下條信輔のレビュー一覧
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「色即是空空即是色すべてこの世は夢幻よ!」という某映画のセリフを思い出す。ヒトの認知ほど不確かなものはないということを思い知らされる。生きづらさと戦っている人はこの仕組みを理解することは、それを乗り越えるために重要であると考える。
全くもって、科学者というものはその知的好奇心を満たすためには酷い実験をする。しかし、そのお陰で私たちは、脳や認知について知識を得ているとはいえやはり酷いものは酷い。とは言えありがたい知識であることも否めない。
一般的に無意識と呼ばれるもの、大乗仏教で言うところの「末那識」「阿頼耶識」がありきで我々が「意識」と言っているものはとても脆弱な存在であるということが本書が一貫して述べているところだと理解する。我々は意識をしてから体を動かしていると考えているが、それは大きな誤りであり、無意識、阿頼耶識に突き動かされていると言っても過言ではない。多くの実験がその次自分を物語っている。コンピュータの世界で言うところの分散システムである。つまるところ、進化の結果獲得したからこうなっているのだろう。
目の前の不快を単純に避けることが、全体最適になっているとは限らない。また、目の前に快楽にとビクつくとも同様である。過去のトラウマ故に踏み出せないことがあったとしても、そこに踏み出さなければもっと将来的には不利益が起こることはよくある。結局のところ、「無意識」「末那識」が邪魔しているだが、これと上手につきあうことが、より良い行動につながるのは言うまでもないことである。そのためには、「無意識」「末那識」のことを知るためには本書のような実験についての知識が必要なのである。
この本から得られる教訓としては、仕組みとしての「サブリミナル・マインド」を知ることと、道具としての「瞑想」を実践することなのだろう。 -
Posted by ブクログ
意識とは何かについて、「錯誤」をキーワードに考察する。錯誤が起こっているときに脳は正しく働いており状況の方が普通でない。すなわち、「錯誤は正常な認知機能の反映である」と言える。
脳が環境に適合するように自らを変え、その結果、知覚系と行動系が環境に対して完璧に適応的なものとなる。環境が突然激変したときには、過去に根ざしたこの知覚と行動の記憶の総体が「錯誤」をもたらす。
脳は孤立した存在では無く、身体を支配し、逆に身体に支配される。
身体は一方で脳の出先機関であるとともに、その基礎でもあり、脳にとっての環境の重要な一部を構成するのである。
従って、脳だけを身体や環境と切り離して考えることは、科学の方法としては有力だが、一面的である事を認識する必要がある。また、脳の中を受け身で自動的、生理的な装置とより能動的で意図的な制御者とに分けることも間違いである。人工物(薬の類い)が身体と脳に侵入するのに伴い、逆に脳は限りなくからだと世界の方向にその触手を伸ばしながら観念のねじれと現実的な問題を発生させてくる。
脳と身体の関係につき、「錯誤」幻視、幻肢、記憶の有り様、向精神薬といったトピックスを交えその本質を探ろうとする書籍である。 -
Posted by ブクログ
とても面白い。意識とは何かを、認知心理学の研究成果を元に考えている(99年刊なので最新ではないが)。それは、世界をいかにして認知するかという問題であり、自由意志と決定論とのせめぎ合いであり、自己と他者との参照の在り方。この一冊を読んでも題名の問いに答えることはできず、かえって疑問は増すばかりで、いかに意識の問題が曖昧で不確かで根の深いものかがわかる。
世界の認識を扱った作品・著作は数多く出ているだけに傑作も多い(例えば北野勇作の「かめくん」はいかにして世界を認識しうるかという点を思考実験として描いていた掛け値なしの傑作だし、佐藤幹夫「自閉症裁判」は現実に世界の認識の相違がもたらした不条理を描写する)。このへんと合わせて読むと話が広がってなおのこと面白い。 -
Posted by ブクログ
友人に薦められたので読みました。
心や精神といったものは存在しないのだ…というようなラディカルな主張を展開しているのかと思って読んでいたのですが、もっと素朴に、しかも丁寧に説明されていたのでとても共感がもてました。
こころとからだ、あるいは内部と外部の境界線がうすれていく…というあたりは大森荘蔵を思い出しました。もう一度大森荘蔵の本も読みなおしてみようかと思います(ちなみに、この本の著者がどの程度大森さんのことを知っていて影響を受けたかはっきりとは書いていなかったのでわかりません)。
著者が本文でもたびたび挙げている『サブリミナル・マインド』も時間があればぜひ目を通してみようかと思います。