ?)というジャンルで、作中で与えられた手がかりから、犯人を突き止めることを主眼とした推理ものである。舞台は、イギリスの海辺に面した保養地で、犯罪には無縁そうな静かな土地。冒頭、そんな町へ人目を忍んで、定期的に逢引きに訪れる男性が登場する。彼はその町の住民から財産を騙し取った過去がある。逢引きの相手の女性、彼女に横恋慕する従兄、この町に住む住民が関係性を伴いながら紹介されていく。精神に異常をきたした金持ちの息子とその従者など、真犯人への予見を与えるような情報が提供されていく。最初の殺人が行われ、単発と思われた犯罪が、共通する手口から連続殺人と認定され、静かな町に、じわじわと得体の知れない恐怖が広がっていく。殺人者の正体や特徴が明かされないなかで、直接犯人に対面して殺されていくという場面が不気味である。怪しげな犯人像から、犯人を特定して逮捕するが、犯行は続き誤認とわかり、真犯人探しへと警察力が動員されていく。新たな犯人逮捕、裁判、刑の執行と続いていくが、真偽は不透明なまま残ったページから新たな展開が予見され、読者の消化不良感を払拭するように、一気に全ての謎が判明していく。フーダニットの謎解きはできるのだろうか。犯罪は狂気か正気か、そんな問いかけが込められている。
-
Posted by ブクログ
海辺の田舎町イーストレップスで起きた連続殺人。
フランシス・ビーディングというかって高く評価された作家の長編、初翻訳。
1931年発行の往年の名作ということです。
どう見ても無害そうな村の女性がよく通る道で殺されるという発端で、日常が覆ります。
大佐の妹メアリーで、老いた兄との暮らしは煮詰まり気味ですが、友達の家の美しい庭を見るのが楽しみで出かけていました。
しかも、また別な殺人が‥
共通点の見つからない被害者だが、手口はほぼ同じ。
警察は深刻な事件に慣れておらず、迅速に活躍してみせたいと思っても空回り、人手も足りない。村から観光客がどっといなくなってしまっただけ。
ロンドン警視庁(スコットランドヤード)から捜査陣がやってきます。
頭の鋭そうなウィルキンズ主任警部がやってきて、解決のめどが立つかと思われましたが?
視点はまず、シティの実業家のエルドリッジ氏から始まります。
マーガレットという愛人がいて、生まれて初めて愛を知った状態ですが、彼女の離婚が成立するまで付き合いは極秘。しかも、この男、過去を隠している‥ 読者には最初からバレバレなわけですが(笑)
一方、村に静養にやってきた若者アリステアも。
貴族の跡取りだが奇行が目立ち、夜は部屋に閉じ込められているのでした。
たまたま家族で滞在していた新聞記者のフェリスは、現場から特ダネを送ろうと、警官に接触します。
後半は法廷シーンもあり、意外な展開もあり。
全体に手堅い印象です。それは近年の作品だとしても。
ミステリ黄金期に入る直前位の、あの時代に書かれていたということを考えると、なかなかすごいなという衝撃がありますね。
「このミステリーがすごい!2026年版」海外編、第7位。 -
Posted by ブクログ
ネタバレイギリスの作家、フランシス・ビーディングの作品。二人組の作家とのこと。邦訳は20年前くらいにポケミスから一作あり。
風光明媚な田舎町で起こる連続殺人。スコットランド・ヤードが解決に乗り出すも、嘲笑うかの様に死体は積み重なり…
発表された年月を知らなければクラシックなミステリとは気付けないほど、昔らしからぬ作品。
いわゆる本格モノではなく、フーダニットとしては若干弱いが、前半のサイコサスペンス風味、後半のリーガル風味、ラストのどんでん返しと、色々なジャンルを楽しめる作品。描かれた時代を考えると中々に凄い。
警察が弱すぎること等、気になる点はあるが良作。おすすめ。
-
Posted by ブクログ
飲食産業で成功を収めた富豪のヴェルディナージュが、マルシュノワール館に引っ越してくる。これまでの所有者には常に災いがつきまとってきた曰く付きの館だ。
再三舞い込む「この館から出ていけ」との脅迫状。
果たして雨の夜、謎の男の来訪を受けた直後、館の主は変わり果てた姿で発見される。
どこにも逃げ道のない館から忽然と姿を消した訪問者。捜査が難航するなか、探偵トム・モロウが登場し…。
フランスミステリーといえばツイスト博士シリーズのポール・アルテがすぐに思い浮かびますが、それよりも50年も前に書かれた本作は、なかなかどうして面白かった!次作も早く翻訳されないかなぁ。 -
Posted by ブクログ
引越してくると「この館から出ていけ」と脅迫状が届き… 純度満点の古典本格ミステリー #禁じられた館
■あらすじ
事業で成功を収めている富豪が、立派な館に引越しを決める。ただし、かつての所有者が不幸になってしまったという怪しげな館であった。
そんな彼のもとに「この館から出ていけ」との脅迫状が届くのであった。
■きっと読みたくなるレビュー
久しぶりに古典ミステリーを読ませていただきました。
まさに本格ミステリーで、脅迫状、怪しいキャラクターや個々の思惑、不可能犯罪の発生、探偵による様々な解法の提示、そして衝撃的な真相…
1930年代のミステリーですって。いやー素晴らしい。
まだまだ古典は読み切れてないんですが、こんな良作を発掘&翻訳していただいて、ファンとしては大変ありがたいです。
謎解きの設定自体は比較的オーソドックスですが、展開がいいですね。次々登場してくる刑事や弁護士などの探偵役が翻弄されていく様がお見事。
さらに曰くありげな登場人物たちがイイ!
みんな弱い人間ばっかりで、いまにも犯罪起こしそう。全員が怪しすぎるっ
そして事件当夜の描写が震えるんですよ。古い白黒の映画を見ているようで怖い怖い。
謎解きも綿密で、ひとつひとつがロジカルで本格ミステリーの重厚感たっぷりでてる。真相もはぁ?という驚きとともに、一方でなるほどなぁ~と思わず声に出してしまうほど納得感が高かったです。
読み応え十分、純度満点のヴィンテージミステリー。楽しく読ませていただきました。
■絶賛推しポイント
本作は序盤の引き込みがスゴイんですよ。
館に引越して来たら「この館から出ていけ」って脅迫状が届くんですよ。
でも当の主人は、そんなの知らねーよって居座り続ける展開。
ついに殺害予告の日が近づいてきて…
これは熱い!本格ミステリーファンとしては読み手が止まらなかったですね。 -
Posted by ブクログ
フランシス・ビーディング『イーストレップス連続殺人』扶桑社ミステリー。
1930年代のシリアル・キラー本格小説の発掘翻訳作品にして、『このミステリーがすごい! 2026年版』の海外部門で第7位にランクインした作品ということで期待は高い。。
全編を通じて、大時代的な表現はどこか懐かしさを感じる。しかし、連続殺人事件を描いている割りにはストーリーは単調で、結末を知れば、そこまで絶賛される作品ではないように思う。
風光明媚なノーフォーク海岸沿いの保養地イーストレップスで、老婦人のミス・メアリー・ヒューイットが友人のウィニフレッド・ダンビア夫人宅を訪れた帰りに何者かにこめかみを刺されて殺害される。
続けて第二、第三の殺人が同様の手口で繰り返され、街の住人たちは謎の殺人鬼イーストレップスの悪魔の影に怯えることになる。
そんな中、最初に容疑者となったのは貴族の跡取り息子で夜な夜な密かに外出するアリステア・ロッキンガムだったが、直ぐに容疑が晴れる。
次に容疑者として浮上したのは、ロンドン出張を偽装し、人妻のマーガレット・ウィザーズと密会する元詐欺師ジェイムズ・セルビーことロバート・エルドリッジだったが、裁判で真犯人とされ、死刑を宣告される。
本体価格1,650円
★★★ -
Posted by ブクログ
ネタバレイギリスのスモールタウンを舞台にした連続殺人を扱う、典型的なオールドファッションミステリ。
んー、これは自分にはあまりはまらなかったな。
序盤こそザ・古典な入りで、かつての罪を隠し身分を偽りながら生きるエルドリッジのいわくありげなこそこそとした生活がどう連続殺人と交わっていくのかとわくわくしたが、次々と登場してくる関係者達の割にキャラが頭に馴染む前に退場していく事案中心の流れに、気持ちが入り込まない。
最後犯人の自白を聞くに、なるほどと思う伏線というか全貌ではあったが、そういうパズル、辻褄合わせ要素が強くて人間関係の面白さってのが少なかったように感じたかな。
あれが起きて、これが起きて、それが起きましたみたいな血の通わない筋では、ラストのカタルシスはあれども、割に合わないちょっと長い道のりだったなという印象。
別に構わないのだが、ちょっとマニアックにより過ぎな解説も読み切れず、ことごとく噛み合わなかった。
小言など言わずにシンプルに翻弄される読書したいのに悶々。
このミス2026年版海外編第7位。