シリアの家族

シリアの家族

小説・文芸
2,420円 (税込)

12pt

第23回開高健ノンフィクション賞受賞作

選考委員大絶賛!

書き手自身を取り巻く「人間」を、シリアの政治と歴史への深い理解とともに厚みをもって描ききった。 加藤陽子(東京大学教授・歴史学者)

大家族の幸せな記憶、その一瞬の光芒が眼前に浮かんできそうだ。名作である。 姜尚中(政治学者)

もはや言葉にすらできぬ過酷な日常を現実として生きた/生き続ける女性がいる。 藤沢 周(作家)

世界が抱える矛盾を独自の視点で描ききった秀作。 堀川惠子(ノンフィクション作家)

秘密警察も移民となったシリア人も政府軍兵士もイラン軍兵士も、すべて等身大の人間として描かれている。 森 達也(映画監督・作家)
※五十音順/選評より


風土に根差して生きる人々を撮り続ける著者は、シリアの沙漠で総勢70名という大家族アブドゥルラティーフ一家と出会い、その十二男、ラドワンと恋に落ちる。
やがて「アラブの春」から始まるシリア内戦に巻き込まれ、ラドワンは徴兵され、六男サーメルは政治犯として逮捕される。一家は故郷パルミラを追われ、難民として散り散りになってしまう。
脱走兵としてヨルダンに逃れたラドワンと結婚し、「シリアの家族」の一員となった著者は、異郷に生きる難民たちの取材を始める。

難民となりトルコで暮らして5年。一家の長である義父・ガーセムが、故郷に帰る夢を叶えることなく永眠した。アブドゥルラティーフ家の故郷パルミラの今を見たい・・・・・・。著者は11年ぶりにシリアに向かい、秘密警察の監視や親族による軟禁をくぐり抜け、かつて一家が暮らした家にたどり着く。
命がけの取材から帰還した著者を待ち受けていたのは、夫ラドワンの「第二夫人を娶りたい」という驚きの一言だった・・・・・・。

2024年12月、生きて故郷の土を踏むことはないと思っていたラドワン、そして多くのシリア難民に転機が訪れる。半世紀以上にわたって独裁を続けてきたアサド政権が崩壊したのだ。
政権崩壊から8日後、著者はラドワンと長男と共にシリアに入る。逮捕されたサーメルの消息を求め、「人間虐殺の場」と呼ばれたサイドナヤ刑務所を訪れる。その現場で目にしたもの、そして数少ない生存者が語った言葉は衝撃的なものだった。
激動のシリアを生きた市井の人々の、等身大の姿を描くノンフィクション。

小松由佳(こまつ ゆか)
ドキュメンタリー写真家。1982年、秋田県生まれ。2006年、世界第2位の高峰K2(8611m/パキスタン)に日本人女性として初めて登頂し、植村直己冒険賞を受賞。風土に根差した人間の営みに惹かれ、草原や沙漠を旅しながら写真家を志す。12年からシリア内戦・難民を取材。著書に『人間の土地へ』(20年 集英社インターナショナル)など。日本写真家協会会員。

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シリアの家族 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    シリアの男性と結婚した 写真家の日本女性の
    眼から見たシリア内戦、そしてシリアの家族を
    描く。

    夫の家族は 両親、15人の兄姉、甥姪の四世代で暮らす総勢70人程の大家族。
    ラクダ100頭を飼う ベドウィン一族。

    そこにアサド政権による市民の弾圧が襲う。
    夫の家族にも。6男と9男が民主化運動に参加。
    逃亡生活を。6男逮捕され行方不明。夫は 徴兵され政府軍兵士になるも 軍を脱出。難民に。
    シリアの家族は 砂漠を転々とし、トルコへ。
    10男と甥は 欧州を目指す。

    アサド政権やシリアの内戦は 日本でもさまざま
    報じられ 酷い状況だとは知っていた。
    所詮 遠い国の出来事。憤る以外何にも出来なかった。

    この作品は シリア難民の妻、二児の母、写真家として シリア、シリア人のリアルを描く。
    読んでいる途中 何度 彼らの置かれた理不尽さ、過酷さに涙し、悲嘆したことか。

    54年間にわたって支配したアサド政権は倒れた。しかし 彼らの国は破壊し尽くされてしまった。500万人と言われる難民は故郷に帰れても
    待ち受けるのは まだまだ苦難な生活。

    一部の強欲なトップ達によってもたらされる内乱、戦争は 何ももたらさない。国の崩壊と
    辛酸を舐める人民のみ。

    歴史は繰り返す。どうしてその歴史から人間は学ばないのだろう。

    0
    2026年10月05日

    Posted by ブクログ

    ほっこりさせられることも、辛くてページが進まないことあったけど、本当にすごい本に出会えた。この本を書けるのは世界に一人しかいないと思う。

    0
    2026年10月03日

    Posted by ブクログ

    「人間の土地へ」を読んで感銘を受けたので、その後のシリアの情勢も気になり、アサド政権が崩壊した時も小松さんのことを思い出していた。
    少し読むのが遅れたが、今回もこの本を読まなければ知らなかった、わからなかったことがいっぱいあって、よくぞ書いてくださったと思う。ただの?ノンフィクションでなく、自分のことも書いておられるので、遠い世界がグッと近く感じられる。
    全く無知の私がいうのもなんだが、いつまで続くんだと思われた独裁政権があっという間に崩壊したのは驚きだった。2度と足を踏み入れられないと思われていた故郷に戻れたシリアのご家族を通して、そのほかのシリアの人々の喜びも伝わってくる。インフラも街全体も自宅も崩壊した状態から始めなければいけないし、政権も安定しないし、まだまだ苦労が続くだろうが、秘密警察や密告に怯えなければいけない日々から解放されて、本当に良かった。

    2年後には解放されていると想像もできなかった2022年単独でシリアに入国され、パルミラに向かわれた第五章は、こんな言い方は失礼かもしれないがスリリングで、読み物としてすごく惹きつけられた。

    小さな船で密入国を試み、失敗しても何度も試み、言葉も知らない国で生活を再建しようとする難民の逞しさ、力強さに、人間って強いものだと力づけられる。家族間、親族間の濃厚なつながりは今の一般的な日本人には想像がつかない。

    そうするしかすべないから仕方なくとはいえ、平和に暮らしている国の人は、精神的にも肉体的にももっともっと弱いのではないか。
    日本に生まれたから平和で幸せといった日々が、この先も続くのか。自分は難民になんかなるはずがないなんてことが言えるのか。そんなことも考えた。
    政権批判しただけで、連行され、拘束され、拷問され、殺害されるなんてことは絶対に絶対にイヤなので、できるうちにダメなものはダメとしっかり抵抗しなければいけないと改めて思った。

    0
    2026年09月05日

    Posted by ブクログ

    作品ももちろん素晴らしいけど、著者のこの作品を書くための態度(当然この本に書かれている)が恐れ入りましたといった感じ
    この著者の名前「小松由佳」は自分の記憶に最高のライターとして永久にとどまり続けるだろう

    0
    2026年07月22日

    Posted by ブクログ

    あらゆる角度からシリアという国と日本を照らす作品
    戦争や独裁政権の悲惨さ恐怖
    シリアという国の文化や歴史
    日本との違い
    家族をベースに精度高く描き出す
    傑作

    0
    2026年07月17日

    Posted by ブクログ

    新聞の書評欄で知った本。
    最初は、厚さに躊躇したけれど、無用な心配だった。写真家として活動を始めた筆者が、内戦前のシリアで出会った家族。その12男と恋に落ち結婚。筆者の目から見たシリアの14年間を描く。
    しっかりした文章、丁寧な背景の説明、時にユーモアを感じさせる夫とのやりとりに、シリアについて無知だった私でも読み切ることができた。そして、今までニュースでしか知らなかった単語(シリア、アサド政権、アレッポ、ヒズボラ、IS)が何を示していたのか理解できた。
    70年幸せに生きてきたガーセムの様なことが、もし自分におきたら‥と考えると本当に怖いと思う。理不尽だと思う。
    退避勧告を受けながらパルミラに向かった小松さんの信念の強さに驚くとともに、無事でよかったとつくづく思った。と、同時に大使館の仕事も大変だと思った。派遣先の国による差が大きそう。
    サイドナヤ刑務所の章はなぜ人はここまで残酷になれるのかと思い、学生時代に習った刑務官と囚人の実験を思い出した。
    写真を踏めないくだりも、私は小松さんの気持ちが理解できるけれど、立場が変わったら理解できなくなるのかもしれない。
    とても勉強になる本だった。
    これからは、シリアのニュースを関心を持って見られそうだ。

    0
    2026年07月13日

    Posted by ブクログ

    世界中でシリア難民の存在が語られ続けた十数年であったが、そのシリアで何が起こっていたのかを命がけの取材をもとに記録した一冊が、日本人の手によるものだということに驚く。しかも彼女はシリア人と結婚しシリア人大家族の一員となっている。アサド政権崩壊は、様々な国際間の暗黙の了解のもとに行われたという彼女の分析も説得力がある。実際ロシアは、アサド政権を援助しなかったが、反政府勢力から引き続きシリア国内のロシア軍基地の使用を認められているのだという。国際社会のパワーバランスのもとで翻弄され、国土の荒廃を目の当たりにしたシリア人の美しいふるさとが、再びよみがえることを願ってやまない。そして自国の利益最優先の大国に翻弄されていく、全く行動できない国連の存在に強く失望と憤りを感じるばかりだ。

    0
    2026年06月08日

    Posted by ブクログ

    独裁政権下内戦での厳しさと苦しみ、そして
    悲しさがこれでもかと描かれていているが、
    この本には生きた人間とが刻み込まれている
    だからこそ悲しさだけではないとも言えるが
    逆に悲しさが際立っているとも感じた




    0
    2026年05月29日

    Posted by ブクログ

    描かれている人たちのことが気になり、
    1日もかからず読み終えた。読む前、読んでいる最中、読後と扉の写真を何度も見て、そこに映る人物を想像した。
    シリアの国籍を持っているために、欧州をはじめとする豊かな国への入国が制限され、高額な費用を払い難民として命懸けで入国を目指さなければならない現実に衝撃を受けた。

    アサド政権の闇を世界に告発した、シーザーファイルが公開されたのは2014年1月、アサド大統領がモスクワに亡命したのが2024年12月。
    政権によるシリアの人々への残虐行為を10年以上も放置した国際社会の一員であることを、本書で知らされた。

    0
    2026年05月29日

    Posted by ブクログ

    シリアで実際に何を見たのか、筆者の個人的な体験や意見も交えて書かれている。知らなかったショッキングなことも多々あった。命懸けの取材による貴重な文章と写真。ぜひ多くの人に読んで欲しい一冊。

    0
    2026年05月25日

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