小松由佳のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
23歳で日本人女性初のk2登頂に成功した小松由佳さん。その翌年(2007)に、偶然にも小松さんの講演を聴く機会がありました。冷蔵庫大の氷塊が頭上に落ちてくるような命懸けの登山経験談に、彼女の好奇心の旺盛さと芯の強さを感じました。
小松さんはその後、東南アジアを旅し、風土に根ざした人の営みに魅せられ写真家に転身。2012年からシリアの内戦・難民を取材し続け、同年にシリア人男性と結婚し2児の母となります。
「アラブの春」の影響で、シリアでも民主化運動が拡大するも、アサド政権は徹底して弾圧。シリアの独裁政権は崩壊せず長く内戦が続き、700万人もの難民を生み、15万人もの民間人が虐殺されまし -
Posted by ブクログ
ネタバレ2024年12月、半世紀以上にわたり続いたアサド政権が突如として崩壊した。
本書は、その歴史的転換点の前後を、シリア人の夫を持つ写真家である著者が、自身の立場と経験を通して描き出した記録である。政権崩壊前のアレッポ訪問、ヨーロッパへ向かう難民たちの姿、そして崩壊直後のシリア。日々断片的には報道されるニュースでは捉えられない、人々の生き様が静かだが強い筆致で浮かび上がる。
取材から帰還した直後、著者を待っていたのは、夫から突然切り出される「第二夫人」の話だった。文化的背景として理解しようと努めながらも、理性では整理しきれない動揺と怒りが率直に綴られている。
圧巻なのは、政権崩壊直後に著者が訪 -
Posted by ブクログ
K2を日本人女性として初登頂した著者による半生の物語。
主にシリアでの取材体験から始まり、その後に勃発するシリア内戦で苦しむ家族とのやりとりや難民の生活の記述が進んでいく。
著者の感性や文章力は素晴らしく、とても頭が良く行動力のある方なのだとわかる。
国際結婚で深まる文化の違い、それをいかにして乗り越えるか、経済的には恵まれていなくとも精神的には豊かに暮らしていたシリア内戦前のアブドュルラティーフ家族、内戦で多くのものを失っても強く生きようとするシリア難民、日本は相対的に経済的には恵まれているが本当に日本人は豊かなのか、多くのことを考えさせられた。
自分の知らない暖かな生活が簡単に破壊 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『ラドワンはシリアで何を見たのだろう。その後、幾度となく尋ねたが、彼は決して語ろうとしない。記憶を封印し、消し去ろうとさえしているようだった。・・・確かなのは、そこで彼が、耐えがたい絶望を経験したことだ。
・・・・・
「結局、政府軍も反体制派も同じだった」』
NHKで著者である小松由佳さんのインタビュー番組を拝見して、彼女に魅了され、『人間の土地』を是非とも読みたいと想う。しかし、テレビの" 戦争・難民 " などのニュースもあり、心が重く、しばらく頁を開くことができなかった。
だが今は、様々な想いを味わい、涙しながらも読み進めて、本当に良かったと想う。
わたし自身を -
Posted by ブクログ
10年ほど前のことですが
「アフリカ」方面をお得意とする
旅行会社に勤める友達と語ることがあった
ー
いゃあ 最近の「一人旅」は
断然 女性ですね
荷物一つを背負って
世界の辺境へ旅に出て
面白かったぁ
と 話してくれるのは
今や女性、しかも20代の若い人
いゃあ
いま 世界を股にかけているのは
女性です
という言葉を
思い起こしました
小松由香さんが
そうであったかどうかは わかりません
でも
その実行力、思考力、能動性
そして卓越した問題解決能力
には脱帽です
小松由香さんのような方を
ほんとうの国際人と
言うのでしょう
気持ちがいつも
外に開かれている人は
やはり
素晴らしい -
Posted by ブクログ
すばらしい本だった。
おそらく泣き喚きたくなったであろうことも含め、感情的になりすぎず、ただそこに居合わせた観察者としてまっすぐにシリアを綴っている。作者が何かを分析したり価値づけたりすることがなく、自分の存在の小ささを知る者の謙虚さがにじみ出ている気がした。一方で、その小さな人間一人ひとりが悠久から脈々と受け継いできた大きなものの存在についても語られる。
シリアの砂漠を愛する人たちの姿が目に浮かび、会ったこともない人たちを愛おしく思った。またISISが地元の人たちにとってどんな存在であったかなど、よく伝わってきた。そして、動乱が内戦ではなく革命と呼ばれることなどを、今ミャンマーで同じ言葉を耳 -
Posted by ブクログ
ネタバレTRANSIT VOICE~旅するポッドキャストの#7
を聞いて、小松さんの人生の話に魅了されて購入しました。
全体を通して思ったのは、小松由佳さんの生命力の強さ。ポッドキャストを聞いていても思ったけれど、文章を介して、より彼女のパワーが伝わってくる。
_____
わたしには同じに思えても、生命に溢れ四季もある砂漠の美しさや、ラクダとの戯れ。お茶や食事をゆっくり時間をかけて囲み、家族や友達とゆっくり休息をとること、「ラーハ」の時間を多くもつ人生を幸福だと捉える、人々の暮らしの様子が鮮やかに描かれていた。
前半の彼らの暮らしが鮮やかだった分、シリア内戦勃発後が余計に辛い。「難民」と -
Posted by ブクログ
まず著者がすごい人。K2登頂だけでもすごいのに、その後の生き方がまたすごい。というか、たまたまシリアに縁ができ、今の夫、夫の家族との付き合いが始まったところにシリアの内戦が始まり、シリアの人々の苦難に沿うことになった。
どう解決するのか、いつ解決するのか、全く見通しが立たない。
遊牧民の大家族の幸せな暮らしが一変してしまったのがとても辛い。
シリア人の一族を通して、シリアの人々のことを考えさせてもらったことに感謝する。今後の家族のこともとても気になる。ものすごく逞しく生きていらっしゃるが、逞しくならなければ生きていけないということでもあるだろう。
何かできることがあるはずだが、とりあえず今はシ -
Posted by ブクログ
アサド政権による独裁、IS(イスラム国)による支配、そしてアサド政権崩壊と混乱を極めたシリア。500万人以上が難民となり、700万人以上が避難生活を強いられました。そこで暮らす人々が、どのような境遇であったのかを描くノンフィクション。
著者の小松氏はシリア人男性と結婚し、シリアで暮らしていたという境遇から、激動のシリア情勢をジャーナリストとしての視点と、シリア人からの視点の両方から描いています。
アサド政権では秘密警察による反体制的言動のあった住民の逮捕が日常的に行われ、逮捕者は政治犯として拷問、虐殺されました。いつ誰に密告され逮捕されるのかという恐怖と共に暮らす息苦しさ、身内が逮捕され次 -
Posted by ブクログ
半端ない勇気と度胸を持ったドキュメンタリー作家、小松由佳が夫の生まれ育ったシリアを撮り語る。
アサド政権によって武力衝突に国土を破壊された国。
その暗黒の10数年、アウシュビッツよりひどいと言われるサイドナヤ刑務所。そこは政治犯とされた人々が片っ端に放り込まれた地獄だった。
その時秘密警察として人々を破壊したのも人間だ。
彼らはその行為に何を感じその後、どう思ったのだろう。
日本でも戦時中命じられた悪事を行えなかった者、悪魔になってしまった者が戦後を過ごしている。
シリアの彼らも今どうしているのか?
そんな世界はどこにも2度と来て欲しくないし、家族に体験して欲しくない。
だからこそこういう事実 -
Posted by ブクログ
ネタバレ冒頭のヒマラヤ登山の手記がとてもインパクトが強かった。以後も登山活動を中心としたドキュメントになるのだと思ったらそうじゃなかった。
内戦によって住む場所を破壊され、命の危険にさらされながらさまようシリアの人たち。求めるものはモノでもお金でもない家族とのただただ平和な生活。
独裁体制を固持し、民衆を顧みないアサド政権。そこに宗教観の違いや隣接する国の利権、利得に翻弄され続ける国に未来はあるのか。
2025年、アサド政権が崩壊し、状況は一気に変わりつつある。
ただ、このドキュメントはその5年前に書かれているので、重く先の見えない状況下で人々の求めているものは何か。人生で、生きる上で本当 -
Posted by ブクログ
小松由佳(1982年~)氏は、秋田市生まれ、高校時代に競技登山に打ち込み、国体やインターハイに出場。東海大学山岳部では海外遠征も行い、卒業後の2006年に同大学山岳部による世界第2の高峰K2登山隊に参加し、登頂に成功する(女性としては、日本で初、世界で8人目)。植村直己冒険賞受賞。秋田県県民栄誉章受章。その後、アジア各地の人々の日常を撮影するフォトグラファーに転身し、取材地のシリアで知り合った男性と結婚。
本書は、2008年に、シリアのパルミラの近くの沙漠でアラブ人の青年(ラドワン)と出会ってから、シリア内戦に翻弄されながらも、2012年にラドワンと結婚し、日本で2児の母となって生活する現在( -
Posted by ブクログ
シリアの内戦は2011年に始まり現在も続き、泥沼化している。
反政府勢力の戦死・犠牲者数は50万人、難民は400万人以上、国内避難民は760万人とも言われている。アサド大統領の政府勢力はロシアの支援を受けている。反政府勢力は、現在では欧米諸国に支持されていたが、一時はISやクルド人勢力が内戦に参加し、何がどのように戦っているのかも不明確な状態が続いていた時期もあったようである。また、最近ではサウジアラビアを含むアラブ連盟が12年ぶりにシリアの復帰を容認する等、外部の者にはにわかに何がどうなっているのかが分かりにくい状態が続いていると言える。いずれにせよ、シリア国民にとっては大災厄ということであ -
Posted by ブクログ
砂漠といえば、同じ景色が果てしなく続き、どちらかというと「死」のイメージが強かったけど、砂漠と共にある人々の営みや、砂漠が場所によって砂の特性などが違うことを知り感動した。
その豊かな日常が、悪化する圧政、ISの台頭に寄ってどんどん壊されていく様子は、生々しく恐ろしい。
すみ慣れた土地、築いてきた生活を奪われ、コミュニティを壊され、人々はその地を追われ、いつ終わるかわからない移民生活を強いられることとなった。
肉体的な負担はもちろん、精神的なダメージは想像するだけでも耐えがたい。
故郷を思う気持ち強ければ強いほど、その傷も深く、喪失感は計り知れないだろう。そういった点で、原発事故で家族ばらばら