Posted by ブクログ
2012年07月03日
物性物理の魅力がひしひし伝わってくる。扱う三分野(温度・圧力・磁場)は,20世紀初頭から極限条件が追及されて特に大きな成功を収めてきた。それが物質の本性の解明に結びついてきた。
低温・高圧・強磁場を突き詰めてゆくと,量子力学が不可欠になってくる。超電導を含めた超流動,ボース・アインシュタイン凝縮...続きを読む。白色矮星や中性子性の成り立ち。最終章で宇宙に見られる超高圧・超強磁場が語られるけど,人間が作り出す低温・高圧・強磁場も結構すごい。
温度だとマイクロケルビンまで達成できるらしい。He3-He4希釈冷却法,断熱消磁やレーザー冷却など,超低温を得る技術というのも随分トリッキーで興味深い。圧力は百万気圧くらいは地上で得られるようだ(ダイヤモンドアンビル)。このような高圧では絶縁体も金属になる。
強磁場では,数字だと大したことないが数百テスラくらい。電磁石でいくらでも強い磁場ができるわけではなくて,50テスラ程度のカピッツァ限界というのがある。コイルをどんな材料で作ろうが,これより多く電流を流すと破断して飛び散ってしまう。一瞬であれば電磁石でつくった磁場を絞る磁場濃縮法でパルス的に500テスラが得られる。
それにしても宇宙は壮大だ。中性子性など,圧力は10^15気圧,磁場は一億テスラになるという。そこでは中性子が超流動状態になっている。想像を絶する世界だが,さらに上にはブラックホールが。宇宙の果てのそんなところまでこんなに知ることができるなんて,科学ってすごい。