エリーザ・ホーフェンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
たまには海外ミステリーを。主人公は60代に差し掛かった女性弁護士。正義感が強く、物事をとことん追求し、理不尽さや曖昧さを許さないタイプでこれまで多くの案件の真実を明らかにしてきた。また、弱者に寄り添うというポリシーを持っていて、これらの性格のせいで、時には正義を踏み外したり、裏目に出ることも。どのストーリーも一筋縄ではいかないトリックがあり、犯人の思惑を解明し、解決したと思ったら大どんでん返しが待っている。必ずしも正義が勝つわけでもないし、弱者が救われるわけでもない。作者は人間の心(愛、嫉妬、名誉欲、生への執着、残虐さなど)の動きを巧みにストーリーに活かしていて、短編なんだけど密度が濃い感じ。それほど多く読んだわけではないが、ドイツの作家の本は、アメリカ、イギリス、南米の作家と比べてもなんだか読みやすい気がする。
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Posted by ブクログ
ネタバレドイツの作家さんはほとんど初めてかも。(ミヒャエル・エンデくらいかな)
この作家さんは法律家でもあるとあって、とにかくリアリティがすごい。
まるで自分がその事件そのものの目撃者かであるように感じさせてくれて、気づけば没入している。
内容としてはいくつかの事件にまつわる短編を読み進めるうちに、主人公エーファの暗黒の瞬間が浮き彫りになってくる、という連作短編集の構成。
ひとつひとつの物語についても考えさせられるし、全体を通してみたときにエーファの弁護士人生の暗黒の瞬間が浮き彫りになっていくところが、読みたいのに読みたくない何とも暗い気持ちにさせてくれる。
人は誰でも間違えるし、時にはとんでもない間違いをおかしてしまうこともある。裁判はその一瞬の側面を切り取って裁かなければならないのだな…と改めて重く感じたし、人間は多面的であるので悪人や善人と簡単にカテゴライズすることもできない、もどかしいところを絶妙に突いてくる本だなと。
訳者のあとがきにも似たような表現がありましたが、後半はもう流れがわかってくるので「ああ〜そっちじゃないエーファ!そっちじゃない!」ってもう見てられない状態に。
見てられないと思いつつ、読む手を止められないのが匠の技ってやつでしょうか。
一冊読み終えた頃にはすっかり人間不信になってしまったけど、なんとも言えない読後感がクセになる。
本国では続編がでているとか。絶対に読みたい!! -
Posted by ブクログ
連作短編集は、せっかくどっぷりハマった世界から離れることなく、違った角度から短編ごとに楽しめるのでそもそも好きなのだが、これはまた、ものすごく面白いじゃないですか!
最初の「正当防衛」で掴まれました。
そして、主人公の弁護士エーファがここまで事件に真剣に向き合うのはなぜか、それが短編の最後に投げかけられる。なにか、あるんだね、最後に明かされるんだね、と思いつつ次々読み進む。
どの事件も、判決が出た後に、思いがけないことが起こる。コントロールできないものがいつも残される。
どの事件も専門家ならではの、法律の穴があり、そうきたか!と唸らされるのだけど、「強姦」は特に、おー、そんな方法が!と驚かされた。
この小説、とっても読みやすいのがすごいと思う。読みやすさと安易さは仲良しだけど、この作品は、この質にしてこの読みさすさ。作家もよければ、翻訳家も優秀なのだと思う。
他の本を脇に置いて一気読みでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレおもしろかった!
60代の女性弁護士エーファが主人公の連作短編リーガルミステリ。
法を守り、被告人に過剰な罪を与えないようにすればその人の心まで救えるかというとそれはまた別の話なんだなと。
「正義」とはなんなのか?正しい選択をすることの難しさを考えさせられた。
どの話もよかったが、特に心に残ったのは「少年兵」、「塩」、「人食い」、「強姦」。
「正当防衛」
強盗を殺してしまった場合、正当防衛と認められるには。
「生かしておく」
人を殺してしまっても、まだ生きてると世の中に思わせることで完全犯罪とする。殺人者の冷酷さと、被害者のやるせなさ。シュテファンの件での後悔がまたひとつエーファの罪を作ってしまう。
「少年兵」
真実を語ることだけが正義なのか。嘘をつくことで救われる人もいる。
「塩」
子どもが塩をあの量食べると亡くなる可能性があることは私も知らなかった。罪を与えないことが逆に本人にとっては一番重い罪となる。
「人食い」
お互いに了承を得ていれば、自殺を助けて死後解体して食べたとしても本当に罪にならないのか。
「遺稿」
「少年兵」と似たような展開。
「強姦」
11人中1人だけが強姦に加わっていないが、そのひとりを特定しない限り全員が無罪になってしまう状況で、はたしてどうするのが正解だったのか。
「自白」
魅力的な夫が妻を庇っているかと思いきや……まさにサイコパスという感じの夫だったが、なんだか詰めが甘かった。
「シュテファン・ハインリヒ」
会社のためにやってきたことでも、最終的に邪魔な存在となれば会社から切り捨てられてしまう。
弁護士の甘い考えがどれだけの影響を与えることになるのか。 -
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鬼★5 いかに悪魔になってしまうのか… 法の隙間から漏れ出た人の醜さを描いた犯罪小説 #暗黒の瞬間
■あらすじ
ドイツの刑事弁護士であるエーファ・ヘアベアゲン。凄腕弁護士の彼女が担当した事件と弁護を認めた物語。まもなく引退が近い彼女は、これまでの加害者の害悪性と法律で解決できることの差異に罪の意識が芽生えていく。
■きっと読みたくなるレビュー
鬼★5 正当防衛、過失、少年犯罪、偽証など、刑事弁護士が法の隙間から漏れでた人間の醜さを描いた犯罪小説。
誰しも人を傷つけることなく幸せに暮らしたいと思っている。でも決して犯罪はなくならない。どうして人は犯罪に手を染めてしまうのか… 心が空っぽになった瞬間に人は悪魔になってしまうのです。そんな人間たちを刑事弁護士からの目線をとおして、物語が綴られています。
また本作は弁護士エーファ自身も事件に関わってしまうのが特徴的。自身が担当する事件の依頼人を思ってする行動が実は… といったことがありがち。しかしそれは正義感から故の行動、でも少しずつ精神が腐食していくのを感じるんすよ。弁護士だってひとりの人間、身近で素朴な人に違いないんです。
また本作は人間ドラマだけでなくエンタメとしても楽しめる。作品それぞれにテーマがあり、驚きの真相が待ち受けます。読んでると実際にありそうなのよ、しかも綿密で淡々とした筆致で書かれるから現実味がありすぎる。
■おすすめ短編レビュー
・生かしておく
兄を殺害してしまった女性作家の物語、長年兄から虐待を受けていたらしく…
何が正義で何が犯罪か分からなくなる、なんか胃が痛い。終盤のエーファ目線での語りがやたら事務的で印象的。
・人食い
人肉を食べたという男が捕まる。メディアは大騒ぎとなり裁判が注目されるが…
世間は面白いことが大好きで、本当に困っている人に手を差し伸べてくれないよね。腹立たしくて涙が出そうになった。
・強姦
集団強姦の事件、目撃者の証言より11人中1人だけが無実がいるらしい。全員が無実を主張すると…
誰が可哀そうなのかコンフュ状態。犯罪が起こると関わった人全てが不幸になっちゃうよね、虚しい。
・自白
母殺しの容疑者である夫、どうやら妻が犯した罪をかぶっているようで…
人間の邪悪性に、ただただ途方に暮れてしまうよね。人間不信に陥らずにはいられない。
■ぜっさん推しポイント
読み終わってからタイトルを見ると… シンプルかつ核心をついてますね。きっと根っからの悪い人なんてほとんどいない。普段は家族を愛し、友人のために時間を当てられる優しい人たちに違いないんです。
人生がしんどくなった時、どのように心の隙間を埋めるのか、自身の倫理観を守るのか。難しいことだと思うけど逃げないようにしたいと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこれは今年度のベスト10にランクインするのではなかろうかと思える良作。
饒舌なシーラッハというような印象。
シーラッハと「饒舌」は相反するものだが、主人公エーファが弁護士で過去の自分の携わってきた事件を振り返っていくというスタイル、その扱ってきた事件のひとつひとつのあらましに妙にリアリティを感じる描写、そして事件のオチが醸し出すどうにも暗澹とした気持ちになる、一筋縄ではいかない人間の暗部を日の目に晒す様がそう感じさせた。
シーラッハのように切れ味鋭く、ときに不親切とも思えるほどの感覚的な文章という訳ではなく、いたって読みやすく書き込みがされているという点が「饒舌な」という印象に由来する。
とても読みやすい、でもそれぞれの物語のオチのエグさがとんでもない。
めちゃくちゃイヤミス。
変な見方すると主人公、バッドエンディング案件ばっかりだけど、本当に優秀な弁護士?とすら思ってしまう。
まだ40代だという著者。
本国では既に続編も出版されているという。
今後の活躍が楽しみな作家のひとりになった。