伊達宗行のレビュー一覧
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講談社ブルーバックスの1冊。
但し、狭いテーマを取り上げて解説したものではありませんし、けっして軽い読み物ではありません。
総302頁に書かれている内容は簡潔にして高度で充分に網羅的です。
基礎的な内容、物性物理の成果、研究の最前線のテーマいづれも盛り込まれてます。
これは入門する人用の書。
これ読んで簡単に薀蓄が語れるといった類の本ではないです。ザ・「最初の1冊目(総論)」。
「物性物理学」「固体物理学」「材料学」「固体化学」...など、この世界に興味を持った、或いはこの世界(学部?製造業界?)に
足を突っ込む覚悟の決まった若者(+もちろん年配も!)が最初に自分でお金を -
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物性物理の魅力がひしひし伝わってくる。扱う三分野(温度・圧力・磁場)は,20世紀初頭から極限条件が追及されて特に大きな成功を収めてきた。それが物質の本性の解明に結びついてきた。
低温・高圧・強磁場を突き詰めてゆくと,量子力学が不可欠になってくる。超電導を含めた超流動,ボース・アインシュタイン凝縮。白色矮星や中性子性の成り立ち。最終章で宇宙に見られる超高圧・超強磁場が語られるけど,人間が作り出す低温・高圧・強磁場も結構すごい。
温度だとマイクロケルビンまで達成できるらしい。He3-He4希釈冷却法,断熱消磁やレーザー冷却など,超低温を得る技術というのも随分トリッキーで興味深い。圧力は百万気 -
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電子は粒子であり波であるということは知っているはずなのに、頭の中に思い浮かべるのは粒子の姿であることがほとんどだ。
だが、電子が原子核を周回するとき。電子が波であることを改めて意識してからK殻、M殻、s軌道、p軌道を考えてみると、その意味がようやく理解できる。
本書は陽子数、中性子数などの基本的なところからアップクォーク、ストレンジクォークなどの複雑なところまで。電子の世界から改めて物理の世界を学ぶための教科書。
入門書と言うには説明不足で難易度の高い局面も見受けられるが、ガラス・カーボンナノチューブ・ATPなどの具体的な事例も豊富でとっつきやすい。
日常世界と地続きである電子の世界のスケ -
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歴史に興味はあるけれど、教科書を読んでも頭になかなか入ってこなかった中高生の時に出会いたかった本。「数字」「鉄」といった具体的で普遍的な事象から歴史を眺めることは、歴史をイメージする手助けとなる。
「理科で歴史を読み直す」には、以下の二つの意味があると私は解釈した。
1.人々が数字や科学をどのように身につけ、利用してきたかをひもとくこと。(自然科学の歴史に焦点を当てる)
2.歴史を自然科学の知識から読み解くこと。(歴史を自然科学を用いて解明する)
もちろん両者は切っても切り離せないものだが、とくに後者のアプローチがこの本のユニークな点だと思った。
歴史研究の中心は文献史料の分析だが、当時の -
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他の方のレビューとはだいぶ違う感想を持った。この本は特に網羅的でもなければ厳密でもない。例えば本書で1章が充てられている超伝導と並ぶ,物性物理学上の潮流である電子構造の大域的な性質に基づく物性(量子ホール効果等)について書かれていないし,モット絶縁体についても然りである。要するにこれは,筆者の興味の赴くままに書いたという事だろう。
ついでにケチをつけるならば,物理学上の非常に基礎的な概念の解説が始めに書かれているものの,後半部に行くにしたがって高度な応用について述べられており,残念ながらそうした知識はあまり役に立たない。
しかしまあ,多少物理学を知っているならば,間違いなく読んでいて非常に楽し -
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科学のすばらしいところは、極限の追及を目的化できることであるとおもう。
本書は温度、圧力、磁場の極限をブルーバックス読者に通じるように解説していく。
私にとってここでの最大の発見は現代の物性物理学の応用範囲として「ホット」なのは「高温」ではなく「低温」であるということ。人類は高温は数千年前から使用していたが、「低温」をつくることを覚えたのはここ200年ほどであるということ。そもそも、-100度のものを作るには-100度以下の触媒を用意しないといけない。「どうやってそんなものを作るのか」ということが理解できる。
絶対零度には到達できないということは証明されているとしても、そこに限りなく近づけ、そ -
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読後の感想は、「久々に読み応えのあるちゃんとした新書を読んだなぁ~」というもの。
私が大学生の頃、新書と言えば岩波新書、中公新書、講談社現代新書が御三家で、卒業する頃に集英社などからも出るようになったと思います。当時は今のように各出版社から多数の新書が出ている状況ではなく、一冊一冊がかなり重みのある作品が多く、一般教養書としてとても重宝しておりました。しかし今は粗製乱造というのか、本当に読んで良かったなぁと思う、かつてのような重みのある新書は少なくなった印象を持ちます。そんな印象が多い中、この『「理科」で歴史を読みなおす (ちくま新書)』は私の知的好奇心を心地よくくすぐり、そしてタイトル通 -
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[ 内容 ]
量子論、相対論の融合から始まった物性物理学によって、身の回りに存在するあらゆる物質の本質が明らかにされてきた。
半導体、液晶、超伝導などの新物質を創り出し、ナノテクノロジー、極限の世界を切り開く物性物理学の最前線に迫る。
[ 目次 ]
第1章 物性物理学の誕生
第2章 物質の起源
第3章 物性の出発点
第4章 物質の構造
第5章 電気伝導の世界
第6章 磁気の世界
第7章 物性の新局面
第8章 極限科学
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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Posted by ブクログ
"極限"だけだと語る幅が広すぎるが、本書は筆者の専門である物質の性質が変化する"低温、高圧、強磁場"が中心。
『新しい物性物理』で学んだ物性物理は、極限の世界でどう変性するのか。
『シリコンに15万気圧をかけると金属になる。』
『液体と気体の境界がない超臨界状態でものを溶かす性質を利用し、コーヒーを超臨界の二酸化炭素に浸してカフェイン成分を抜き取る。』
『白色矮星の圧力を超えて圧縮されると、電子軌道が外殻から順に破壊されるという新たな相転移が観測される。そしてその結果生じるエネルギーで重力崩壊を防ぐ。』
などのわかりやすくて興味深い話は随所にあるのだが