伊達宗行のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
"極限"だけだと語る幅が広すぎるが、本書は筆者の専門である物質の性質が変化する"低温、高圧、強磁場"が中心。
『新しい物性物理』で学んだ物性物理は、極限の世界でどう変性するのか。
『シリコンに15万気圧をかけると金属になる。』
『液体と気体の境界がない超臨界状態でものを溶かす性質を利用し、コーヒーを超臨界の二酸化炭素に浸してカフェイン成分を抜き取る。』
『白色矮星の圧力を超えて圧縮されると、電子軌道が外殻から順に破壊されるという新たな相転移が観測される。そしてその結果生じるエネルギーで重力崩壊を防ぐ。』
などのわかりやすくて興味深い話は随所にあるのだが、中心となるのはその仕組みの解説であり、
『低温を作るために、断熱した系で磁性のON・OFFで電子スピンの向きを操作してエントロピーを増やす』など、詳細を理解するためには格子振動量子、ボース凝縮、原子間相互作用などの量子力学関連知識が必要となる。
全てを理解しなくとも楽しめるが、全てを理解できる状態で読めばさらに楽しめる。
基礎を抑えてこその極限の世界であるが、長い道のりに飽きてきたならば、一足先に読んでみると、勉強の先に待つものを見つけられるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
著者の専門は物性物理なんだけど,歴史や文化にも造詣が深いらしく,「理科力」で日本史を見てみようという本。科学受容史といったところかな。でも網羅的でなく,話題は断片的。
天文,鉱物史,魔法陣などいろいろだが,著者は特に言語に興味があるらしい。中でも数詞について詳しい。縄文時代など,文字の記録が残っていないから推測になってしまうのだけど,想像をたくましくして当時の数のありかたを描いている。
著者の『極限の科学』が滅法おもしろかったので読んだのだが,さすが年長者だけあって博学。やはり門外漢なわけで,信憑性はいまひとつ。人生の総仕上げとしてざっくばらんに書いてみたという感じだろうか。戦国大名の伊達氏についても記述があったけど,別に祖先だとは言ってなかったな。 -
Posted by ブクログ
本書は過去の歴史のなかの個別課題を「理科」的視点から取り上げた論考であるが、興味深くおもしろいと感じた。
著者はどれの専門家ではないという。そういう場合、内容がしぼりきれずに拡散してしまう場合が多いのだが、本書では、おもしろくまとめていると感じた。著者の「伊達宗行氏」は仙台生まれで東北大学理学部卒というから、あの「伊達」の眷属なのだろうか。
「縄文の空の下で」の原人前後の内容は、すでに最新の知見ではないと感じたが、縄文や弥生時代についての論考はいろいろと多面的で興味深かった。その道の専門家でない著者の幅広い知識が伺えて、おもしろいと感じた。
「いち、に、さんではじまる現代数詞」についての論考もおもしろかった。数詞の読み方は漢音と呉音が混在しているというのだ。「漢字」というくらいだから、漢の時代のものと漠然と考えていたが、本書によると「仏教は呉音の世界」だそうである。本書はその理由について幅広く考察している。もとより推測なのだが、実におもしろく説得力があると感じた。
「金・銀・銅」についての考察もおもしろかった。「マルコポーロが13世紀に東方見聞録で黄金の国」と紹介したことは有名であるが、日本は歴史時代に黄金をとり尽して、その黄金は海外に流出したというのだ。当時の施政者の見識のなさを非難してもちょっと遅すぎるかとも思った。
ただ、「数遊びの東西」は、多分著者の趣味なのだろう。歴史的な「数遊び」にはあまり興味が持てないと感じた。
筆者は「異分野の交流」を主張している。まとまりがない結論になる場合も多いかとは思うが、本書のように興味深い論考にまとまる場合もあることを思うと、おもしろい提案であると感じた。 -
Posted by ブクログ
科学と歴史というのは以外に相性が良い。気候の変動や病原菌の突然変異、穀物類の植生等は、それだけで人類の歴史を大いに左右しうるわけで、そういった観点から歴史を読み直すのが、最近はやっているらしい。「銃・病原菌・鉄」など世界的な名著もある。
本書もその流れを汲んでおり、日本の歴史を「理科」的な視点から再構成してみようという試みは非常に立派。実際、それを本職の先生がやれば面白い本ができるのは間違いないと思うのだけれども、本書の場合は著者が物性物理学の先生なので、いわゆる「余技」に過ぎない。余技でも一級品に昇華できていれば良いのだが、いささか消化不良気味でした。